destiny-06




「ルカ、今いいか?」

『サッチ。どうしたの?』

「火拳の奴。お前の事誤解してるぜ?」

『それが?どうかしたの?』

「いや、お前にしては珍しく人に噛みついてるからよ。どうしたのかと思ってな…はっ!!まさか、嫉妬!?」

『はぁ?何で嫉妬すんの』

「いや、俺が火拳を構ってるから?」

『………死んでもあり得ない。んな下らないこと言いに来たなら、出てってよ。バカッチ』

「く、くだらない…。いいもん!!」

『いいおっさんが、もんはないだろ…きもいよ…』

「なっ!!もう…お前なんか構ってやんねぇからなっ!!」

『あー、どうぞー。早く出てってよ…』

「かっわいくねぇ!!じゃあなっ!!」

バタンっ!!

「んだよっ!!人が心配したんのによ!!」

と、前からイゾウが歩いてきた。

「サッチ、どうした?」

「イゾウ!!聞いてくれよ!!あいつ、反抗期っ!!」

「………悪い、全然話が見えねぇな…」

「だからな!!………………」

そんな会話が部屋から離れた所でなされているとも知らずにルカは悶々と悩んでいた。

『エースは嫌いじゃない。むしろ好きだったさ!!でも、あのエースは嫌い…もっと自分を大事にしたらいいのに…。あー、でも。あれは感じ悪かったよね…。はぁ…あとでご飯持って謝ろう…』

そう言って、自分の中のもやもやを処理すらと、仕事の為に部屋をあとにした。

マルコに言い渡されたスペード海賊団達の怪我が治るまで、面倒を見ることになっていたルカは、スペード海賊団の船員の集まる部屋へ向かった。

ガチャ

戸を開けると一斉に集まる視線。それには、敵意の込められた視線がほとんどだった。

『えと、さっきは暴れまくって怪我さしてごめんなさい…』

ぺこりと頭を下げた事で、スペードの船員の困惑した空気が伝わってくる。

『君達の船長を悪く言うつもりはないけどさ。火拳の……仲間を思う気持ちもわかったけど。あんたらも本当は一緒に闘いたかったろ?手は出せなくても…逃げろなんて言われたらさ。あたしだって、親父さんにあんなの言われたくない。そう思ったら…本当悪かった。八つ当たりでした、ごめんなさい』

しんとした部屋に1つ声が上がった。


「頭上げてくれよ、俺らもエースがああゆう場面で俺らを逃がそうとするのは戴けねぇと思ってたしな。仲間なんだ。信頼してる船長と共にありたいのをあいつはわかってくれねぇけど。それにあんたが憤りを感じたなら、あんたも一緒に教えてやってくれよ。まぁ、八つ当たりされた俺らもかわいそうだけどな!!」

含んだ笑い声にバッと顔を上げると、苦笑いを浮かべたスペードの面々がいた。

「あんた、エース船長に説教したんだってな?さっきエース船長が来て言ってたぜ!!俺らは、さっき白ひげと少し話をして、白ひげに入る決意は固めた。だけど、俺らは船長の決断を待つつもりだ。だけど、きっと船長は白ひげに入る決意をするだろう。例え何日、何ヵ月かかろうとな。だから、少し待ってやってくれねぇか?」

『言われなくても、そのつもりだよ。エースをあたしは待ってたんだ。ずっと……』

最後の言葉はとても小さくて、誰も聞こえはしなかった。

「俺はスペード海賊団副船長をしていたジェイクだ」
そう言って、最初に話しかけてきた男が手を差し出した。
ルカはその手をとると、

『白ひげ海賊団4番隊、アマクサ ルカ。知っての通り堕天使ってのはあたしの事ね!!これから、傷の完治までは世話やかしてもらうよ!!怪我治っても気軽に何でも聞いてよ!!』

「あぁ、頼んだ」

『よし。自己紹介も済んだし、特に用もなければあたしは行くよ。火拳と少し話してこなきゃ!!』

「あぁ、俺らは平気だ。最低限の移動は許可されてる。好きに過ごすさ」

『そか、じゃあまた夕飯の時にでも呼びに来る!!』

そう言って、部屋をあとにした。

「堕天使か…もっと冷酷無慈悲の冷徹人間だと言われてたが…普通の女だな…」

「あぁ、本当だよなー。普通に美人のいい女だった!!」

「お前、白ひげが言ってた事忘れるなよ…ブッ飛ばされるぞ!!」

「そう思う位許されるだろ!!」



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ルカは部屋をあとにすると、甲板へ向かった。

『えっと…どこだろ?』

キョロキョロしながら、広い甲板を探す。
と、船尾にある荷物置き場に踞り膝を抱えたエースを見つけた。


ルカの手には、コックからもらったおやつのホットケーキ。
自分の分も持っている。
エースに近付くと、目の前に皿を置き向かい合うように腰を下ろした。

『何にも食べてないんでしょ?食べなよ…』

「いらねぇよ、てめぇもどっか行けよ」

そう冷たくあしらわれる。

『さっきは…悪かった。』

ぽつりと、ホットケーキを食べながら決まり悪そうに呟いたルカに、エースは目を見開きながら見つめた。

『かーっとなって言ったけど。冷静になったら、言い過ぎたなって思ってさ。でも、ああ言ったのは後悔はしてないよ。あんたが仲間を背に敵に立ち向かうのもわかる。大切なのは守らないとすぐ消えちゃう。人間なら尚更だ。人間なんて、結局は脆いもんだもん。あたしだって、きっと同じ局面にたたされたら同じ事するかもしれない。でも、それで傷つく家族を見たくないから。あたしは共に闘う事を選ぶよ。一人で倒せない敵も。力を合わせれば倒せるかもしれない。仲間の為に自分を犠牲にするのが、悪い事だとは思わないけど。仲間にそれされたら嫌だろ?火拳の仲間もそう思うと思うよ。それが、自分がついていこうと決めた船の船長なら尚更ね』

それを黙ったまま聞くエースに、更に続けた。

『あたしが言いたいのは、もう少し自分を大事にして。仲間も信じろよって事!!海賊なんだ。覚悟は常にしてるだろ?それでも、最悪の事態を避けるには皆で高みに登るしかないんだよ。一人で頑張ったって。足りないんだよ』

「お前、変な奴だな…」

『変で結構です!!守りきれる保証なんてないけど、全員で力を合わせたら変わる未来もあるんだから。ほら、食べないとまずくなるよ!!』

そう声をかけるとエースは皿をとり、ホットケーキを食べ始めた。

『さーて、あたしは喧嘩しちゃった兄貴の機嫌でも取りに行くかな。お皿はあとで取りに来るから置いといて!!』

そう声をかけ、手を上げてその場を去った。



歩み寄る火拳と堕天使

(さっちゃーーん?)
(んだよ?こっち来んな!!)
((ありゃ、本気でご機嫌ななめ…))
(さっち…ごめんね…)
(ん?ってーーー!!泣くなよ!!悪かった!!俺もほらっ!!意地張りすぎたからっ!!なっ!!泣き止めって!!)
(サッチ…いくら喧嘩したからって泣かすなよ…)
(うるせぇよ!!お前は黙ってろ!!ラクヨウ!!)
(うえーーん!!サッチが怒ってるー!!)
(お、お前には怒ってねぇから、泣くなよ!!)
(悪女だねぇ…)
(嘘泣きに気づかないのかよい、あいつは…)
(ルカの嘘泣きに騙されるのはサッチ位でしょ)
(ほら、たかいたかいしてやるから!!なっ!!)
(しょーがないから、許してあげる)
(ルカ!!よかったーー!!じゃあ、仲直りなっ!!)
(…………おい、いいのか?あれは…)
(いつもの事だろい。ほっとけ…)
(ほら、ルカの好きなオムライスだぞー!!)
(ありがとう)
((あれ?そういや、なんで俺が謝ってたんだっけ?まぁ…いっか!!)
(完璧ごまかされたな…)



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