travel-13
はい!どーも、白ひげ海賊団に入った新人船員ルカさんです。
あの宴以来すっかりと馴染み騒がしい兄貴達に扱き使われる日々を送ってます。
でもね!まぁ、1600人もいりゃ例外もいますよね。はい。
誰って?
そらあのツンデレ兄貴ですよい。
海を眺めてぼーっとそんな事を考えていたルカの背後から声が聞こえだした。
「ルカちゃーん?あれ?どこだ?」
『あぁ、サッチさん…。なんですかよい?』
ルカを捜しに甲板へ現れたサッチに今しがた考えてた人物の真似をして声を掛ける。
「え?何それ?マルコの真似?」
『そうですよい。何か用ですかよい?』
「ぶはぁっ!止めて!?まぢ!!話し方にプラスしてその半目っ!ひーっ!もう、無理!!ぎゃはは…」
『サッチさん、笑いすぎですよい。マルコ隊長来たらぶっ飛ばされますよい』
そう言っても、余程ツボに嵌ったのか腹を抱えて笑っているサッチ。
それ見て、調子に乗ったルカは口まで突きだして言った。
「『いい加減にしろよい!!』」
…………………………?
『はい?』
青い顔通り越して紫色の顔をしたサッチがルカの背後見ながら、それはもうあたふたしているから意を決してルカが振り向くと。
そこにいたのは、般若の形相のマルコだった。
「おめぇ、バカにしてんだろい?」
盛大な音をたてて、サッチとルカの頭には大きなたん瘤が出来たのだった。
そして、そんなルカを冷ややかな眼差しで見下ろしたマルコは聞いた。
「仕事は?」
『してました』
「ほーう。過去形か、いい度胸だよい。確かこの時間お前は甲板掃除を5番隊と担ってたよねい?」
『見てください、マルコ隊長。ブラシ持ってます。ブラシ。見えませんか?』
「見えてるが数分前ここを通った時も持って海眺めてたよねい?んで、また来てみりゃ今度はサッチとふざけてるときた。ブラシは持ってるだけで、掃除はしてくれねぇよい」
そう言ってマルコはもう一度ルカの頭を殴ったのだった。
それで満足したのか、仕事きっちりやれよい!と締め括りマルコは船内に消えていった。
溜息をつきながら、頭を摩るルカの隣に並んだサッチが口を開く。
「まだマルコとは仲わりんだな?」
『ほっといてください。多分性格的にあのツンデレバナナとは合わないんでしょーね…』
「ツンデレバナナって…」
『あたしのやることなすこと文句をつけるあの姿勢には感嘆しますね』
「まぁ、なんだ?認めちゃいるんだろうけどな。あの性格だ。そう簡単に打ち解けらんねぇんだろ。きっかけがありゃなぁ……!ルカちゃん!!ここはサッチお兄さんに任せてみねぇか?」
『なんか嫌な予感しかしないんですけど…』
「だいじょぶだって!俺に任しとけっ!!」
そう言い残すと、サッチはぴゅーと巨体を感じさせない早さで走り去った。
『いや、まじで。自然の流れに任させてくれないかな…無理か行っちゃったし…』
諦めて、また殴られては堪ったものじゃないとルカはブラシで甲板をグワシグワシと磨き始めた。
それから夕方になり、ルカは甲板で風を浴びながら書庫から借りた本を読みつつ空腹を訴える音をBGMにしていると、そこへビスタとジョズが現れた。
「ルカ。読書か?」
『はい。空腹を紛らわせるには、これが一番なんで』
「腹を空かしているのか?食べるか?」
そう言って、ジョズはチョコレートをルカの前へ差し出した。
『いいんですか?(ジョ、ジョズさんが甘いものだと!)』
「あぁ、まだあるからな。食べるといい。読書も進む」
そう言って差し出されたチョコをルカは受け取る。
『ありがとうございます!(なんてこった!似合わないとか思ってごめんなさい。もう神様、仏様、ジョズ様だよ!)』
そんな失礼な事をルカが考えているとは露知らず、ビスタ微笑んで話しかけた。
「それなら、一緒にティータイムといかないか?チョコレートは甘いからな、喉が渇くだろう?」
それに頷けばエスコートされ、いつの間にか用意されていたテーブルセット、紅茶にお菓子。
『もうなんか至れり尽くせりですね・・頂きます!!』
そう返すと、席について3人でティータイムとなったのだった。
そこで、ビスタがそういえばと口を開いた。
「サッチに聞いたが、まだマルコとは打ち解けられていないらしいな?」
英国紳士さながら、優雅に紅茶を飲みながら降られた会話にルカは難しい顔をして返す。
『サッチさんにも言いましたけど、性格的に合わないんですかね?完璧顔付き合わせると売り言葉に買い言葉みたいに展開しちゃうんですよ…』
「マルコも素直じゃないからな」
規格外の巨体であるジョズがティーカップを持って、紅茶を飲みながら会話に加わる。
『(ちょっと可愛い・・)素直とか素直じゃないとかゆー次元ですかね?あれ』
「女性はナースばかりで、戦闘員の女性の対応に慣れないんじゃないか?」
『そうゆーもんですかね?てゆーか、ナースさんには優しいんですか?』
「ナースには人気らしいぞ。街に降りれば、女達も寄ってくるしな…」
『そ、そうなんだ…』
そんなマルコとルカの関係性について談義を交わしながらお茶をしてると夕飯の時間が近づいてきたのか、船員達が我先にと食堂へ向かい始めるのを見て3人は片付けをすると食堂へ向かった。
そこにはすでに船員達が詰め寄り、戦場と化していた。
と、サッチがビスタ達と食堂に入ってきたルカに気付き手招きをしているのに気付いたルカは2人に断りを入れ、サッチの許へ足を踏み出した。
『何ですか?可愛らしく手招きしても、そのリーゼントと顔面、体格のせいで可愛さ皆無ですからね…』
「ちょ…最近発言が辛辣よっ!!」
なんて泣き真似するサッチに鳥肌が立ちルカは思わず目の前のトレーでサッチの顔面をぶっ叩いてしまった。
「へぶぅっ!!」
なんとも情けない声が響き、周囲にいた船員が笑う。
『あ、すいません。サッチさん』
「ちょ、ルカちゃん?最近扱いひでぇよ?」
『愛情の裏返しです』
「あ、そうならいいや」
『いいんですね・・・で?要件は?』
サッチの返しに呆れながら、呼んだ要件を尋ねる。と、サッチはにぃと悪い笑みを浮かべて言った。
「そうそう。これ、はい。持って、一番奥の席空いてるか行っておいで、あとこれも」
『何ですか?ぱしりの上に場所指定とか…飯位好きな場所で…』
食わせろと反論しようとしたルカだったが、それはサッチにより遮られ反論する間もなく、しっしっと追い払われたのだった。
サッチの言う通りも腹ただしいが、しょうがないと溜息を溢すと言われた通りに奥の席へトレーを2つ持って移動したルカの前に現れたのは・・
「『あ…」』
『(サッチさん、いやもうあんな奴サッチでいい。もう敬ってもやんねぇからな)』
目の前の言われた場所に腰掛けているのは、マルコで。
ルカは顔を顰めてしまう。
「……持ってきてくれたのかい?」
気まずい空気の漂う2人の間で先に口を開いたのはマルコだった。
『サッチさんに持たされただけです、まぁ、どうぞ?』
「あ、あぁ。ありがとない?」
何ともぎこちないやり取りをする2人に周囲がやきもきとし出す。
が、そんな事に気付く筈もない2人はマルコは座ったままルカを見上げ、ルカは立ったままマルコを見下ろし無言だ。
「……………席座るかい?」
『あ、じゃあ、はい…(気まずい…非常に気まずい。高速でかっ込んでこの場を去ろう。)』
そう決めたルカは、猛スピードで食事を始めた。
それを見たマルコがルカに声を掛ける。
「あー。その。そんな急いだら喉につまらせるよい」
『ふぁい、だいろぶれす』
「そうかい。まぁ気を付けろやい」
『(なんだ?今はツンデレのデレなのか!?)』
内心マルコの態度に鳥肌が立ちそうになりながらルカはマルコの横顔を見つめた。
「あの後から随分仕事頑張ってたみたいだねぃ?」
『ふぁ?あーふぁい』
突然話し掛けられたルカだったが、生憎口の中がパンパンで抜けた返事が口から出る。
が、マルコは気にした様子も無く言葉を続けた。
「まぁ、そのーお疲れさん・・・」
その言葉に、ルカは口に食事が入っているのにぽかーんと口を開けて茫然とマルコを見つめてしまった。
「汚ないよい」
それに気付いたマルコが、ルカの顔を一蹴してそう言った。
『あ、すいません。思わず…』
「あー・・よい。じゃあ、俺は先に行くよい」
そう言葉を返すとマルコは席を立ち去っていった。
不器用な兄弟に愛の手を
(てめぇ、ルカをけしかけたのはてめぇか?)
(え、何?)
(ほっといてくれよい)
((一度くれーじゃかわらねぇか))
((サッチの仲良し大作戦はまだまだ続くぜ!!))
2014/03/18 加筆修正
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