destiny-11



偉大なる航路、後半の海。
新世界を進むモビーディックの甲板では、今日も賑やかに一人の青年が吹っ飛んでいた。

『はい、お水。口濯ぎなよ』

「おう…サンキュっ…」

『あんたも懲りないねぇー…。まさに若さのおかげかな?』

「うるせぇなぁ。たいして変わらないだろ…」

『お、なんか。嬉しいねぇ、ありがとう』

「おーい!!ルカー!!始めるよー!!」

『あ、うん!!今行くよ!!』

「もう、体はいいのかよ?」

『まぁねぇ、余裕、余裕!!今日から隊訓練参加の許可もおりたからね!!』

「そぉかよ。無茶すんなよ…」

ボソッと小声で告げられたルカを気遣う言葉にルカは笑みを浮かべ、返事をすると、呼んでいた船員の元へ駆けていった。

「おせぇよい。さてと、あんま無理しない程度に組手してから、俺と能力の特訓だよい」

『はぁーい!!よろしくお願いしまーす!!』

「久しぶりだからって、甘やかさねぇからない!!」

『そのつもりっ!!』

それから、数組ずつ組手を行った後にそれぞれの得物を使った訓練を始めた。
もちろんルカはマルコとひたすらマンツーマンで組手、そして能力の特訓が開始されていた。

「自分に対して、能力で攻撃をしかけてこないタイプ。まさに俺が適任だねぃ。目標は俺の再生を止めることと飛行をできなくさせる事だい」

『了解!!マルコ隊長』

「さぁて、始めるよい」


マルコの声を合図に二人は空に舞い上がり、空中での組手を開始した。

「相変わらず、すげぇ眺めだよなぁ」

「あぁ、不死鳥と堕天使の闘いなんざ、世界中探してもここでしか見れねえよ…」

と、そこへサッチ、イゾウ、ハルタの3人が甲板へ出てきた。

「おーおー、またあいつら派手にやってやがんなぁ」

「いーなぁ…僕も混ざりたい…」

「お前さんは普段の仕返しをマルコにしたいだけだろう?」

「あれ?ばれた?でも、ルカとは順番が回ってくればできるし、滅多にできないマルコとしたいって思わない?」

「あー、それはあんなっ!!俺も普段のお返しに…」

「サッチの場合は自業自得だろうがねぇ」

「うらせぇ」

どがーーん

最後まで言い切る事なく、サッチは飛んできたルカに捲き込まれた形で甲板の隅に置かれた樽の山に姿を消した。


『……いっ…たぁ〜…』

頭を擦りながらルカが立ち上がる。

と、ふさぁとしたものに手が触れたので何かと思いながら触って確かめていると…

「おい!!俺のポリスィー!!!!」

『あぁ、サッチか………って、え!?何でサッチ!?』

ルカによりもしゃもしゃにされたリーゼントをお情け程度に手ぐしで治しながら、口を開いた。

「他にも何か言う事ねぇの?仮にもお前の上司よ…?」

『あー………なんか、よくわからんけど、ポリスィーのリーゼント様を潰してごめんなさい』

頭をぴっちり下げて謝罪すると、それを見たサッチはルカの頭をわしゃわしゃとなで回すと、マルコへ向き直り

「で?明らか狙ったよな?」

「よからぬ事を考えてそうだと思ったら、気付いたらルカをほん投げちまったよい」

飄々としながら言いはなったマルコに、サッチは額に青筋を浮かべながらも笑顔を保ちながら言葉を返す。

「まぁ、俺の事はいいとしてな。やっと怪我治ったのに、またこいつが怪我したらどうすんだよ?」

『別に大丈夫だよ?』

「お前な仮にも若い身空のお姉ちゃんが生傷ばっかなんて、嫁の貰い手なくなんぞ?気にしなさい!!」

『………?え、行かないから平気だよ?もし、行くとしてもひとつひとつの傷全部まとめて愛してくれる人に嫁ぐし。それに、この傷って皆と闘って、皆を守った証だもん!!あたしにとっては大事な宝物だよ?』

…………………………

その場でルカの言葉を聞いていた全員がルカに詰め寄り、乱暴に頭を撫でながら声をかける。

「さすが俺らの妹だ!!」

「これからも一緒に親父を海賊王にする為に頑張ろうなっ!!」

「負けてられねぇぞ!!」

「俺らも頑張って親父や隊長達の力にならねぇとな!!」

わいわい、がやがやと騒ぎは広がり。
気付けばそれは船全体を覆っていて。
いつのまにか…

「宴にしよーぜ!!親父に許可もらいにいくぞー!!」

「妹の愛ある言葉を全員で噛み締めよう!!」

なんて、騒ぎに発展し。
いつのまにか、全員で白ひげの部屋へと行ってしまい、そこにはもみくちゃにされた妹を中心に哀れみの目を向けた隊長達がいた。

「なんか……どんまいだな…」

『只自分らが酒のんで騒ぎたいだけじゃねーかー!!』

そんなこんなで、訓練は中断され
許可を出した白ひげも甲板に現れ宴が始まった。

中央では、がたいのいい男達が酒を飲みながら歌い、踊り。

その中心から少し外れた所で、隊長達とルカが樽のジョッキを傾けていた。

『もう、訓練が台無しだよー』

「まぁ、いいではないか。ルカの言葉があいつらも嬉しいのだろう?」

「だろうな。実際、戦闘員だが。曲がりなりにもお前だって女なんだ。傷がつきゃ皆きにすんだろ!!」

『ちょ、ラクヨウ…曲がりなりにもは余計なんだけど…』

「そうさね…。それが、大事な宝物だなんざ言われたら嬉しいだろう?」

『そーゆうもんなの?』

「そうゆうもんなんだ」

一際大きな手がルカの頭を撫で繰り回す。

『ちょ、サッチやめてよ!!せっかく髪治したんだからー』

「まぁ、まぁ。減るもんじゃねぇだろ?」

『こんのーお返しだー!!』

そう言って、サッチのリーゼント目掛けて飛び掛かるのを合図に二人のジャレ合いは加熱していった。

お互いがボロボロになった頃思い出したようにハルタが声をあげた。

「あれ?そういや、マルコは?」

『そーいえば、宴に突入してから見てないね』

「マルコなら、書類を済ませたら戻るって言ってたねぇ」

『ふーん…仕事人間だな…』

「お、いるじゃねぇーか!!」

サッチの声にサッチの視線を追い、見回すと、エースの前に屈みこみ何かをしているマルコの姿を見つけた。

(あ…もしかして…)

「珍しいな、あいつが火拳の坊主にかまうなんてねぇ…」

「おーい!!まっ!!」

突然大声でマルコを呼ぼうとしたサッチの口を飛び付いて塞いだ。

『ほっときなよ!!その内来るでしょ!!』

ふがふが言いながら、こくこくと何度も頷くサッチを確認し、サッチから離れ、また全員でわいわいと話ながらお酒を煽った。



火拳と不死鳥の密談?

(あ、マルコ遅いよー!!)
(ハルタができあがってるよい…)
(ルカ飲めよーーーー!!)
(今回の被害者はルカかねぇ)
(いやーーー!!!!)
(そういや、お前。火拳の坊主と何話してたんだ?)
(あぁ、そろそろ決めたらどうだ?ってはっぱをかけてきたんだよい)
(なんて?)
(この船に残って親父の名を背負うか、降りて出直すかってない)
(ふーん。どうなんだろな…)
(いーーーやーーーー!!)




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