チームウシワカ、ダイエット計画


やばい、太った。

夏が終わって気が抜けたか。
てか夏休みは若利ほぼ毎日部活だから、結局海はおろかプールにも行ってないし。

なんにせよ太ったのだ。
始めなくてはならない、ダイエットを。


「ダイエット、だと?」
「うん…そうなの。」

まずは若利に報告。
ダイエットは人に宣言すると自分を追い込みやすくなり、持続出来るという。

それなら痩せる理由である彼氏の若利に宣言するのが一番だろう。

「痩せなくてはいけないのか?」

若利は首を傾げて私の体を見る。
しかし、私から見ても見た目に然程の変化はないのだ。
それでも体重計は嘘をつかない。

「痩せなくてはいけないの!」

私は断固として宣言した。

若利は顎に手を当て考える素振りをしたと思いきや、パッと顔を上げいつも通りの顔で私を見つめた。

「俺も手伝おう。」
「…はい?」



それから、ジャパンユースの牛島若利様との特訓…ではなくダイエットが始まった。
若利が考えたメニューをこなし、若利が考えた食事を摂るのだ。
流石は強豪校のエース様、私なんかよりよっぽど知識がある。


まずは1項目目、ジョギング。

「若利、ゆっくり走ってね!」
「ああ、分かった。」

そりゃそうだ。
若利だからっていうか、全国レベルの運動部男子と一緒の速度で走れる訳が無い。

若利の家からスタートする。
運動不足な私だから、最初は無理せず近くの公園までを行く。


若利と並んで軽く走り出す。
ああ、何これちょっといいじゃん。
チームジャパン的な。
私達はさながらチームウシワカ。
ダイエットチームだ。
この牛島若利がいれば、勝てない敵(脂肪)はない!


しかし。

「ぜぇっ、…はぁ、わかと、し…ぜえ、ちょ、待っ…はぁ、ゲホッ…!」

速っえええええええ。

これがジャパンユースか…!

って感心してる場合じゃない。
これじゃ若利には遅すぎるし私には速すぎる。
マジでどっちも得しない。

「ごめん若利、別のやつやろう…。」
「そうか。すまない。」

若利は悪くない。
全ては脂肪のせいだ。


それからウシワカジャパンは2人で若利考案のダイエットメニューをこなした。

しかしことごとく私が撃沈した。

なんかこれ、1人でやった方がいいのではないか…。
若利が協力してくれるって言ってくれて、私も士気が高まると思ってお願いしたのに。

私は若利の部屋で、汗を拭いながら溜め息を吐いた。


「ごめんね若利、忙しい合間を縫ってせっかく手伝ってくれたのに…!」
「気にするな。」

若利…。

「ところで何故ダイエットなんて始めたんだ?」

ここにきてそもそもの話を…。
私は訥々と語り出す。

「久しぶりに体重計乗ったら…体重増えてて…。若利はあんなにバレーとか頑張ってるのに情けないなって…。若利の彼女として恥ずかしいなって…!」
「…。」

若利は、いつもの凛々しい顔を崩さないまま私を見ていた。
私はなんだか恥ずかしくて目を逸らした。

「…そうだったのか。」

若利は静かに口を開く。

「俺は、笑っている日和が好きだ。」
「…え!?」

な、なに!?急に告白!?

「悩んでいるお前を見て、何か力になれないかと思って協力を申し出た。だが…結果は出ず、日和は益々落ち込むばかりだ。」

若利は、心做しかシュンとしているように見えた。
なんだかこっちまで申し訳ない気分になる。

「日和。もし痩せようとするのが俺のためだけなら、それは止めろ。もしお前が本当に俺を思うのであれば、自分を追い込むようなことはしないで、悩みなど吹き飛ばして日和らしく笑っていろ。」
「若利…。」


きっかけは、体重計に乗ったら体重が増えていたことだった。

若利のことを思って頑張っていたけど、逆に若利を悩ませていたんだ。

私が苦しくなったり悲しくなるのは、ほとんどが若利のことだ。
だけど若利はいつだって私のことを想ってくれる。

途端に、ダイエットなんて豪語していたのが恥ずかしくなってきた。


「…ありがとう、若利。」
「気にするな。もう無理はしないな?」
「うん!」

若利に頭を撫でられ、私は久しぶりに思いっきり笑えた。
若利も、いつもより優しい顔をしている気がする。

悩みなんてするだけ無駄だ。
体重が増えても減っても、きっと若利には関係ないんだ。


「俺は日和が100キロになっても、必ず抱き上げてキスをしよう。」
「う、嬉しいけどそれは流石に嫌かな…。」


限度ってものがあるけどね。




fin.



全ての頑張る女の子にヒカリアレ。


公開:2017/10/08/日


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