「家が」


「……家が。」

「なくなったな。」

「スマン。スマンと思ってる。」


わたしの家がなくなった。




Z市、市街地。
ここにわたしの家はあった。
しかしわたしの家はなくなった。


家がない。つまり住むところがない。
そして帰る場所がない。

「……ウッ。」

わたしは堪えていた涙が溢れた。


「アッ…あわわわ待って待って、泣くなソヨカゼ!スマン!俺が悪かったから…!頼む、泣くのは…!俺が女子高生泣かしたってなると更に世間からの目が…!」
「おいお前ら!見世物じゃないぞ!解散しろ!」


でも、じゃあどうすればいい?
わたしは家がなくなった。
泣くしかないじゃないか…。

「だっでぇええ!!わだっわたしのっ…おうち…うぅ…おうちが…!えぐっ…帰る場所がぁあっ…!」


今まで、何度怪人に襲われても軽い怪我で済んできたわたしに、わたしを嫌う神様が痺れを切らしたのだろうか。
そろそろでかい被害を受けなさいよと、そういうことだったのかもしれない。

それならなおさら泣くしかできないじゃないか。


「わ、わ、わかった!!じゃあこうしよう!?ソヨカゼの家が見つかるまで、俺の家に居ていいから!!」

「「…え?」」



ジェノスさんと綺麗に声が重なった瞬間、我に返ったサイタマさんの肌からスーッと血の気が引いた。





「しばらくお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします!」
「…お、おう。」
「先生の迷惑になるんじゃないぞ。」
「はい!」


サイタマ宅に、居候が増えた。



続く

公開:2016/12/29/木


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