夏の贅沢な過ごし方
「凪ー、プリント持ってきてやったぞ」
部屋の前で、陸の声が聞こえた。
「んんー」
私は布団にくるまったまま、入っていいよと促した。
ドアが開く音がして、陸が入ってきた。
足音が近付く。
ベッドの前でピタッと止まる。
「……お前、随分贅沢なことしてんな」
というのも、今日はどうやらお外は30℃越え。
だけど今の室温は、クーラーのおかげで26℃ほど。
陸は、廊下との温度差に一度小さく震えた。
というか、最早この部屋は寒い。
私だってこの部屋にこもって、体は冷えきってる。
「温度上げるぞ。これじゃほんとに風邪引くぜ」
「あーだめ!」
「なんでだよ!」
「いいの、これで!」
陸はぶつぶつ言うけど、気にしない。
「プリントありがと」
「お前いい加減学校来いよなー」
「んー、もうちょい」
あはは、と笑って話を流す。
その話はいいのだ。
「ねぇ陸」
「ん?」
私が、くるまっていたタオルケットをめくって、隣に陸をお招きする。
陸がえ!?え!?と戸惑っているのが可愛くて、手をぐいっと引っ張った。
「おわ!」
ボスン
バランスを崩した陸は、ベッドの上に倒れ込む。
「なんなんだよ、お前は……」
「んー」
ぐいぐいと引っ張れば、観念したように隣に潜り込んできた。
タオルケットを陸の肩にもかけて、思い切り抱き着く。
「わ、あちーよ!」
「んーん、寒いもーん」
「うわー、お前、贅沢」
「陸が来ると思って思い切り冷やしといた」
そうそう、夏はこれに限るよね。
クーラーガンガンにきかせて、寒くなったらタオルケットにくるまって、陸が来たら陸を抱き締めてぬくぬく。
それで、快適ななかでゆっくりお昼寝。
あ、もう夕方か。カーテン閉まってると時間感覚狂うね。
あーでも、贅沢で、幸せな時間。
冷えた室内で、ポカポカする陸とくっついてると、ちょうどいいのだ。
「んん……おやすみー」
「ああ、おやすみー……って、寝るなよ!おーい、凪っ!……あー、くっそー!」
やけになったみたいに、陸も諦めて寝る気になったみたい。
ああ、幸せ。
夢の中にも陸が出てきますように。
おまけ
「なぁ凪」
「なにー?」
「さすがにさみぃ。リモコンどこだ?」
「……めんどい。こうすればいいじゃん」
ぎゅぅぅ
「……お前なぁ」
fin.
公開:2016/03/16/水
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