job hanting


「ところでよー、レンは戦闘員じゃないんだろー?」

『当たり前ですよ。あたし、闘いのたの字も知りませんよ!!』

「だよなぁー?で、何すんだ?」

『……………………何するって?』

「それもそうだな…働かざる者食うべからずとも言うしな…それに長い航海でする事がないのはきついぞ?」

『え?雑用とかあるんですよね?』

「そりゃ山程な」

「だが、隊務として毎日各隊で補っている。」

『非戦闘員も沢山いるんですよね?』

「……ナースだけだ。そのナースは医療班で、ナースではない非戦闘員はレンだけと言う事になるな」

エースが話し出したのは、レンの仕事に関する事。
1600人もいるのだから、仕事も山程あるだろうから、そこから人手の足りないところにと思っていたレンは甘かったと言う事がジョズの発した言葉で発覚した。

『ま、まじでか!?』

ぽかーんと開いた口を閉じる事なく唖然としたレン。

「おーい!!間抜け面してっぞ?」

エースの言葉で、あぁと返事して口を閉じる。
そんな事をしながら船内を進むと、エースが腹が減ったと言い出し三人は食堂へと足を向けた。

食堂へと入ると窓際の一角で腰を下ろす。

『え?隊で振り分けてるならそこに配属してくれたら済む話ではないんですか?』

「隊での訓練にも出て、いずれは戦闘員になるならそれでも構わないが…」

『逃げるの得意ですけど?あとは…護身術程度しかできないです』

「それでも、使える程度には訓練次第でなるかもしれんが…さすがに今の今まで闘いを知らなかった者に闘えとは言えないからな…護身術程度にできればいい」

『え?そしたら、毎日のあたしの仕事は!?』

「多分、親父はそれも含めて居場所を自分で作れと言ったんだと思うが…」

そこへトレンチ一杯に食事を積んだエースが戻ってくる。

「ならさ!レンは元の世界じゃ何してたんだ?」

『え?あぁ、事務員をやっていたけど?』

「…………ジョズ」

「はぁ…事務員てのは、書類仕事なんかをする者の事だ。それくらい知っておけ」

「…事務…書類…………………」

そう呟いて黙り混んだと思ったら、ガタンと大きな物音を立ててエースがレンの両肩を掴むと必死の形相で

「なら!!俺のとこ来いよ!!俺!専用の事務員!!」

『へ?海賊にも書類仕事なんてあるの?』

「隊の日報、隊訓練の報告書、敵襲時の報告書に遠征日誌、始末書、戦闘終了後の弾薬庫武器庫のリスト作成に隊員の移隊があるときはその書類作成、怪我や病気の奴がいたら医療班に看護申請書…それを弾薬庫武器庫のリスト作成以外は隊長がやらなきゃいけねぇんだよ!!俺そうゆーの苦手でよ!!なっ!レンも仕事見つかるし一石ぎょわぁっ!!」

二鳥と続く筈だったエースの目を血走らせた怒濤の説明は突如現れたマルコとシモンの鉄拳により遮られた。

「ってぇー…。うぉいっ!マルコ、シモン!!どういうつもりだよ!」

「どうもこうも…。面倒な書類を全部レンに押し付ける気かよい?」

「面倒でも皆やってんだ。お前だけ補佐なんて許されるわけねぇだろ?」

『……そうですよねぇ。だいち、そんな重要そうな仕事新参者が手伝っちゃまずいですよ…よくよく考えても』

もしかして、仕事見つかる!?と思ってみたものの、二人の登場で冷静さを取り戻したレンが口を挟む。
その姿は小型犬がしょんぼりしているかの様で、その姿にシモンがいち早く反応した。

「で、でもよ!マルコ!お前も大変だろ!?少しでも早く書類が上がってきたらその分早く終わるし!!手伝いあればお前の負担も減るだろ!?なぁ!!マルコっ!!」

断る事は許さないと無言でも伝わってくる気迫に圧されたマルコは思わず頷いてしまう。

「…あ、あぁよい…」

そこへやってきたのはサッチとイゾウ。

「何やら騒がしいと思えば…どうしたんだい?」

訊ねるイゾウの隣でサッチがレンへと手を挙げながらウインクする。
それに苦笑いを浮かべながら頭を少し下げると、一連の説明を始めたシモン。

「…それなら、一応親父にも相談するのが筋だろうに。それならレンおいで」

にこっと綺麗な笑みを浮かべたイゾウに手招きされて席をたつと、イゾウと共に甲板への道を歩き出す。

『あれ?皆さんはいいんですか?』

「こんな事でいちいち隊長が揃って親父の所になんざ行けないだろ?だから、あとの奴等はあそこで報告待ちだ」

『それもそっか…なんか……すいません』

「いいさ、いいさ。これで、邪魔されずにゆっくり話せるってぇもんさ」

綺麗な顔で笑うイゾウに目を奪われる。

「ん?どうした?」

『…っへ?あ、いや、そのっ!!』

動揺するレンを見てクツクツと笑うとイゾウが言う。

「まぁ、ここは荒くれものばっかだが。仲良くしてくれよ?何かあれば頼っておくれよ」

『あ、ありがとうございます』

「その下手に被った猫も早めに取れるといいんだけどねぇ」

『……あ、ばれてました?』

「あぁ。まぁ、他の奴等は気づいてるか微妙なところだけどねぇ」

『ふふ、じゃあ。イゾウさんの前じゃやめときますかね、無理は』

にぃっと笑ったレンにイゾウも笑い返す。

「そうそう、その顔。俺はその顔が見たかったんだよ」

レンの頬へと手を滑らせて見下ろす。

「その瞳ゾクゾクするねぇ…言う事聞かせたくなる…」

ペロリと唇を舐めたイゾウを鼻で笑うと頬へと伸ばされていた手を叩く。

『お生憎さま。そう簡単に従うようなバカ女でも慎ましやかな女でもないのよ?』

にやっと笑うとここでいいわぁーと告げて、先に案内された道を辿り白ひげの元へと向かった。

「……随分と肝の座った女だねぇ」

その後ろ姿をにやっと笑いながらイゾウは見送った。

そうして、甲板を訪れたレンは白ひげへと走りよる。

「どうしたぁ?」

『聞いたんだけど、隊長さん達が相当書類に苦戦してるって!!そこでね!あたし元の世界じゃ書類作ったり、チェックする仕事してたので、隊長さん達の補佐したいんです!!いいですか!?』

言い切って笑顔で白ひげを見つめる。

「グララララララ、好きにしやがれぇ。あいつらも仕事が早く済むなら万々歳だろぉ。やってみりゃあいい」

『ありがとうございます!親父さん!』

そう笑うとレンはまた船内へと走って戻っていく。

「おい、レン。」

呼ばれて振り替えれば、白ひげが口端をあげて笑っている。

「お前、その話し方どうにかしやがれ。親にそんな他人行儀な奴あるか」

『………うん!!気を付ける!』

笑って頷いたレンに笑顔を返す。
そうして手を振り船内へと入っていったレンを見送るのだった。

「お、来たぞー!どうだった?」

エースが待ちわびたとばかりに訊ねる。

『今日からでも皆さんのサポート頑張りたいと思いますっ!』

笑顔を浮かべて元気に告げたレンを見てエースが堪らずよっしゃ!!と声をあげる。
ニコニコと笑みを浮かべたレンにシモンが歩み寄るとその頭を撫でる。
見下ろせば不思議そうな顔を浮かべる同じ顔。

「よかったな!!頑張れよ」

『…………はいっ!!ビシバシ行くつもりです!!』

「そうか、てか敬語疲れないか?普通に喋ってくれていいからな」

笑い合う二人は正に双子。
それを見る隊長達は胸にほかほかと暖かい何かを感じる。

彼女が来たことて何かが変わっていくそんな予感が過る。

「んだよ!シモンばっか、ずるくねぇー?」

「黙れ、パン」

『あ、サッチさん!早速何か仕事ありません?(この二人喧嘩始めるとなんか面倒なんだよね…)』

「え、あーそうだなぁ…」

「あぁ、丁度いいよい。サッチ書類の説明がてら、始末書あげろい。レン拾った経緯を纏めてな」

「へ?マルコさん?」

『早速お仕事ですね!行きましょう!サッチさん!』

「レン!これ、持っとけ!!襲われそうになったらばっさりといけ!わかったな?」

そう言って真面目な顔でシモンに渡されたのはバタフライナイフ…

苦笑いで受けとると手を振り、サッチと食堂を後にしたのだった。




詳しい職業は海賊事務…であってる?






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