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荒井昭二PS追加・変更・女主人公用台詞
5話時田君の自主製作映画



『3、実際にみるまではわからない』(変更)
確かに、いちがいに彼が、よくできた映画だから……、といってきたって、それを実際見るまではなんともいえませんからね。
確かに彼が、よくできた映画だから……、といってきたって、それを実際見るまではなんともいえませんからね。



『2、鼻で笑う』&『3、実際にみるまではわからない』(変更)
それほど、彼のいうことにはぐっと引きつけられるなにかがあったんですよ。
たとえ、真の映画好きでなくてもね……。

それほど、彼のいうことにはぐっと引きつけられるなにかがあったんですよ。



『1、大いに期待する』&『2、鼻で笑う』&『3、実際にみるまではわからない』(変更)
彼は、ついにコンセントを引き抜きました。
ところがどうです。
編集機材は動いているんですよ。
コンセントを抜いたはずなのにね。

彼は、ついにプラグを引き抜きました。
ところがどうです。
編集機材は動いているんですよ。
プラグを抜いたはずなのにね。

僕は、彼が驚かそうとしているんだと思い、できるだけ平静を装いました。
僕は、彼が驚かそうとしているんだと思い、できるだけ平静を努めました。



『2、見たくない』(変更)
僕が今まで話したことが、現実離れしてるといわれれば、確かにそうなんですけどね。 でも、坂上君はホラー映画が好きなんじゃなかった?
……そうですね、あれは全部作りものだっていう気持ちがどこかにあるから、安心して見ていられるんでしょうね。
そうですか、それがいいですよ。
あれは、一度見てしまったら一生後悔しますよ。
僕がそうなんですから。
でもね、時田君が学校で死んだことは話題になりましたが、視聴覚室にあった何十本というフィルムが、まるで最初からなかったかのように、跡形もなく消えてしまったんですよ。

……見たくないんですか。
倉田さんは、僕の話を本当だと思ってくれているんですね。
ありがとう。
だって、怖いから見たくないんでしょう?
まあ、見ようと思っても無理だったんですけれどね。

時田君が学校で死んだことは話題になりましたが、視聴覚室にあった何十本というフィルムが、まるで最初からなかったかのように、跡形もなく消えてしまったんですから。
6話人形の生けにえ



『1、かわいい』(変更)
私は、人形を素直にかわいいとは思えません。
僕は、人形を素直にかわいいとは思えません。

その、人形だって好き好んで人の手を流れてきたわけじゃないでしょう?
その感情が、人形を取り巻く環境に左右されるとしたらどうでしょうか。
人間と同じく、人形にも感情があるとしたらアンティックドールなんて人格破壊者ですよ。
考えただけでも寒気がします。

その感情が、人形を取り巻く環境に左右されるとしたらどうでしょうか。
考えただけでも寒気がします。



『3、暖かい』(変更)
ですから、手作りなだけに人形にこもっている想いとかとても強そうで、私は嫌ですけどね。
ですから、手作りなだけに人形にこもっている想いとかとても強そうで、僕は嫌ですけどね。



『人形のイメージ』(変更)
坂上君、私が何を話そうとしているのか、わかりませんか?
坂上君、僕が何を話そうとしているのか、わかりませんか?




『1、それでは帰りましょう』



「それでは、そろそろ帰りましょうか。
七人目をこのまま待つというのもなんですので」
私は、そういってみんなを帰らせるようにうながした。
七話分が集まったわけではないけれど、取りあえず新聞の記事のネタとしては十分だわ。
「それじゃ、お先に……」

最後の語り部の生徒が帰る。

「私も、ここを早く片づけて記事のまとめに入らないと……」
誰かが、忘れ物でもしたらしく部室に戻ってきたみたい。
「忘れ物ですか?
いいですよ。
私は今、手が放せないんで好きに探して持っていってください」

私は、椅子を片づけながら背中でいった。

振り向いて、私は凍りついた。
部屋の入り口に、子供がこちらをじっと見て立っている。
青白い肌に、無表情で大きな目と黒い髪が印象的な。
さっきから、私の行動を目で追っていたようだ。
こんなところに子供が?
いや、この子は人間じゃないわ。

……そうよ、これは。
私はすぐにわかった。

この子は、荒井さんが話してくれた人形だっていうことが……。
そして同時に、私が次の生けにえだということも……。



『1、情けないと思う』(変更)
「こんな時間に何をしているんだい? ダメだよ、下校時間はとっくに過ぎているんだから。これで、なにか面倒が起きたら私が色々いわれるんだからね」

部室のドアを開けていったのは、用務員さんだった。

僕は、用務員さんに頭を下げた。
「……しかたないねぇ。でも、終わったら宿直室に連絡にきてちょうだいね。そうそう、荒井君のお母さんから電話があってね。いやね、もう学校に残っている生徒はいませんよっていったんだよ。そしたら、いやまだいるはずだから伝えてくれって。
さがしたよ、ここにいるんだからねぇ。お母さんが、急用だから早く帰ってこいっていっていたよ」
そういって、用務員さんはちょっとぶつぶついいながら去っていった。
荒井さんはかなり焦っているようで、自分の荷物をまとめ始める。

「お願いです。その人の名前は!?」
と、問いつめた。
「みんな、くれぐれも気をつけて。僕が話せるのはここまでだから……」
荒井さんは、僕の手をするりと抜けると廊下を逃げるように走って行ってしまった。

荒井さんがその続きを話そうとしたとき……。
部室のドアが、急にガラッと開いた。
「こんな時間に何をしているんだい?
ダメだよ、下校時間はとっくに過ぎているんだから」
部室のドアを開けていったのは、宿直の先生だった。
「すみません。
新聞部の取材にちょっと時間がかかってしまいまして。
もうじき終わりますので、お願いですからもう少しいいでしょうか?」
私は、宿直の先生に頭を下げた。
「……しかたないなあ。
でも、終わったら宿直室に連絡にきてくれよ」

そういって、宿直の先生はちょっとぶつぶついいながら去っていった。

遅くまで残っているのが見つかったからかしら。
荒井さんは、多少焦りながら、自分の荷物をまとめ始めた。
「荒井さん、話が途中です。
生けにえになる人の名前を教えてください」
私は、彼に食いつくように聞いた。

荒井さんは、そんな私の言葉が耳に入っていないのか、急いで部室から出ようとする。
私は、彼の手をつかむと、
「お願いです。
その人の名前は!?」
と、問いつめた。

「その人は……。
今、ここにいます」
「えっ?」
「最後の犠牲者は、今、ここに集まっている人の中にいるんです」
荒井さんは、悲しそうに微笑んだ。
「金井君は、心臓発作で死にましたよ。

みなさん、くれぐれも気をつけて下さい。
僕が話せるのここまでですから……」

荒井さんは、私の手をするりと抜けると廊下を逃げるように走って行ってしまった。
私は、ふと気づいた。
さっき、彼の手をつかんだ私の右手に何かがついてる。

私は思わず手を振り払った。
髪の毛が一つかみ、ごそっとついていたから。
人間の髪の毛にしては、ちょっと硬すぎるわ。
そして思った。
ひょっとしたら、これは人形の……。

この学校には、何かがある。
きっと、人形がこの学校にとりつく原因だってあったはずよ。
人形といい、校長といい、一体どういう関係があるというの。
要するに、あの人形がこの学校に起こる霊現象の元凶だということだろうけど……。

人形に、支配された学校なんていい気持ちはしないわ。

でも、こんな中途半端な気持ちで、どうしろというの。
私たちの、この気持ちを……。



『1、聞きたい』



……そういうと、荒井さんは逃げるように席を立った。

「あっ……!」
私が荒井さんを引き止めようとすると、その手をすり抜けるようにして、足早に部室を出ていった。

……荒井さんは、なんて嫌な話をしてくれたんだ。
私は、残った人たちを見回した。
みんな、顔を伏せている。
おびえているようでもあり、腹を立てているようにも見えた。

人形の生けにえだって?
そんな話、信じられない。
そんなことあるわけない。
そんな恐ろしいこと……。



『2、聞きたくない』(変更)
聞きたくないのかい?
そうかい、聞きたくないんだったら仕方ないよね。
そのかわり、僕のお願いを聞いてくれるかい。

聞きたくないんですか?
それなら仕方ありませんね。
そのかわり、僕のお願いを聞いてください。



『1、聞く』(変更)
「僕のお願いはね……。二人きりであの旧校舎裏の桜の所まで行ってほしいんだよ。さあ、一緒に行こう」

その桜の木は、すっかり青葉が茂ってた。

「僕のお願いは……。
二人きりであの旧校舎裏の桜の所まで行ってほしいんですよ。
さあ、一緒に行きましょう」
荒井さんは私の手を取ると、足早に引っ張っていった。

その桜の木は、季節はずれの花を咲かせている。
「ここですよ」
そういって、荒井さんは私の目の前に立ちふさがった。
すると私の目を、なま暖かく湿ったものがぬるりと触るのを感じた。
「きゃっ!!」
私は思わず叫んだ。

続けざまに、その得体のしれないものが私の眼球を舐め回すように触れた。
なぜか私は、なすがままに眼球を舐められた。
私の目は、薄い膜が張ったようになって一瞬視界がぼやける。

しかし、すぐ直った。
やがて、私を覗き込む荒井さんが、視界に入ってきた。
「荒井さん、これは何なんですか?」
そして私は、はっとした。

荒井さんの肩ごしに、白い顔をした人形がいる。
人形は、荒井さんの肩の上にあごを乗せてじっと私を見ている。
その目は焦点が合っていないような感じだけど、それでいてしっかりと私を捉えて離さない。

そして、次の瞬間その顔はふっと消えた。

「今、君の目を何かが触ったでしょう?
あれは、人形が君の目玉を舐めまわしたんです。
よかったですね。
君は、選ばれたんですよ」
荒井さんは、満面の笑みを浮かべた。

「だって、今、僕の肩に人形の顔があるのが見えませんでしたか?
目玉をしゃぶられて、しかも人形に気に入られると、その姿が見えるようになるんですよ。
あれは生けにえのトレードが成功した証拠です」

ちょっと待って、トレードってどういうこと!?
荒井さんは、たて続けにいった。
「僕は、何かの手違いであの人形に気に入られてしまったんです。
しかし、ラッキーなことに、生けにえは交換することができると聞いたんです。
チャンスは一回きりだったんです……。
ええ、トレード大成功ですよ」
ちょっと待てよ!
私が……、私が生けにえになってしまうの!?

「君は、この学校の呪いを解く最後の生けにえだと、あの人形は言っています。
もう、生けにえは君が最後ということですね。
君は英雄なんですよ」
荒井さんは人ごとのようにいった。
そんなことってないわ!!

私は、この学校の呪いが解けなくてもいいから長生きしたいのよ!
こんなことで、人生棒に振るのはまっぴらごめんだわ。
「君もトレードしたい?
したかったら、僕と同じようにすれば運が良ければ成功します。
えっ、だってこれは一回切りなんですから……」
私はもう、荒井さんの声を聞く気はなかった。
だって、桜の木の枝にあの人形がぶら下がって私を見ているから……。

……ほら、あそこに。



『2、聞かない』 (変更)
金井さんのお願いも、僕のお願いも聞いてくれないんですね……。
金井君のお願いも、僕のお願いも聞いてくれないんですね……。


……そういうと、荒井さんは逃げるように席を立った。

どうしよう。
このままでは、彼は帰ってしまう。



『1、引き止める』(変更・削除)



「待ってください!」
私は荒井さんを引き止めようと、彼の肩をつかんだ。
「!?」
振り向いた彼の顔は、真っ白だった。
しかも、無表情で大きく白目の多い瞳が私をとらえた。
一瞬の出来事で、私はそのままそこに立ちすくんだ。

走り去る彼の後ろ姿を見ながら……。
彼はいったい……。

この話は、謎の部分が多いまま終わることとなった。
今さら、後悔しても遅いわ……。
話を聞かないといった私が悪いんだから。


(削除)

部室に帰ろうと振り返った時、僕の視線はそこにあるものに釘付けになった。
部室の入り口に、子供がこちらをじっと見て立っている。
青白い肌に、無表情で大きな目と黒い髪が印象的だ。
さっきから、僕の行動を目で追っていたようだ。
こんなところに子供が?
いや、この子は人間ではない。
……そうだ、これは。
僕はすぐにわかった。
この子は、荒井さんが話してくれた人形だっていうことが……。
そして同時に、僕が次の生けにえだということも……。



『2、引き止めない』



私は、彼を引き止めることもなく、その背中を見送った。
……あまり気持ちのいい話ではなかったわ。
毎年一人、人形のために生けにえを出さなければいけないなんて。
その話が本当だったら、ここにいるみんなもその一人かもしれないわけね。

「あっ!」
誰かが小さく叫んだ。
テーブルを見ると、そこには髪の毛のような束が置かれていた。
誰かが、頭から無理矢理引き抜いたような感じがした。
「誰が置いたの?」
私は、その髪の束に手を伸ばした。

すると、いきなりテーブルに掛けてあった赤い布が私におおいかぶさった。

「きゃっ!」
私はもがいた。
布は、私に絡みつくようになかなか離れない。
ふと、布越しに誰かの手が私の顔をなぞった。
「皆さん、ふざけないでください!」
私はいった。

すると、布はするりと私の頭から滑り落ちた。
私は、誰の仕業かと思い、辺りを見回した。
「……………………嘘でしょ?」
私は、一人つぶやいた。
みんなが座っていたはずの椅子には、誰も座っていない。

私は止まってしまった。
そう、そこにはぽつんと椅子に座っている小さな子供がいたから。
なんで、こんなところに子供が?
……いや、この子は人間ではないわ。
そうよ、これは……。
私はすぐにわかった。

この子は、荒井さんが話してくれた人形だっていうことが。

そして同時に、私が次の生けにえだということも……。
7話生けにえはお前だ!



新堂さんは、むっとしていた。
荒井さんは、そのまま部屋を出ていったきり戻ってくる様子もない。
彼は、いったい何であんなことをいったのかしら。
私たちのうち、誰か一人が人形の生けにえになるなんて。
冗談にも程があるわ。

「帰らしてもらうぜ」
新堂さんは、さっさと荷物をまとめ、部屋を出ていってしまった。
私には、それを止める権利はない。
見ると、誰もが帰りたそうな雰囲気だった。
そして、七人目が来る気配もない。

もっとも、もし今頃七人目がきたとしても、とても話を続ける雰囲気ではないけれど。
どうしよう?

このまま、もう終わりにしたほうがいいのかしら?



『1、終わりにする』



やっぱり、終わりにした方がいいわよね。
もう、ここに残っている意味はないんだもの。
「それでは、皆さん。
今日はほんとうにありがとうございました」
私は残っている人々に一礼し、それをシメの言葉とした。

みんなが帰ったあと、私は最後に戸締まりをし、鍵をかけた。
私は、たいして人形の話を気に止めたわけでもなかった。
怖い話にはよくあることよ。
ああやって、最後にその場にいる人間に不快感を与える話は、聞いたことがあるわ。

例えば、声を押し殺して静かに話を進めていって、一番盛り上がるところで、大声を上げて驚かせる話。
この話を聞いたものに、不幸が訪れるといって終わる話。
そういったものの類いに決まっている。

……でも、そんなことを考えるということは、逆に私は気にしていることになるのかしら?



『2、まだもう少し残っている』(変更)
「なんで僕たちがこんな嫌な気分にさせられなきゃいけないんだい?
しかも、ここに残れっていったいどういうこと?」
細田さんが僕にくってかかる。

「いや、いいんだよ。僕たちのことを心配してくれたんだろ。でも、僕たちの心配はいいから自分の心配をしなよ。そんなに心配しないで。誰も死にはしないよ。それじゃあね」

「あのう、みなさん。
もう少しここに残っていませんか?
なんだか、そういう気分なんですけど……」
私はそういってみた。

「ええっ、かんべんしてよ。
こんな嫌な気分にさせられて、しかもこのまま残れだなんて……」
細田さんが、文句をいいだした。
確かに彼のいう通りよね。
ここで彼らを引き止める理由はないわ。
私はいった。

「……すみません。
別に意味はないんですが……。
あの話のことが、ちょっと心配になってしまって。
これからどうすればいいか話し合ったほうがいいかなって……。
それで、つい……」

「いや、いいよ。
僕たちのことを心配してくれたんだよね。
もう、みんな友達だしなあ。
そんな顔をしないでよ。
誰も死なないって。
それじゃ、また今度ね」

細田さんは、そういって帰っていった。
みんなも、後をついてぞろぞろと帰っていく。
「おつかれさんー」

最後の一人が帰り、私は最後に戸締まりを確認した。
私は、荒井さんの言葉を頭の中で繰り返していた。
そう、あんな話は嘘よね。
この中で誰かが死ぬ?
そんな馬鹿な話、あってたまるものですか。



※以下同文※



部室のドアに鍵がかかっていることを確認して、帰ろうとした、その時。

「恵美ちゃん……」
後ろで、誰かの呼ぶ声がした。
悲しそうに震える女性の声。
私の足は、恐怖で震えた。

振り向くべきなの?



『1、振り向く』



私は、肩越しにゆっくり振り向いてみた。

「……やだ、福沢さんだったの」



『2、振り向かない』(変更)
こんなタイムリーに出てくるなんてひどい!
さっき、あんな話は嘘だぞって自分にいいきかせたばっかりなのに!
ゾクゾクと背中に気配を感じる。

私は、肩に力を込めた。
ちょっと待って……。
まさか、に、人形!?
こんなにタイムリーに出てくるなんてひどい!
ゾクゾクと背中に気配を感じる。
こうなったら走って逃げようか。
それしかないわ!

「ひっ!」
その時、それは私の肩をぐっとつかんだ。
そして、私を無理矢理振り向かせた。

「助けて…………やだー、福沢さんかぁ」



※以下同文※(女用)
「なんだはないでしょ。
せっかく、一緒に帰ろうと思って待ってたのに」

そこには、困ったような顔をしてたたずむ福沢さんがいた。
「やだはないでしょ。
せっかく、一緒に帰ろうと思って待ってたのに」
私の気の抜けた声を聞いて、彼女はちょっと頬をふくらませ、口をとがらせた。

「ごめん、ごめん。
そういう意味じゃなくて、ちょっと勘違いしただけなの」
「何と?」
「何とって……」

「さっきの話、気にしてるんでしょ?」
彼女は、いたずらっ子のように笑ってみせた。
「そういう福沢さんは?
福沢さんこそ、一人で帰るのが怖くて、私のこと待ってたんじゃないの?」
私もお返しに笑ってみせた。
「えへへ……、実はそう。
せっかくこうして知り合ったんだからさ。
一緒に帰ろうよ」
どうしよう?



『2、一人で帰る』



「ううん、私は一人で帰るわ。
これから、宿直室に鍵を返してこないといけないし。
わざわざついてきてもらうのも悪いでしょ……」

私は、福沢さんに嘘をいった。
実は新聞部の部室の鍵は、先輩がコピーを作っていたの。
それを今私が借りているから、本当はこの鍵は戻さなくてもいいのよね。
福沢さんは、はっきりいってうるさい感じだから私はちょっと苦手だわ。

岩下さんよりはまだましだけど。

「あら、そう。
せっかく待っていたのに残念。
そうだ、先に通用口で待ってるよ。
それでもダメ?」
福沢さんは、なかなかあきらめない。
「いいわよ。
じゃあ私も急いで返してくるから、後で落ち合おう」

私は、彼女の押しに負けた。

「それじゃあね」
私達、別々の方向に歩き始めた。
……どうしよう、面倒くさいことになったわ。
ちょっと、時間をずらしていかないと変に思われてしまう。
あの時、意地を張らずに彼女と一緒に行くといっておけばよかった。

仕方ない、ちょっと遠回りしていこう。

夜の校舎はとんでもなく怖い。
思い出したくないのに、さっきのみんなの話が頭の中に浮かんでくる。
目がだんだん暗闇になれてきたものの、非常灯しかついていない廊下は心もとないわ。

ふと、先の曲がり角に人影のようなものが見えた。
……気配がする。

私は思わず足を止めた。
どうしよう。
それは、私の様子をじっとうかがっているようだった。
私の手や足に脂汗がじっとりとにじんでくるのがわかる。
しかも、それは私が動かないのにしびれを切らしたのか、こちらに近づいてきた。

飛び跳ねるように、体をくねらせギクシャクしながら……。
非常灯の緑の明かりをバックに、どんどん近づいてくる。
早く、この場から逃げないと!

私は、その影に背を向けて全速力で走った。
とにかく、影と離れることだけを考えた。
でも、どんなに走ろうが影の足音は遠ざかることはない。
あっ、あそこに歩いているのは福沢さんだわ。
私は、もつれそうな足で一生懸命に走った。

「福沢さん!!」
私は、思わず彼女の背中にしがみついた。
「恵美ちゃん!?
どうしたの!?
急にしがみついちゃって」
足音がまだ聞こえている。
彼女には見えないの!?
あいつの姿と足音が……。

私は、福沢さんの背中にしがみついて目をつぶったままだった。

「……恵美ちゃん。
恵美ちゃん!」
福沢さんが、私を背中から引きはがして肩を揺すっていた。

「どうしたの!?
汗びっしょりだよ。
もう鍵は返してきたの?」

そして、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
見ると、あれはもういなかった。
私のシャツは、水に浸したようにぐっしょりと濡れていた。
息が、とても荒かった。
「ねえ、大丈夫? 少し、座ったら?」

改めて、福沢さんは声をかけてくれた。
「もう、大丈夫よ。さあ、行こう」

言葉ではそういったものの、あの得体の知れない人影が、私の脳裏に焼きついて離れなかった。
……果たして、福沢さんは、あれを見たのかしら?
どうしよう。
聞いてみようか?

いや、聞かないほうがいいのかしら?



『1、一緒に帰る』



「うん、そうね」
「よかった!」
彼女は、嬉しそうに私に近づいてきた。
二人肩を並べて、誰もいなくなった新校舎の廊下を歩く。

「もう八時過ぎなんだね」
福沢さんが、側の教室を覗き込み壁にかかった時計を見て驚いた。
そうか、もうそんな時間になっていたのね。
私が部室に来たときには今にも雨が降りそうな天気だったけれど、どうやら持ちこたえたみたい。

「ずいぶん遅くまでいたのね」
「うん」
それきり、話が進まなかった。

私は、何を話していいのかわからず、会話を捜していた。
明るそうな福沢さんなら、何か話題を見つけてくれんじゃないかという期待をかけたのだけれど、それはちょっと虫のよい願いだったかもしれない。
それにしても、福沢さんがいて、私自身助かったわ。

あれだけ怖い話を聞かされたあとで、一人で学校から帰る勇気は、私にはちょっと足りないと思う。
自然と早足になり、ふだんより長く感じる廊下を歩いていく。

廊下に響く足音しか音が聞こえてこないため、それがやけに大きく聞こえ、まるで何人もが後ろからついてきてるような錯覚さえする。
すべては、荒井さんに植えつけられた恐怖心によるものかしら。

……えっ?
何なの?
廊下の向こうに人影が見える。
何だか、こっちに向かって、おいでおいでをしているように見えるけれど……。
どうしよう?

向こうには行かないほうがいいんじゃないの?



『1、このまままっすぐ進む』



いいわ、このまままっすぐ行ってしまおう。
あの人影も気のせいよ。
私と福沢さんはそのまままっすぐ歩く。

すると、その人影はふっと曲がり角に姿を消した。
……姿を消したんじゃない、あれは幻影よ。
よかった、やっぱり私の気のせいね。
そして、最後の曲がり角を曲がる。

「!?」
その曲がり角の端には、さっきの人影が張りついていた。
そして、福沢さんを挟むようにして私を見ている。
それは、非常灯の緑の明かりにほんのり照らされていた。
私は、視界の中にそいつが入らないように早足で歩いた。

「恵美ちゃんて歩くの速いんだね」
福沢さんがいう。
私は、その問いかけには答えず足を進めた。
そいつは、じっと私の後ろ姿を見つめているみたい。
どうやら、私の後にはついてこないようね。

こんな時刻だから、さすがに生徒用の入り口は閉ざされている。
したがって、通用門を通ることになるわけだけど……。

廊下の奥に、非常灯のついた通用口が見える。
「やっと出口だわ……」

私は、ホッとして呟いた。

福沢さんはそんな私を見て笑っている。
……ちょっと待って、あの音は?
確かになにかが聞こえる。

私は、後ろを振り返った。
窓の外から、街灯の明かりが淡く差し込んでいる。
とぎれとぎれになにかが見えた。

人影!?
……向こうから人影がこちらに向かってやってくる。
「……恵美ちゃん。
恵美ちゃん!」
福沢さんの声で、私は、はっと我に返った。

福沢さんが、私の肩を揺すっている。
「どうしたの?
汗びっしょりだよ」

そして、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
見ると、あれはもういなかった。
私のシャツは、水に浸したようにぐっしょりと濡れていた。
息が、とても荒かった。
「ねえ、大丈夫? 少し、座ったら?」

改めて、福沢さんは声をかけてくれた。
「もう、大丈夫よ。さあ、行こう」

言葉ではそういったものの、あの得体の知れない人影が、私の脳裏に焼きついて離れなかった。
……果たして、福沢さんは、あれを見たのかしら?
どうしよう。
聞いてみようか?

いや、聞かないほうがいいのかしら?



『2、後戻りして別の道を行く』



「ねえ、福沢さん」
私は、福沢さんの袖を引っ張った。
「どうしたの?」
「ちょっと、ほかの道を行かない?」

福沢さんが、きょとんとした顔で私を見る。
突然、私がそんなことを言い出したことがよほど不思議なのね。
「どうして?」
「……どうしてって。
何か悪い予感がするのよ。
このまままっすぐ行っちゃあいけないような……」

福沢さんは、今にも吹き出しそうに、口もとに手を当てた。

「平気だよ。
恵美ちゃんて、本当に弱虫だね。
大丈夫、大丈夫。
私がついているから」
そういうと、彼女は私の手を取って、ずんずん先に歩き始めた。
何だか、ものすごい力。
まずいんじゃない?

このまま歩いていくのは、まずいんじゃないの?



『1、彼女の手を振りほどく』



「やめてっ!」
私は、気がつくと自分でも驚くほどの大声で叫んでいた。

福沢さんは、びっくりした様子で慌てて私の手を離した。
呆気にとられ、怖いものでも見るような目で私を見ている。
「ごめん……。つい、大声を出しちゃって」

「……いいの。
でも、びっくりしちゃった。
恵美ちゃんが、ここまで怖がりだなんて思わなかったから。
ごめんね、無理いっちゃってさ。
わかったから、違う道を行こうよ」

福沢さんは、年上気取りで、私の肩をポンポンとたたいた。
何だか、とても気恥しい。
確かに私は怖がりだけれど、同い年の女の子に同情されると、妙に言い訳したくなってしまう。
それでも、このままこの廊下を突き進む勇気は、やはり持ち合わせていない。

この場は逆らわず、福沢さんの好意を受けることにした。

私は、引き返し、別の道から帰ることにした。
急がば回れ。
それが一番いいわ。
……だけど。
私は、また足を止めた。

この先にも、何かいるわ。
私は、得体の知れない人影に挟まれてしまった。
しかも、今度のそれは私のほうにゆっくりと近づいてくるじゃない。
それは、跳びはねるように体をくねらせ、ギクシャクしながら近づいてくる。

まるで、操り人形のように……。
人形?
私は息を飲んだ。
見ようによったら、確かにあれは人形だわ。
まさか、荒井さんの話していたあの人形じゃあ……。



『2、このままついていく』



いいわ、このまままっすぐ行ってしまおう。
あの人影も気のせいよ。
私と福沢さんはそのまままっすぐ歩く。

すると、その人影はふっと曲がり角に姿を消した。
……姿を消したんじゃない、あれは幻影よ。
よかった、やっぱり私の気のせいね。
そして、最後の曲がり角を曲がる。

「!?」
その曲がり角の端には、さっきの人影が張りついていた。
そして、福沢さんを挟むようにして私を見ている。
それは、非常灯の緑の明かりにほんのり照らされていた。
私は、視界の中にそれが入らないように早足で歩いた。

「恵美ちゃんて歩くの速いんだね」
福沢さんがいう。
私は、その問いかけには答えず足を進めた。
そいつは、じっと私の後ろ姿を見つめているみたい。
どうやら、私の後にはついてこないようね。

こんな時刻だから、さすがに生徒用の入り口は閉じられている。
したがって、通用門を通ることになるわけだけど……。

廊下の奥に、非常灯のついた通用口が見える。
「やっと出口だわ……」

私は、ホッとして呟いた。

福沢さんはそんな私を見て笑っている。
……ちょっと待って、あの音は?
確かになにかが聞こえる。

私は、後ろを振り返った。
窓の外から、街灯の明かりが淡く差し込んでいる。
とぎれとぎれになにかが見えた。

人影!?
……向こうから人影がこちらに向かってやってくる。



※以下同文※



「……恵美ちゃん。
恵美ちゃん!」
福沢さんの声で、私は、はっと我に返った。
福沢さんが、私の肩を揺すっている。
「どうしたの?
汗びっしょりだよ」

そして、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
見ると、あれはもういなかった。
私のシャツは、水に浸したようにぐっしょりと濡れていた。
息が、とても荒かった。
「ねえ、大丈夫? 少し、座ったら?」

改めて、福沢さんは声をかけてくれた。
「もう、大丈夫よ。さあ、行こう」


言葉ではそういったものの、あの得体の知れない人影が、私の脳裏に焼きついて離れなかった。
……果たして、福沢さんは、あれを見たのかしら?
どうしよう。
聞いてみようか?

いや、聞かないほうがいいのかしら?



『1、尋ねてみる』



もし、福沢さんもあれを見ていたら、あれは幻覚じゃない。
本当に、誰かがいたことになる。
私は、思い切って話を切り出した。
「福沢さん。今、廊下の向こうのほうに誰かいなかった?」

福沢さんは、一瞬目を大きく開いたあと、今度は目を細めて私を疑わしそうに見た。
彼女は何も見ていない。
私は、すぐに言い直した。
「いや、私は別に何も見てないんだけど。
あれだけ怖い話をしたでしょう?
だから、何だか疲れちゃって……」

「本当に大丈夫?」
福沢さんは、私をモルモットを見るような目で見ている。
これ以上、この話にはふれないほうがよさそうね。
「帰ろうよ。
こんなところ先生に見つかったら、どんなに怒られるかわからないよ」
「そうね。早く行こ」

私たちは、何かから逃げるようにして、学校をあとにした。



『2、黙っている』



やっぱり聞かないほうがいいわ。
そうよ、ここでそんなことをいったらきっと私の頭がどうにかなったって思われるに決まっている。
なにもいわないほうがいいわよね。

「本当に、さっきはどうしたかと思ったよ。
なにかあったの?」
福沢さんは、まだ心配そうに私を見ている。
「大丈夫。
ちょっと、くらくらしただけ。
私、血圧が低くてたまにこういう状態になるのよ。
困っちゃうよね」

私は、もっともらしいことをいってその場をごまかした。

「もしよかったら、私の肩を貸してさしあげてもよろしいでございますことよ。
ほほほ」
福沢さんがそういって笑う。
私は、彼女の冗談で少し気が紛れた。
「けっこうでございます。お嬢様。
さあ、まいりましょう。
夜の学校は、何が起こるかわかりませんから……」

私も、彼女に冗談を返した。
そうよ、早くここから出よう。
夜の学校は、何が起きるかわからないもの。
そして、私たちは足早に学校を後にした。

私はあれから考えた。



※以下同文



やっぱり、あれは錯覚だったのよ。
私は、自分を納得させるため、何度もそう自分に言い聞かせた。
あの得体の知れないものは、一瞬しか見ていないのだし。
本当に疲れていたから、いもしないものを見てしまったのよ。

……でも、それが間違いであることはすぐに思い知らされた。
これが、恐怖の始まりだったなんて。

……次の日、私は日野先輩に呼ばれた。
昨日のことを報告しなければならない。
放課後、部室に行くと日野先輩が待っていた。
「よお、倉田。昨日はご苦労さん。
どうだった?」

何について話そう?



『1、昨日聞かされた怖い話のこと』



「はい。
だいたい、うまくいったと思います。
それにしても、みんなずいぶんと怖い話を知ってますよね。
私、感心しちゃいました。
……でも、風間さんてなんなんですか?
何か、とんでもなく危ないというか不思議というか、ちょっと常識じゃあ考えられない人ですよね」

「あっはっは。悪い、悪い。
あんまり怖い話ばかりだと疲れると思って、あいつに頼んだんだよ」
日野さんは、最初から私の言葉を予測してたように、楽しそうに笑った。
「そうだったんですか。日野さんも人が悪いですよ」

「で、ほかはどうだったの?」



『2、七人目が来なかったこと』(変更)
そうだった。すっかり話すのを忘れてたけど、ありゃあ、僕のミスだ。



「はい。
とりあえず問題はなかったんですけれど、実は七人目の方が来なかったんですよ。
それで、六話分しか話を聞けなかったんですけど……」

日野さんは、しまったといわんばかりのリアクションを取り、ポンと手をたたいた。
「そうだった。
すっかり話すのを忘れてたけど、ありゃあ、俺のミスだ。
七人に声をかけたつもりだったけれど、後で考えたら六人しか声をかけてなかったんだよな。
あとで謝ろうと思ってたんだけど、忘れてたよ。
ごめん、ごめん」
何というあっけない結末。
まさか、日野さんが一人呼ぶのを忘れてたとは。
拍子抜けして、返す言葉もないわ。

「そんな顔するなよ、倉田。謝ってるじゃないか。
で、ほかはどうだった?」



『3、これからの予定のこと』



「はい。
昨日のことというよりも、これからの予定なんですけれど、どうやって進めて行こうかと思いまして。
やっぱり、文章だけじゃなくて、イラストとか写真とかをふんだんに使って、見た目でもおもしろい記事にしたほうがいいと思うんですよ。
うちの学校って、こんなに怖い話があるとは思わなかったですし、きっとみんなも知らないと思うんですよ」

私の提案を、日野さんは嬉しそうに聞いていた。
「そうか。頼もしいこといってくれるじゃないか。
じゃあ、記事のほうはお前に任せるよ。
好きにやって、傑作を作ってくれ」
私は、思わぬ大役を任され、ちょっと得意になった。

「で、ほかはどうだったの?」

「……ほかにですか?
そうですねえ……」
私が考え込んでいると、日野さんは身を乗りだした。

「でさあ、お前はどの話が一番怖かったんだ?
まさか、風間のが一番怖かったんじゃないだろ?」
「まさか。そんなことないですよ。
確かに、最初聞いているうちは驚きましたけど、話がムチャクチャですもん。
そうですねえ、私が一番怖かったのは……やっぱり荒井さんのですね」

人によってどの話が怖いかというと意見は分かれると思う。
でも、私は荒井さんのあの話し方や雰囲気、そして何よりも最後にとても嫌な気分にさせられたあの話の落ちが一番印象に残ったの。

「荒井の話? どんな話だ?」
日野さんは、不思議そうな顔で首を傾げた。
日野さんも、荒井さんがどんな話をするのか聞いていないみたい。
もっとも、どの話をするのかも、彼らにおまかせだったのだろうけれど。

私は、荒井さんの話をかいつまんで話して聞かせた。

「ええ。 人形の話なんですけれどね。
この学校では、毎年一人ずつ人形に生けにえを差し出していくっていうんですよ。
それで、今年の生けにえを一人差し出せば、人形に生けにえを差し出す儀式も終わるっていうものなんですけど……」

「その荒井って奴は、人形の生けにえになったわけだな」
日野さんは、ようやく納得したように一人でうなずいた。
何をいってるの、日野さん。
「いえ、違いますよ。
荒井さんが話してくれたんであって、荒井さんは生けにえになんかなりませんよ。
もっとも、最後に、私たちの誰かが生けにえになるっていってましたから、もしかすると……」

「ちょっと待てよ。荒井って誰だよ」
日野さんが、不思議そうな顔で口を挟んだ。

「荒井って誰だ?」
日野さんの一言は、私にはとても理解できないものだった。
「……誰って。
日野さんが呼んだんじゃあ……」
「俺は荒井なんて呼んでないぜ。
呼ぶも何も、そんな奴は俺の知り合いにいないしな。
お前、夢でも見たんじゃないか?」

「そんな……」
「そうだよ。
お前、夢と現実が、ごっちゃになってんのさ。
俺が呼んだのは、風間と新堂、それに岩下、清瀬、細田、福沢の六人だ」
「清瀬?」
清瀬という名前に聞き覚えはない。

そんな人は間違いなくいなかった。

「清瀬だよ、清瀬。
三年F組の清瀬尚道だよ。
行かなかったのか?」
日野さんも、何だか気味の悪そうな顔で私に聞いてきた。
「……ええ」
私は、うなずくしかなかった。
そんな人を、私は知らないのだから。

「本当に、荒井って奴がいたんだな?」
「ええ」
私は、きっぱりとうなずいた。
あれは夢じゃない。
他の人に聞いてもそういうはずよ。
そうだわ。
他の人に確かめてみればいいのよ。

「私、昨日話を聞いた人たちに確かめてみます!」
私はそういうと、日野さんの言葉も聞かずに部室を飛び出した。
まだ、みんな残っているかしら?

誰のところに行ってみようか?



『1、福沢玲子』



私は、福沢さんを捜すことにした。

福沢さんの教室に行くと、福沢さんは、何人かの女の子たちと楽しそうにおしゃべりをしていた。
私が手を振ると、気づいたようで手を振り返してくれた。
そして、小走りに近づいてきた。

「どうしたの、恵美ちゃん?
あ、私に会いたくなっちゃったわけ?」
「それより、大変なのよ。
昨日、私たちは確かに荒井さんの話を聞いたわよね」

福沢さんが、また心配そうな顔をした。
どうも、昨日の夜の私の行動と重ね合わせているらしい。
「……どうしたの? 頭、大丈夫?」
「いいから、答えて。
私たちは確かに荒井さんから人形の話を聞いたわよね?」

福沢さんは、私の迫力に圧倒されたのか、小さく頷いた。

やっぱり、福沢さんも見ていたのね。



(2回目)

さっき、福沢さんから話は聞いたわ。
ほかを当たろう。



『2、岩下明美』



私は、岩下さんのところに行くことにした。

教室を捜し当て、中を覗くと岩下さんは机に手をついてぼんやりと何か考え事をしていた。
「岩下さん!」
私が声をかけると、岩下さんはゆっくりと振り向いた。
そして、あのぞくっとする薄気味悪い笑顔を浮かべ、私を手招きした。

私は、彼女の側に立つと小声でささやくようにいった。
「……あのう、荒井さんのことなんですけれど」
「人形の話?」
岩下さんが人形の話を切り出すということは、やっぱり私の夢ではなかった。
岩下さんも、荒井さんの話を聞いていたんだわ。

「いえ、それよりも、さっき日野さんに聞いたんですけれど。
どうも、荒井さんて呼ばれていないらしいんですよ。
それ以前に、そんな人は知らないっていうんです」
私は、岩下さんの反応に期待したけれど、至って平静で驚きもしなかった。

「あら、そう。それでもいいじゃないの。
私は、ずっと人形を見ているから」

「え!?」
「この世は人形だらけ。
私以外は全部、人形よ。
あなただって、人形だわ。
……ほら、あなたの後ろにも人形がいる」

私は、ぎょっとして振り向いた。
昨日の帰りの記憶が、まざまざと蘇って。
私の後ろには誰もいなかった。

ほっとして再び岩下さんに目を向けると、彼女は小悪魔のように笑っていた。

彼女の話はどこまで本気なのかわからない。

誰のところに行ってみようか?



(2回目)

やめよう、今あの人のところにいったら嫌な気分になるだけよ。
ほかを当たろう。



『一話で消えていた場合』(追加)



……やっぱり。
岩下さんは、さすがに学校を休んでいた。
他の人にあたったほうがよさそうだ。



『3、新堂誠』



私は、新堂さんに会ってみることにした。

新堂さんの教室に行くと、誰もいなかった。
もう、みんな帰ってしまったみたい。

仕方ないわ。
新堂さんはあきらめよう。



(2回目)

さっきは、あのクラスに誰もいなかったんだっけ。
みんなが帰ったあとみたいだし、ほかを当たろう。



『4、風間望』(女用)
「あはは……、相変わらずつまらない奴だなあ、君は。そんなことじゃあ僕みたいに女の子にもてないよ。
せっかく、女の子にもてる方法を教えてあげようと思ったのに」

「そうだ。君に特別に、女の子にもてるギャグを教えてあげよう。今なら、特別大サービスの五千円でいいや。一つ、どう?」

私は風間さんを捜すことにした。

私は風間さんのいる教室に向かった。

捜したけれど、いない。
確か、ここだと思ったけれど……。

「わっ!」
突然、後ろから両手で目隠しされた。
「私は悪魔の使いだ」
そんな言葉が、耳元でささやかれた。
「風間さん!
ふざけないでください」
私は、その手を振りほどき振り返った。

「わっ!」
そこには、巨大なゴキブリが……。
って、そんなものいるわけないわ。
私は、巨大なゴキブリの形をした趣味の悪いマスクを取った。

ゴキブリの中から、風間さんのニヤけた顔が現れた。
「あはは……、相変わらずかわいいなあ、君は。
ごめんね、驚かしちゃって。
そうだ、おわびに今度いいところへ連れて行ってあげるよ」
この人と話していると、調子が狂ってしまう。

「ねっ。
デートしようよ、きっと楽しいから。
そうだなあ、今度の日曜なんてどうだい。
もちろん、オーケーでしょ?」

「もう、いいです」

私は、風間さんの話は聞かずに、教室を飛び出した。



(二回目)

いや、風間さんのところには二度と行きたくないわ。
絶対行くものですか。
ほかを当たったほうが賢明よね。



(二回目・男)変更
いや、風間さんのところには二度と行きたくない。
絶対行くもんか。
ほかを当たったほうがけん命だ。

いや、風間さんのところには二度と行きたくない。
ほかを当たったほうが賢明だ。



『5、細田友晴』(追加)



私は、細田さんを捜すことにした。

細田さんの教室に行くと、まだ数人の生徒が残っていた。
「あのー、細田さんはいらっしゃいますか?」
私が誰とはなしに尋ねると、みんな大きな声で笑い始めた。

「ぎゃははははは……、細田?
細田なら、トイレじゃねーのか?
あいつ、いっつもトイレにいっからよぉ。
トイレを捜してみな!
ぎゃはははは……」

ええっ?
細田さんて、そんなにトイレが好きなの?
仕方ないわ。
トイレを捜してみよう。

「おっと!」
教室から出ようとした振り向き様、私は細田さんの巨体にぶつかった。
細田さんは、ハンカチで手をふきながらニコニコ笑っていた。
どうやら、トイレで用を済ませてきたらしい。



(花に噛まれたかサンブラ茶を飲んでいた場合)



……って、ちょっと待ってよ。
そうだわ、昨日家に帰ったら、なぜか細田さんから電話があったのよね。
なんだろうと思ってたら、いきなり竹内さんの話を始めて。
そう、トイレに行かないという竹内さんの話。

これは君だけにいいたかったんだ、なんていって、変なことをいいだしたのよね。
みんなに語った話は実は嘘だって。
竹内さんなんて人は存在しないって。

細田さんは、サンブラ茶という飲み物を外国で手に入れて、愛飲しているっていってたわ。
サンブラ茶……それは、飲めばトイレに行かなくて済むようになるというお茶。
そのお茶を飲みながら考えた話を、みんなに聞かせただけっていってたわね。

特別にそのお茶を飲ませてあげようか、なんてわけのわからないことをいってたけど……。
細田さんたら、なんでトイレに行ってるの?
トイレに行かなくて済むようになったんじゃないの?

ううん、……トイレに用をたしに行ったわけではないかも。

トイレで新聞を読むのが日課、って人もいるみたいだし。
きっと細田さんは、トイレという空間が好きなのね。
あの電話は冗談かもしれないし。
あっ、余計なことを考えている暇はないわ。
荒井さんのことを確かめなくちゃ……。



細田さんは、満面の笑みを浮かべている。

「やあ、倉田さんじゃないか。
嬉しいなあ、僕を訪ねてきてくれたの?
僕たちは、親友だね!」
そういい、私の肩を抱きしめた。

「あ、あの……、細田さん。
それよりも、大事な話があるんです。
荒井さんの人形の話、覚えてますか?」

そういうと、細田さんは私を離し、途端に気味悪そうな顔をした。
「あの話はやめてくれよ。
僕だって、忘れようと努力してるんだから。
それにしても、荒井君もたちが悪いよなあ……。
あんな話をして、みんなを怖がらせるんだから」

「やっぱり、荒井さんの話を聞いているんですね!」
私が突っ込むと、細田さんは驚いたように後退りした。

「何を言い出すんだよ、倉田さんたら……」
「細田さんは、昔から荒井さんのことを知っていたんですか?」
「……いや、昨日初めて会ったんだよ。
同学年なのに、僕は荒井君のことを見たことないものなぁ。
でもこの学校は人が多いから、仕方ないかな」

細田さんは不思議そうに首をかしげた。
「ありがとうございました」

私は、それだけいうと、細田さんの教室をあとにした。



(二回目)


もう、あの人のところには行かないわ。
親友なんて冗談じゃない。



『6、清瀬尚道』




清瀬さんを捜してみよう。
そうすれば、日野さんのいっていたことが、ただの冗談だったのか、それとも本当の話だったのかがわかるはず。
私は、日野さんのいっていた三年F組へ足を運んだ。

「あのう、ここに清瀬さんて方いらっしゃいますか?」
「俺だけど?」
教室の隅から声がして、誰かが近づいてきた。
彼が、清瀬さんなの?

「君、誰?」
「あのう、私、新聞部の倉田恵美といい……」
「ごめん!」

私が自己紹介をすます前に、突然彼は両手を合わせ、頭を深く下げた。

「いやあ、日野の後輩だろ?
ごめんよ。昨日、突然熱が出ちゃってさあ。
あんまりつらいから、早退したんだ。
悪いと思ってる。
今度、取っておきの怖い話をするから……どうしたんだ、ぼーっとして?」

「あ、いや、すいません」
今度は私が、清瀬さんに頭を下げた。

……清瀬さんはいた。
そして、昨日の集まりには来なかった。
私は、清瀬さんにもう一度頭を下げると、三年F組をあとにした。



みんなの話を聞いてみると、やっぱり荒井さんはあのとき、あの場所にいて、あの人形の話をしたことになる。
けれど、日野さんは荒井さんを呼んでいない。
日野さんが呼んだのは、熱が出てこれなくなった清瀬さん。
……いったいどういうことなの?

荒井さんて何者なのかしら。
確かめるべき?

それとも、このことは忘れるべきなの?



『1、確かめる』



私は、背筋がぞっとするのを抑え、二年生の教室を一つずつ訪ねて回った。
だって、私はあの話を聞いたあとに、得体の知れない不気味なものを見てしまったのだから。
荒井さんの話が本当なら、今年の生けにえは私かもしれない。

いないはずの荒井さんは、なぜ、呼ばれもしないのに新聞部にやって来て、あんな話をしたのかしら?

私は、二年生の教室をすべて回った。
そして、一つの事実がわかった。
二年生に、荒井昭二という名前の人物はいないということ。
なら、彼は何者なの?
もう一度、捜そう。
さっき、誰もいなかった教室があったかもしれない。

私は、きっと見落としているのよ。
何としても、確かめなくちゃ。

「倉田!」
私が、もう一度、二年生の教室を回ろうとしたとき、後ろで呼び止める声がした。

「新堂さん!」
振り向くと、そこに新堂さんが立っていた。
「お前、荒井をどこかで見なかったか?
ぶん殴ってやろうと思って捜してるんだけどよ」
新堂さん、怖いわ。
それに、どこかしら、顔色が悪いみたい。

新堂さんは、私に近づいてくると、ため息交じりに呟いた。
「……で、どうだ?
荒井は見つかったのか?」
新堂さんも……?
新堂さんも、見つけることができなかったの?
私は、正直に首を横に振った。
「……そうか。
ちょっと、こっちこい」



『2、忘れよう』



私は、これ以上この件については触れないほうがいいと思った。
なにか、触れてしまったらとんでもないことが起きそうで、正直いって怖かった。
でも、荒井さんは何者なのかしら?
私は、ボーッと二年生の教室脇の廊下を歩いていた。

「倉田!」
私は、呼び止める声にはっとして後ろを振り返った。

「新堂さん!」
振り向くと、そこに新堂さんが立っていた。
新堂さんは、こぶしを作りながらいった。
「なんだ、お前も荒井を探しにきたのか?」
私は新堂さんに訴えるようにいった。

「私は、荒井さんを捜しにきたわけじゃないんです。
……実は、あの会には荒井さんが来るはずじゃなかったんです。
清瀬さんという人が来るはずだったそうなんですよ。
ええ、日野さんに聞きました。それで、その清瀬さんという人を尋ねてみたんですが……。
何がなんだかさっぱりわからなくて」

新堂さんは、私に近づいてくると、ため息交じりに呟いた。
「……そうか。……俺は荒井を捜したぜ」
私は、ちょっとびっくりした。
「……えっ! ホントですか!?
それで?」
さっきまでは、この件に首を突っ込まないっていっていた自分が嘘のようだわ。

「……ちょっと、こっちへこい」



※以下同文※



新堂さんは、私を柱の陰に誘った。
そして、小声で話し始めた。
どうも、人に聞かれるとまずい話のようだった。

「うちの学校の二年に、荒井昭二なんて奴はいないみたいだぜ」
新堂さんの言葉は、私の微かな希望を完全に打ち砕いてくれた。

「……昨日な、あれから気になって、俺はいろいろと調べたのさ。
するとどうだ。
あいつの話した人形の話は、どうやら本当みたいなんだ。
毎年、一人は必ず犠牲になって死ぬらしい。
だから、俺はあんなことをいった荒井をぶん殴ってやろうと捜したんだけど、いないじゃないか。
そんな奴はうちの生徒にいなかったのさ。
……俺は、あいつの最後の言葉が気になって仕方ないんだ。
俺たちの誰かが、今年の生けにえになる。
そんなことをいった奴が、この世に実在しない奴だったなんて、気味悪くねえか?
……おい、倉田。
俺の話、聞いてるのか?」

私は、それどころじゃなかった。
新堂さんの後ろに見える、物体。
それは、間違いなく人形だった。
茶色い顔をした、等身大ほどの大きさの人形が、教室の窓から、私のことをじっと見ていた。

「どこ、見てんだよ、倉田?」
新堂さんは、私の視線が気になって振り返った。
けれど、新堂さんにそいつは見えないらしく、辺りをきょろきょろ探すばかりだった。

「どうしたんだよ、倉田!」
新堂さんに揺すられたとき、もう人形はいなくなっていた。
「……なんでもありません。
新堂さんの話を聞いて、ちょっと気分が悪くなっただけです」
新堂さんは、私の言葉を信じてくれたようだった。

「そうか。
気をつけろよ。
とにかく、あいつのいった言葉なんか信じないことだ。
学校には、これだけの生徒がいるんだぜ。
別に、俺たちの誰かが生けにえになるなんてことあるわけないさ」

それは、私にいっているのじゃなく、新堂さんが自分に言い聞かせている言葉のように思えた。
それだけいうと、新堂さんは私の肩をたたいて去っていった。

……それからだった。
私が、よく人形を見るようになったのは。
茶色い顔の大きな目をした等身大の人形。
荒井さんの話とはかなり違っていたけれど、見る人によって容姿は異なるといっていたから、きっと、今私の目の前にいる人形がそうなのね。

人形は、さっきから私の部屋の片隅で、じっとたたずんでいる。
最初は、学校でしか見かけなかった人形も、今は私の家にまで来るようになった。
そして、私の人形を見る回数も、日増しに増えていった。

きっと、このままいけば、人形は片時も私の側から離れなくなり、私を取り殺してしまうんだわ。
人形を見る回数が増えるたびに、私自身が無気力になっていくのがわかる。
人形に少しずつ生気を奪われていくような気がしてならない。

無駄な抵抗だとわかっていても、人形と戦おうとしたころの自分が懐かしいわ。
けれどそんなことをしても無駄なの。
人形に、触ることはできないのだから。
私が、人形に触れようとすると、あいつは途端に消え、また別の場所に現れる。

無表情のくせに、まるで私をあざ笑っているようだった。
学校はとっくに終わり、夏休みに入っていた。
私は、いつまで生きていられるのかしら。
あんな企画など引き受けなければよかったと日野さんを恨んだのも、もう昔の話ね。

今は、もう誰も恨む気にならない。
荒井という存在が何者だったのかさえ、私にとってはもう興味がなくなってきていた。
このまま、私は死んでしまうのかしら?
まだかろうじて残っている気力というものに、少しは頼ってみようか?



『1、このまま死ぬのをおとなしくまとう』



いや、もう何もかもこのままでいい。



『5、何をしても無駄な努力よ』



何をしても無駄な努力よ。
今までに何人が無駄な努力をしたのかしら。
いや、選ばれた人はその努力しようと思う気持ちさえも起こらなかったのかもしれない。
もう何もかもこのままでいい。



※以下同文※



今さら、何をしたって結局同じよ。
明日から、学校へも行かない。
風呂にも入らない。
食事もしない。
トイレも行かない。
もう何もしない。
生きるために、やらなければいけないことは全部やめる。

このまま人形に殺されるのなら……。
生きるためにすることが、全部ばかばかしく思えるから。
私は、ベッドに寝そべるとゆっくり目を閉じた。

そして、ゆっくり目を開けた。
隣を見ると、あの人形が私に添い寝をしている。
私の肌に、ぺったりと肌をつけている。
……人形の肌がひんやりと冷たくて気持ちいい。
私は、残った感覚の中でそう思った。

……………………………
……………………………私の肌の暖かさになじんで、人形の肌も暖かくなってきたようね。

……………………………
……………………………いや、違う。
どんどんと、私の体温が低くなっているのがわかる。
これは、人形が私の体温を吸い取っているんだわ。
まぶたが閉じそうになる。
人間て体温が低くなると眠くなるんだっけ……。

もう、このまま眠ってしまったら永遠に目が覚めることはないのかしら。
私の隣には、もうあの人形はいなかった。

その人形は、ベッドに寝ている私を見下ろして立っていた。
私を見て笑っている。
そして、私を後ろに見ながら部屋から出ていった。
そうか、もうあの学校も人形の呪いから解かれるわけね。
私を最後の生けにえとして捧げた後に……。

なぜだか、もう失っていた感情が一瞬よみがえった。

仰向けに寝ている私の目から、一筋の涙が流れるのを感じた。
体温が低いせいか、その涙は暖かく感じられた。
いや、そうじゃない……。
体温がこんなに低くなっても、涙だけはこんなに暖かいなんて……、私は初めて知った。