なんだか随分寝た気がする。珍しく自然に目を覚ますと隣にはまだ寝息をたてている京治くんの姿。

「・・・ん゛ー・・・・・・?」

呻きながらスマホを探して時間を確認すると、

「・・・けけっ、けいじくん!」
「・・・・・・なんですか・・・」
「7時半!!」
「!?」

気持ちよさそうに寝ている京治くんをたたき起こす。普段より30分余計に寝てしまったようだ。もうだめだ遅刻だ。

「は、早く準備しなきゃ・・・!」大急ぎで布団を抜け出し洗面所へ向かう。がしがしと歯を磨いて、洗顔・・・適当でいいや!寝癖も・・・ああもういいや縛ればいいや!

それより京治くんが寝室から出てこないのが気になる。京治くん!と水音と一緒に呼びかけるけれど特に反応が返ってこず、あれ、また寝た?と思いつつ顔の水気をタオルで拭き取った。

しかし私がするならまだしも、京治くんが寝坊なんて珍しい。昨日2人とも目覚ましをかけないで寝てしまったんだろうか。

「ちょっと京治くん遅刻しちゃうってば!」

寝巻きのTシャツを脱ぎながら寝室に入る。京治くんはまだ布団でうだうだしていて、「ちょっと京治くん!」掛け布団を引っペがすとじっとりとした視線が私を貫いた。

「なんで寝てるの!もう!」
「・・・・・・なまえさん」
「なに!はやく!遅刻したらまずいでしょ!」

ぎゃーぎゃー叫んでも一向に起きようとしない京治くんがため行きをつく。・・・なんだなんだその反抗的な態度は。

「けいじく「なまえさん」・・・なに?」
「今日は何曜日ですか?」
「は?」

下着をつけてキャミソールとブラウスを着て。自分で自分を褒めてあげたいくらいのスピードで着替えを済ませていく私に呆れた目で言ったその言葉に、しばし沈黙する。

「・・・・・・」
「日曜ですよね」
「・・・・・・・・・月曜日だもん」
「じゃあ仕事行ってきてください」

もう一度大きなため息をついて、京治くんは布団に潜り込んでいった。

うわあもう最悪だ、なんで今日平日だと思ったの私。

着ていたブラウスを元通りハンガーにかけ、キャミソールのまま京治くんのいる布団にのしかかる。「最悪だあ」と呟けば「こっちの台詞です」と返ってきた。

「ほら今日月曜なんでしょ、行ってらっしゃい」
「なんでそんな意地悪言うの・・・」

重いです、と言って京治くんが寝返りを打つ。その上にいた私もそのまま京治くんの横に倒れ込んだ。さっきと同じジトっとした目で私を見てくる。

「ごめんってー・・・」
「今日の料理以外の家事全部なまえさんがやってくださいね」
「・・・喜んで」

じゃ、ほら。二度寝しましょ。ちょっと笑って私を布団に引き入れる。私が寝るのは好きなのは周知の事実だけど、案外京治くんも休日の朝はぐだぐだしていたい派なのだ。

むぎゅ、と後ろから抱きしめられて、首筋にあたる京治くんの髪を感じる。彼の腕の中はいつものように暖かくて、安心して、目をつぶるとあっという間に眠気が襲ってきた。

「これ邪魔じゃないですか」
「・・・んー?」

うとうとしていたのに、京治くんの声で阻まれる。これです、とさっきつけてそのままにしていたブラジャーのホックをぴんと弾かれた。大丈夫、寝る。そう答えてまた目をつぶるけれど京治くんはしつこい。

「俺には邪魔なんですけど」
「えー・・・べつに邪魔じゃないでしょ・・・」
「邪魔なんで外しますね」

ぶちんとホックが外される。まあいっか、と放っておくとそのまま手が前に回ってきた。

「なーにー?」
「せっかく起きたんだから、ね?」

何が"ね"、だ。そんな可愛く言っても私の眠気には逆らえないぞ。ぷんとそっぽを向くとほっぺたを掴まれ京治くんの方を向かされた。いたい、首が痛い。

唇に、髪に、首に、キスが落ちてくる。少し声をあげると満足そうにちょっとだけ笑う。

「・・・しょうがないなぁ」
「そういうとこ好きです」

・・・さっき起こしてしまったのが申し訳ないのもある。でも私は、その京治くんの細まった目と上がった口角には逆らえないのだ。




 目覚ましの役割


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