「生活基準の問題」
「そこッ!ホコリが溜まっているぞ!!」
「は、はいっ!!」
「貸せ!俺がやる!」
「は、はい…。」
「片付けなのに更に散らかしてどうする!これはそっちであれはここだ!!」
「はい、すみません…。」
「なんだこの不味い飯は!!こんなもの先生に食わせようとしたのか!?」
「すみません…レシピ通りにやったんですけど…。」
「おい!何故皿洗いで床がびしょ濡れになるんだ!?」
「な、何故でしょう…普通にやってたんですけど…。」
「やり直し!」
「はいい〜…。」
「やり直し!!」
「はい…。」
「やり直しだ!!」
「うわああん!もう無理ー!」
「…ジェノス、鬼姑かよ〜。」
サイタマさんは、寝転がりマンガを読みながら他人事のように呟いた。
「にしてもソヨカゼ、一人暮らししてたとは思えないほどの家事の出来なさだな。今までどうやって過ごしてたのお前?」
「1人の時はなんとかなってたんですけど…。」
「多分それなんとかなってなかったと思うぞ。」
「えっ?」
「おい!休んでる場合じゃないぞ、ソヨカゼ!!」
「ヒィ〜鬼〜!」
「おーい、喧嘩すんなよー。…聞いてる?聞いてねーか。」
「もう、ジェノスさん人使い荒いよ!」
わたしはお風呂を洗いながらひとりごちた。
なんだかサイタマさんの家に来てから、やけに失敗が目立つ。
今まで1人で家事などこなしてきたけど…どうしてこういう時に限って本領が発揮されないのか。
「もー!」
わたしはスポンジを掴む腕に力を入れた。
そして勢い余って泡だらけの浴槽に頭から突っ込む。
「あっ…!」
「おい、先生の家で大きな声を…、む!」
わたしの体はガクンと大きく揺れ、ピタリと止まる。
お腹の辺りで無機質な塊がキュルキュルいってる。
ジェノスさんの腕だ。
「まったく、気を付けろ!風呂で作った怪我は治りにくいんだぞ!!」
「あ、ありがとうございます…!」
あれ?わたし、ジェノスさんに助けられた… よね?
よかった、わたしのこと毛嫌いしてるのかと思ったけど…流石はS級ヒーロー。
「だいたい貴様は力が全然…おい聞いているのか?」
「き、聞いてますよ〜。」
「ではもう一度言ってみろ。」
「えっと…、お風呂の力が…、」
「なんだ、なんやかんやいいコンビじゃん2人とも。」
ひょっこりと顔を覗かせたのはサイタマさんだった。
前傾姿勢だったジェノスさんの背中が途端に伸びる。
「先生!一つ言わせていただきたいです。俺をこんなやつとコンビにしないでください!」
「こ、こんなやつ…!?」
あれ、どうなんだろうこれ。
上手くやっていけるのかな…。
続く
公開:2016/12/31/土
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