昨晩京治くんと喧嘩をした。きっかけはささいなことで、原因は寝て起きたらもう忘れてしまっていた。

ぼんやりした頭を抱えて、すでに彼がいなくなったベッドから抜け出しダイニングへ向かう。京治くんは朝ごはんの支度を終え、ソファに腰掛けコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。

「・・・おはよう」
「おはようございます」

少しだけぎこちない挨拶を交わして洗面所へと抜ける。全然顔見てくれなかった・・・。しょんぼりしながら顔を洗って歯を磨く。喧嘩は初めてじゃないけれど、あんまりしないからやっぱり久しぶりにすると緊張するというか、仲直りの仕方もいつもどうやってたっけな、と思うレベルで。

「・・・」

いつまでもここに居たって仕方ない。一息ついて決心してダイニングに戻ると、作った朝ごはんをテーブルに並べる京治くんがいた。

「・・・あ、私、コーヒーいれる」
「いれましたよ」
「ありがとう・・・」

彼の言った通り、完璧に準備されたテーブルをはさんで座る。今日は和食ラインナップで、いただきますと手を合わせ卵焼きを口に運んだ。

「・・・甘い」

京治くんは甘いのよりしょっぱいのが好きだと前聞いた。対して私は甘いのが好き。私のために作ってくれたんだなあ、そう思いながら白米を口に押し込める。

「・・・・・・うっ・・・」
「なまえさんどうしたんですか・・・!」

京治くんの優しさが染みて涙が出そうだ。と思っていたらもう溢れていたようで、向かいの京治くんが慌てて私に声をかける。

「け、京治くん、昨日ごめん・・・」
「いいですよもう、・・・俺も、すみませんでした」
「卵焼き、おいしい」
「・・・よかったです」

ふ、と表情が柔いだ京治くんを見てほっとした。その後もとくに会話はなかったけれど和やかに食事を終え、食器を流しに下げる京治くんの背後に近寄る。

「京治くん」
「はい?」
「ありがと」

振り返った彼に、背伸びしてキスをした。



 本日のファーストキス


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