destiny-16





モビーディックを飛び立ち5時間。
ルカは目的の島に到着した。
停泊のできそうな隠れた入り江を見つけると街の治安の確認と必要物資の注文や酒場の貸し切りを予約する為に浜辺に降り立った。


『随分賑やかそうな街みたいだな…』

ぼそっと独り言を溢すと街へ向かい歩み始めた。
程なくして、街の入り口に差し掛かると街は賑やかに人々の声が飛び交い活気に満ちた街だとわかる。
だが、足を止め一本裏に入る道に目を向けるとそこは他の海賊や街のチンピラがひしめき、治安があまり良くない事も伺えた。

『ミシェル達には悪いけど、この街では護衛をつけないとナース達は危険だな…』

そして、必要物資の注文の為店舗の集まる一角を探し行き交う人々の群れに紛れた。


………………………………………………………



必要物資の注文を済ませると出港に合わせた酒の注文と酒場の予約の為に酒場へ足を向けた。

店内に入る為に扉を開けると、店内には海賊らしき集団と街のチンピラ達がおり、ルカの来店に全員が目を向けてきた。
それに怯む事なくカウンターへ進み席に座ると、驚いた顔をする店主に酒と食べ物を注文した。
マルコに一人での偵察や上陸の時は白ひげの一員である事、堕天使である事がばれぬように極力ローブを外すなときつく言われていたが、さすがに店内でローブを着けたままの方が怪しい為、ローブを外し隣の席におく。
一人での偵察や上陸の際にローブを外す時の為にローブの下にキャップを被っているため、今は目深に被ったキャップだけになっている。
秋島であるこの島なら上にシャツを羽織っていても怪しくはなく、そのままカウンターに出されたビールを煽り喉の乾きを癒した。

『(んー、こそこそ話してる気配すんな…)』

何かを仕掛けてくる様子はまだないが、仕掛けてきたさいすぐに動けるように、警戒は怠らず、そのまま店主へ話しかけた。

『この島は随分賑やかな街だね?』

女である割りに少し低めのハスキーな声が賑わう店内に混ざり溶け込む。

「あぁ、色んな島からこの島に物を売りに来るからな。人は常にこの位集まってる」

『商売繁盛じゃない…でもその分治安はあまりよくなさそうだけど』

「まぁな…賑わう街ならしょうがない事だよ」

会話をしながらも店主は他の客に酒を出したりルカの注文した食事を作る。

『それもそうか…』

「ほれ、食うといい。」

そう言って差し出されたサンドイッチを手に取り食事を取り始める。
その間も店内は下品な笑い声が響き渡っていた。

食事も済ませ、程よく酒をたしなむとルカは仕事を済ませる事にした。
店主を近くに呼び、交渉を始めた。

『ねえ、1週間後までに酒を用意してほしいんだけど?』

「構わないよ?量と種類は?」

『ビール樽を25樽、ラムとウィスキーを20樽ずつ、赤と白のワインを10樽ずつ、あとは珍しい酒なんかの瓶を10ケースずつ。この島の地酒を15樽、頼めるかな?』

「ず、随分な量だな…」

『あぁ、家族が酒飲みばかりなんで』

ニヤリと口元だけで笑って見せると、注文を受けてもらえるか確認する。

「まぁ、随分量が多いが任せておけ、用意できるよ。兄ちゃん」

『(に、兄ちゃん?)じゃあ、お願い。あ、あともうひとつ』

何だい?と首を傾げる店主に

『三日後の夜この店を貸し切りにしてほしい。注文の酒と貸し切りの金は先に払うからさ』

「あー、貸し切り?」

『そう、貸し切り』

「見ての通り、うちは荒くれものばかりだ。貸し切りはやってないんだが…」

『そう言うなって。いちゃもんつけてくる奴なんかいないだろうから、頼むよ』

言いながら、目深に被っていたキャップを人差し指で少し持ち上げ店主に顔がわかるようにする。すると、店主は驚いた顔を見せると、うろたえながら貸し切りに了承した。

そして、今自分が飲み食いした分に酒と貸し切りに分も合わせ数束の札をテーブルに放ると椅子から立ち上がり、ローブを羽織ながら店主に声をかけた。

『それじゃあ、三日後に…ごちそうさま』

そう言うと店を後にした。


そして、体を休ませようと宿を探し、すっかり暗くなった道を月明かりを便りに足を進めた。
その時、前方の建物から大きな人影が現れた。

「フフフ、こんなつまんねぇ街にとんだ大物が紛れてんなぁ?」

元の世界で聞いた声が暗い夜道に響く。
キョロキョロと辺りを見回すもルカしかいない。
どうやら目の前の男はルカに声を掛けているいるらしい。

「フフフ、お前だよ」

『人違いです。さようなら』

すちゃ、と手をあげるとそのまま歩みを進めようとすると、突然体が動かなくなる。
そのまま自分の意思とは関係なく男の方に振り返ってしまう。
その瞬間ルカは能力を使い、相手の能力を無効化させ、後ろに飛び退いた。

『んもー、顔隠してるし、あんたに会った事ないはずなんだけど…ねぇ?七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴさん』

腰を落とし、いつでも戦闘に入れる姿勢をとると、男…ドフラミンゴに話しかけた。

「ほう…俺を知ってるか…異海の堕天使さんよぉ。フフフ…」

『このグランドラインにいて、七武海知らずに過ごすのは無理でしょ…』

「それも…そうか…フフフ、ハーハッハッハッ」

突然笑いだしたドフラミンゴに対し、ルカはビクっと反応をする。

『え…ちょ…、頭大丈夫?』

「あぁ、頭は至って正常だぜ?」

『そうですか…で、わざわざ呼び止めて何か用?』

「いや…特に理由はないが…白ひげの船に乗る異海の堕天使さんに1つ挨拶をと思ってな…そんな警戒しなくも、戦争を始めるつもりはねぇから、安心しろ…フフフ」

『はっ、どうだか…』

場はぴりぴりと張り詰め、周囲は二人の出す覇気が渦巻いている。

「なぁ、お前は何を変えるんだ?」

『……っ!!どういう意味?』

「過去にも異海の旅人は現れていたのは知ってるか?」

『知らないけど、だったらなに?』

「異海の旅人は皆、未来を何らかの形で知り得ていて、自分の願った未来にかえていたらしいぜ?なら、お前も同じ可能性があるだろう?なぁ、お前は何を知っている?」

『言うつもりはないよ…あんたになら尚更ね…』

「フフフ、そうか…まぁ、あんたのやる事見ててやるよ、何をすんのか面白そうだからフフフ…」

『悪趣味な男だな…』

「にしても、堕天使は噂に違わぬいい女だな…まぁ、俺は長い髪の時のが好みだったがな、フフフ…」

『なんで、あんたの好み聞かなきゃいけないのよ…はぁ…』

ため息をつくと、更に続ける。

『それ以上用がないなら、もう行っていい?あたし長旅で疲れてんの…』

「あぁ、いいぜ?俺ももうこの島に用はねぇからな」

『あっそ。じゃあ、もう当分会わない事を願ってるわ!!』

「フフフ…そっけねぇなぁ、堕天使さんはよお…フフフ…、じゃあな」

そう言うなり、のっそのっそとピンクの羽を月の明かりに照らされながらドフラミンゴは背を向け海の方へ向かい歩き去っていった。

『………はぁ〜。余分な神経使って余計疲れた…。あいつ、好きなキャラだったのに…目の前にすると全然何考えてんのかわかんない…つか、何か知ってるな…異海の旅人に関して…まぁいっか。今はこれから起こる事に集中、集中!!さぁーて、宿行って寝よう!!そうしよう!!』

ぐぐっと腕を高くあげ背伸びをすると
宿に向かい足を進めた。


ピンクの鳥と堕天使の対面
(ふぁーーー、ふかふかベット!!たまらーん!!)
(あ、モビーに連絡しなきゃ…)
(ぷるぷるぷるぷる、がちゃ)
(こちらモビーディック)
(あ、サッチー?)
(おールカか!!どうだ?島は?)
(あんま治安よくないねぇ…ナースは護衛着けないと危ないかな)
(おい!!サッチ、誰と喋ってんだ!?)
(お、エース。ルカだ(なにー!!)おい)
(ルカ!!危ない目にあってねぇか!?大丈夫か!?)
(………がちゃ)
(エース、うるさい…)
(ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる)
(しかも、しつこい…)

(勝手に切ったうえに、でねぇぞ!!サッチ!!)
(あ、あぁ…)
((疲れてるとかにこのテンションはな…))

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