「ゴーストタウン」
「お…、おいし〜〜〜!こんなに美味しいご飯食べたの生まれて初めてですよジェノスさん!」
「大袈裟じゃね?」
「これくらい、サイタマ先生の家に住まわせていただくには最低限必要な能力だぞ。」
「大袈裟じゃね?」
無事に夕食を開始したわたし達。
わたしはジェノスさんの作る料理が美味しすぎて感動しまくった。
「サイボーグも食事するんですねえ。」
「俺の場合は博士が味覚を残してくれたんだ。摂取した食べ物は体内で燃料に変換している。」
「す、すごい…。」
今までジェノスさんのこと、サイタマさんのお弟子さんくらいにしか知らなかったけど、一緒に暮らしてみると新しい発見が沢山だ。
ジェノスさんだけじゃない。サイタマさんだって知らないことだらけだ。
わたしが彼らと会う時は、いつも怪人に襲われている時だったから(あとはごく稀にスーパーとかで遭遇してたけど)、そんな彼らのプライベートを覗いてみるのが、なんだかおかしくて。
今までは家に帰るといつも1人だったから、こうして何人かでテーブルを囲んで食事をするのが新鮮で、とても楽しい。
ジェノスさんの腕がいいのもあるだろうけど、いつもの何倍もご飯が美味しく感じる。
「なんだソヨカゼ、ニヤニヤして。楽しそうだな。」
サイタマさんが口の端の米粒を取りながらそんなことを言った。
「はい!楽しいです!」
わたしは2人に改めて感謝の気持ちを感じながら、大きな声で返した。
「おい!だから大きな声を…、」
「いーよどうせここ俺ら以外住んでないし。」
「え!?そうなんですか!?」
「知らなかったのか?ここソヨカゼが住んでた市街地からかなり離れてるし、世間からゴーストタウンって呼ばれてんだよ。」
「ごごごゴーストタウン!?」
わたしは衝撃の事実に驚愕した。
どうりで外は静かだし、どこか廃れた雰囲気なわけだ。
「…出るんですね。」
「ああ、出る。」
「…オバケが。」
「いや出るのは怪人。」
「え?」
その日、ゴーストタウンの意味を初めて知った。
続く
公開:2016/12/31/土
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