reason for being.

あの信じられない日から1週間。

あたしは現在、エースの私室にて張り付いている。


「レン〜。腹へ」

『お黙り。バカエース君。』

腹が減ったと言いだそうとしたエース君の言葉をピッシャリ、さっぱり遮って満面の笑みを見せる。

『マルコさんの所に、書類の整理に言ってみれば……随分前から提出が滞ってる様で?』


そんな奴に喰わせるもんはないっ!!

そう言い切った瞬間の絶望するエース君の顔に少し罪悪感。

全くやる時はやる癖に、こういう時はてんで駄目。
確かに、彼の処理能力は当初に言っていた通りなんだと再確認する。


『けど……これをあげたら。サッチさんに美味しいご飯沢山作ってもらいましょーね!』


そう言った直後。
エース君の瞳が、ギランっ!と光るともんのすごいスピードで。
そう、正に机が削れるんじゃないの?って勢いでガリッガリとペンを走らせ出した。


『あ。でも、ちゃんと読める字で書いてね』


ピタッと止まったエース君は途端に少しペースを落として丁寧に且つ迅速に書類を進めていった。

扉の横には数日前に、ジョズさんが作ってくれたあたし専用の椅子。

16ある隊長室を4つに分けて4部屋に付き1つこのあたし専用の椅子が誰かしらの部屋に置かれてる。

見張り用、はたまたお手伝い用のあたしだけの椅子。


この椅子のお陰で、少しだけ。

ここにいてもいいよ。

そう言われている気がする。



その椅子に腰掛けて、書類を一心に進めるエース君の背を見つめる。


何故、この世界にあたしは突然やってきたのか。
全然検討もつかないけれど。
彼のこの逞しくも儚い。
色んなものを背負った背中がなくなる事はない世界に来れて…本当に良かったなと。そう思う。

そして、大いに不服ではあるが。
あの家族思いの変態くそリーゼントがいなくなる事がなくて…良かったとも思う。

この数日で、陽気で暖かな彼の人柄がこの船にはとても大事なんだと知った。

そして、1600人という船員の多さでありながら
誰一人不必要であるという人がいない。

誰もが互いを尊敬し信頼し。

時には悪友、時には兄貴分、時には子供のように
時には父のように……

支え合い、助け合う。

そして、何よりも尊敬し愛するオヤジさんと共に生きている事を誇りに彼らは生きている。




そんな彼らが、あたしには少しだけ……

眩しい。



目を細めて、窓際の机に向かうエースを見た。


その瞬間バチリとエースの視線が交わる。




「どした?」


『え?』

「何かむつかしい顔してた」

『……何でもないよ。ほら、終わったの??』


エースに声をかけレンは、机に積まれた書類に目を通す。



『………ん。完璧!やればできるじゃないよ』


片眉をあげて言ったレンに、エースは苦笑いを返した。


「じゃぁー!飯、行こうぜ!!」



レンの腕を掴みエースは部屋を後にする。

「何喰おうかな〜」

『その前にマルコさんのとこね』

うぃーっと、気だるげに返事したエースを呆れがちに見るとふっと笑う。


人生は長い。

今までと違う生き方ができるのなら。
それも又一興。

その為にあたしはここに来たのかもしれない。
沢山の可能性を見つけに。




reason for being
(存在理由)




おーい!!サッチー!めしー!!

てめぇ!!レンちゃん独り占めすんなよ!!

サッチさん、喋らないで下さい。

お、レン。お疲れー!

あ、シモンさん!!お疲れ様です!!

何?あの態度の違い…

サッチの背負う空気が飯をまずくする!!
あっちいけー!!





title by 瑠璃




prev next

main
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -