「同居人は人気者」


「じゃあ部活のある人は頑張って、帰る人は気を付けて帰れよー。」
「起立!注目、礼!」

「「さよーならー。」」


いつも通りに学校が終わり、わたしはウキウキとした気持ちでカバンに荷物を詰め込んだ。

「ソヨカゼ〜今日カラオケ行く?」

友達のツバキがやって来た。

「ん〜ごめん!今日用事あるんだ!」
「用事?」
「うん。家なくなったから、服とか日用品買いに行くの!」
「はあ!?」

ツバキが急に大きな声を出すので、教室に残っていたクラスメイトに注目されてしまった。

わたしは、並んで校門に向かいながらツバキに全てを話した。
ちなみに、彼女はわたしの巻き込まれ体質を知っている。

「っはは!災難だったね〜。」
「いや笑い事じゃないから…。」
「でもヒーローと住むことになったんでしょ?しかも2人も。なら安心じゃん。」

ツバキはそう言って笑った。
彼女はヒーローへの関心が薄いようなので、クラスのファンの子たちに比べて格段に話しやすいから安心した。


「あ、もう来てた。じゃあわたし行くね。また明日!」
「走って転ぶなよ〜………え!?」


わたしは校門の横で腕組みをして立つサイボーグを見つけた。
既に数人の女の子が彼に群がり始めている。

校門前での待ち合わせじゃ、流石によくなかったか。


「ジェノス!?」

ツバキの声が聞こえた。
それによって余計に生徒達がジェノスさんに気付き始めた。

ジェノスさんごめんなさい…。



「一緒に住むヒーローって…S級かよ!」

ツバキは1人小さく呟いた。




「サインや握手はお断りだ。ヒーローはアイドル歌手などとは違う。」

「頑な〜!」
「でもそこがいい〜!」
「かっけえー。つよそー。」


「ジェノスさん!!」
「…む、ソヨカゼか。」

わたしは人を掻き分けてなんとかジェノスさんに気付かれようとした。
ジェノスさんはすぐに気付いて手を引いてくれた。

「え?誰?」
「何あれ?」
「ソヨカゼとか言った?」

周りがざわつき始める。


「す、すみませんジェノスさ…、」
「脱出するぞ。」
「え?」

そこからはよく見えなかった。
急に体がぐんっと引っ張られたかと思うと、体に思い切り風圧を受け、目を開けた時には繁華街間近の歩道にいた。


「…?…??」
「随分と遅かったなソヨカゼ。」
「え?…あ、ごめんなさい……?」

パッと手を離したジェノスさん。
わたしはしばらく固まったままだった。

「?なんだソヨカゼ、阿呆みたいな顔をして。」
「あ…アホじゃないです!!」
「あ、戻ったな。」

ジェノスさんは口角を上げた。
いつも憎まれ口を叩かれるけど、こうして見るとやっぱかっこいいなジェノスさん。

わたしたちは繁華街に向かって歩き出した。



続く




起立、礼の間に「注目」を入れるのは群馬県民だけらしい
知っていてもわざわざ入れてしまう群馬県民水緒であった…

公開:2017/01/04/水


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