travel-14





最近家族になった。
所轄妹がいる。

だが、どうにも俺には慣れない。

女なんて、船にナース達がいるし。
島につけば、俺から行かなくても女の方から寄ってくる。

何が言いたいって、それなりに俺は女の扱いはわかってる…はずだ。

陸の女やナースみてぇに武器をもたねぇ女ばかりじゃねぇのもわかってる。

傘下のホワイティベイがいい例だ。

ちなみに、ホワイティベイとは普通に仲もいいし。

航路の途中や、島で会ったり
用事でお互いの船に行き来すりゃ、共に酒を酌み交わす。

飲み仲間みてーな感じだ。





なのに、あいつだけは。
何故か同じように接する事ができない。

あの勝ち気な性格だとか、顔がそれなりに小綺麗だとか
ホワイティベイと似通った部分もある。

そんな事を部屋で書類をこなしながら考えていたら
なんだかむしゃくしゃしてきたので甲板で外の空気でも吸おうと、部屋を後にした。

甲板に辿り着くと。

いつもの席に親父がいた。
相変わらず酒を煽りながら…


「親父、飲みすぎるとまたジェットやらナースに怒られるよい」

「マルコか…。こんなうめぇもんが体にわりぃわけあるか!!グラララ…」

ハァと溜め息をつくと、どこかから騒ぎ声が近づいてきた。

『ハルタ君!!あたしのデザート食べたでしょ!!こらっ!!』

「ちんたら食べてるから、いらないのかと思ってね!!もったいないから食べてあげたんじゃないか!!」

『なっ!!デザートは最後って相場で決まってんでしょーが!!』

「目の前のデザート取られて、気付かない程ぼさっとしてるルカの不注意だ!!」

『あたしにだって、考え事の1つや2つあるっつーの!!』


ドタバタギャーギャー

ドタバタギャーギャー


「またやってんのか?あいつらは」

そう言って、おいかけっこを繰り広げる二人を眺めながら親父は微笑みを浮かべている。

『あっ!!親父さん!!聞いてよー!!』

なんて言いながら、俺に気付かず親父に駆け寄ってくる。

と、突然足を止めたルカ。
どうやら俺に気付いたらしい。
その時船内から、サッチとイゾウ、ラクヨウまで出てきた。

「ルカー、またハルタにデザート取られたんだと?」

サッチの声に、一瞬見せた気まずそうな顔を引っ込め、振り返った。

「毎度お前らは飽きないねぇ。ルカも、もう少し学習したらとうだ?」

『学習以前にハルタ君があたしのデザート取らなきゃいんだよー!!』

「ぎゃはは、そら無理だ!!ハルタの菓子好きには負けるからなぁ!!」

『ラクヨウさんなんて、髪痛め付けすぎて剥げてしまえばいい』

「おまっ!!その話の内容は、俺達にはきついぞっ!!」

「ラクヨウ、お前今の俺も人数に入れなかった!?」

『で、サッチ。何?』

「あぁ、食ってないんだろーと思ってな。ほら、余ったデザート!!持ってきてやった♪」

その瞬間後ろ姿でも、わかる位に喜ぶさまが見てとれた。

『サーっチー!!ありがとう!!』

両手をあげて喜んではいるが、
俺としちゃ、大変気にくわない。

あからさまに態度で現された。

俺への苦手意識。


「食う前に仕事はどうしたよい?」

『は?』

「飯の時間は終わってる。仕事済ましてから食えよい。他の奴は皆仕事始めてらぁ」

「おい、マルコー?ケーキ位食わしてやれよ?」

「あ?そうやっていつまでも甘やかす気かよい?」

「別に甘やかしてるわけじゃねぇだろ?」

「おめぇらが、そんなんだから。こいつをまだ認められてねぇ、船員達がやきもきしてんだろよい!!いい加減にしろいっ!!」

「なっ!!マルコっ!!」

『いいですよ。サッチさん。その通り。皆さんに甘えすぎでしたね。ハルタ君、それ食べていいですよ。あたし、仕事行きますから』

「え?ちょっ、ルカ?待ってよ!!」

そう言って、俺を鋭い目付きで一蹴して踵を返して、船内へ走って行ったあいつを、ハルタが追いかけて行った。

「マルコ、ありゃ言い過ぎたねぇ。確かにルカをまだ信用してない奴等がいるのは間違いないけどね。少し頭冷やして考えてみるこったな」

そう言うとイゾウは背中を向け、ヒラヒラと手を振りながら、甲板の端へ行き座ると銃の手入れを始めた。

ラクヨウとサッチが俺に近寄り、肩を叩きながら言う。

「あいつの何がんな気にくわねぇかは知らないけどな。あいつはあいつなりに認めてもらおうと必死だぜ?」

「女なら嫌がる仕事も進んでやって、押し付けられる仕事もこなして、俺らにさえ言わねぇが。いわれもない言葉も掛けられたりしてるみてぇだしよ。もう少し穏やかに接してやれ。お前の態度がわけぇ船員の行動に拍車をかけちまう前にな」

ポンポンと肩を叩くと、二人は船内へと歩いていった。

「マルコ、兄妹喧嘩つーのは相手がいるからできるもんだ。できなくなる前に、少し考えろ」

「できなくなるって、あいつは船を降りねぇだろ?」

「船を降りるだけが、喧嘩できなくなる要因じゃねぇって事だ。よーく考えておけ」

そう言って、いつぶりか乱暴に頭を撫でると親父も自室へと引き上げていった。



そうして、俺はなんとも言えない気持ちを抱いて、その場に立ち尽くしていた。

海を見ると、穏やかに波が揺れていた。


兄妹喧嘩?


(何さ、何さ、なーにーさー!!)
(あんの万年半目バナナ野郎!!あんなの言われなくてもわかってたさ!!ちくしょー!!)
ガシガシガシガシガシ
(ちょ…ルカトイレの床がすり減るよ!!)
(黙っててください!!ハルタ君!!)
((せっかく敬語抜けたのに…マルコめぇ…))

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