travel-16




「なぁ、あれ。走ってくんの、ミシェルとレイチェルって子じゃねぇの?」

陸を指さしながら、サッチがぽつりと溢した。

そちらに目をやると、確かに随分焦った様子のナースが二人ー。
船へ駆けてきていた。

「よ、よかっ…。はぁ、はぁ。」

「そんなに急いでどうしたんだよ?」

そこで俺は気付いた。
一人…足りない。

「おい、ミシェル。ルカはどうしたよい?護衛として一緒に行ったはずだろい?」

「それで走ってきたんですよっ!!この島海軍大将がきていますっ!!」

「なんだとっ!!」

「大将青雉です!!」

「買い物中に遭遇。私たちを一般市民とし、賞金首と気付かれたルカが現場に残り戦闘を開始しています!!」

「んだとぉっ!!」

「しかも、ルカの手配は海軍内では生きたままでの連行が命令されているらしく…」

「海軍もあいつの力に気付いてるみてーだな」

「親父っ!!」

「マルコ、サッチ、お前らはすぐにルカの援護しに行け。ハルタは街に出て船員の招集。ナース達はもしもを考えて、治療の準備だ!!」

「「「了解っ!!」」」

(無事でいろよい!!)

妹を助ける為兄達は走り出した。






「なかなか…やるねぇ。本気で俺のとこおいでよー。悪い事にはならないよー?」

『はぁ、嫌に…決まってる。あんた自体はそんな嫌いじゃないけど…はぁ、嫌いなの海軍も世界政府も。』

「ところでさ、手配書を出すにあたって。そいつの出身育った島、家族構成。全てを調べあげるんだけど。こんな時代でも、出身位までは調べりゃ、わかるはずなのに、きみに関しての情報が何一つ。出てこないんだ。君、何なの?」

『それを教える義理はない』

そう言うのが早いか、覇気を黒金に纏わせ青雉へと攻撃をしかけた。

「へぇー、武装色も使えんの?でもまだまだだね…」

「パルチザン」

『なっ!!きゃあ!!』

覇気を纏い放たれた青雉の攻撃にルカの体は攻撃を無効化できず。

肩から右半身を凍らされてしまった。


既にあちこちから血を流し、傷だらけのルカにもう闘う気力も残っていなかった。そのうえ、持っていた黒金まで凍らされては、もう為す術もなく。

「ずーいぶん手こずらせてくれちゃってー、もういいだろ?」

(さすがに、大将相手にできなかったか…防戦一方で逃げる隙さえ見つけられなかった…)

『海軍本部に連れてって、どうすんの?あんたの部下になれって?』

「あーあれだ。俺も詳しくは知らねぇけどさ。あんたの能力、相当希少らしくてさ。覚醒する前になんとしても、海軍に連れてこいだの言っててさー」

『…………つまり。あんた話聞いてなかったのね…』

「あらら、そうみたいねぇ。ってわけで、そろそろいこっかぁー」

そう言うと、ルカに歩みより地面に縫い付けられている足を傷付けぬ様に氷を割ると、海楼石の錠を凍らされずにすんでいた左手に着けた。

「あー、力抜けるから普段は俺はやんないんだけどねぇ。俺しかいねぇしな…よっと…」

氷を溶かすと海楼石の錠により力の入らないルカを肩に担ぐと、動き出そうとした。

「わりぃなぁ。そいつ置いてって貰えるか?」

青雉の鼻先には鈍く光る刃。
それを辿ると

「えーっと、これどうゆうこと?なんで白ひげの隊長がこの子…あーもしかして…」

「そのもしかしてだよい。そいつは、ルカは家族だ。連れてくなら、それ相応の覚悟はできてんだろうない?」

『マルコ隊長!?サッチ隊長!?』

「ったく、心配かけんじゃねえよい!!」

「ホントだぜ。でも、俺様が来たからにはもう安心!!すぐ助けてやっからな!!」

「ルカちゃーん。白ひげなら白ひげって言ってよー。はぁ、俺一人だし。めんどくさいからさ。今回はいいや。でも、堕天使の加入の件はセンゴクさんに報告させてもらうよ。色々面倒みたいだからね」

そう言って、ルカをサッチ達に向かい投げ渡した青雉は、背を向け歩き出した。

青雉がその場からいなくなると

『あの、すいませんでした…』

「全くだよい。」
はぁと溜め息を溢すマルコにルカは
悔しさを浮かべ手を握りしめていた。

「でもよい、………無事でよかったよい」

そう言って、ルカの前髪をくしゃりと掴むように撫でた。

『え?』

「こないだも悪かったない。お前を認めてなかったわけじゃねんだ。可愛がり方を知らなくてねぃ、やきもきしてたんだい」

『………あ、はい。』

「急には無理だろうが、仲良くしてくれよい」

『 …………た。』

「よい?」

『でれましたよ!!マルコさんが!!ちょっ、サッチさん!?』

「やぁーっとかよ。たく。はらはらさせやがって」

「なんだ?なんか負けた気がするよい」

「まぁ、深く考えんな。取り敢えず、ルカの怪我もだがまだ氷が残ってる。急いで船もどんぞ!!」

「そうだない。じゃあ、俺は先に戻って必要な治療の準備を伝えてくるよい」

「じゃあ、俺がルカ担いで船に向かうわ!!」

『じゃあ、サッチさんや。よろしくー!!』

そう言って、またも肩に担がれるルカ。

『こうゆーときってお姫様抱っことかじゃないの?』

「お前凍ってる範囲広いから、俺まで冷たいだろ!!」

『はぁ!?だから、マルコさんはサッチさんにあたし任せて行ったのか!!』

「だろうな。俺の服より薄手のシャツに前は全開だからな…」

『くそ、なんであたしには乙女な展開が起きないんだよ!!』

「そんな綺麗な顔してんのに、発言が残念だからだろうな…」

『発言とか…あたしの性格全否定か!!』

「いや、そうゆーつもりは……」


「「ルカーーーー!!」」

『ん?あ、ハルタ君にミシェル、レイチェル!!』

「さ、船に上がったらお前は手当てと説教だなっ!!」

『なっ!!何でっ!!仕掛けてきたのはあいつなのに!!』

「そーれでーもーだー!!」

甲板に飛び上がり降り立つと、
甲板にいた兄弟達が一斉に詰め寄った。

「お前何で白ひげだって言わなかった!!」

「そうすりゃ、青雉は一人だったんだ。すぐ手を引いただろ!!」

「隊長達がいかなかったらどうなったと思ってんだ!!」

等々。次々と伝えられた言葉にルカは唖然とした。

「皆、お前を心配してたんだ。少し説教されてこい。」



生まれた絆
増える謎


((そういや覚醒がどうのって、なんなんだろ…))

(くおらっ!!話聞いてんのかっ!!)
(は、はい。てゆうか、もうかれこれ2時間はたつよー、もういいでしょー?)
(そうか?なら最後は親父に締めてもらおう)

((え、えぇー!!))




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