travel-12



「この世界の人間じゃないって…。どういう意味だよい」


マルコが俺らの聞きたい事を口にした。


『そのままの意味ですよ。異次元や異世界って言葉は知ってますか?』

「この世界の他に違う文化や違う進化、発展を遂げた世界があるって事か?」


今度はイゾウだ。


『知ってるなら、話は早いですね。質問はあとから聞きます。ぱぱーっと話しても?』


親父を見つめるルカ。
頷くことで了承を示し、親父は俺らに黙って聞けと目配せをした。


『あたしはこの世界とは違う。闘いもないし海賊もいない平和な世界からきました。あたしの生きてきた国は戦争なんてなかったけど、世界のあちこちでは紛争や闘いは起きてましたけどね。』


そこから始まったルカの話は
本当に夢みたいな話の数々だった。

普通に家族と暮らし、友人とバカをして、働きながら毎日を過ごしてきたが
突然それは終わった。

気づけば真っ白な空間で、ワイルドでダンディーなおっさん、さっき言ってた師匠的な人物に出会った。

そして、自分は違う世界である事を成し遂げるように言われたと。

しかも、今まで生きた世界から自分は抹消される。
そんな事を言われたそうだ。
抹消されるのは嫌だからと死んだ事にしてもらい、どれだけの時間かわからないがその真っ白な空間でこの世界で生きていく術を身につけた。

そして、もう大丈夫と太鼓判を押され俺らの世界に堕ちてきたらしい。

一気にルカは話終え、1つため息をつくと


『こうゆうわけです。別に信じなくてもかまいません。』

「ある事ってなんだよい?」

『それは…話す気もなければ、ぽろっと溢す気もございません』

「なぁ、俺らの事を知ってたのか?」


サッチが、この話を聞いた上での矛盾に気づきルカに尋ねる。


「この世界の奴じゃねぇってのに、ルカ。お前は俺らの事知ってたみたいだろ?」


その問いにルカは笑みを浮かべる。


『そうですねぇ。あたしはこの海をこの偉大なる航路を目に出来て、大変幸せですよ。この海に、あなた達白ひげ海賊団に恋い焦がれていたわけですからね』

「?」

『つまり、あなた達の事もこの世界でそれなりに有名な人達は知ってます。この世界を描いた物語が、あたしの世界にあったから』

「え、じゃあ俺らはルカにとっては物語の人物なわけ?」

『そうでしたね。今はあたしもこの世界を必死にあなた達と生きていますから。あたしにとっても、ここが現実ですけどね』

「あ、あぁ」

『他に質問は?』

「いつかは話してもいいと思ってるのかよい?」


ルカの目的を未だ納得出来ないマルコがもう一度質問の形を変えて聞く。


『さぁ、どうでしょう。でも、いずれあなた達も知る時が来るかもしれない。それでも、これだけは信じてほしい。オヤジさんが…あなた達が認めてくれるのなら、この身を掛けてあたしはあなた達とこの海を生きていきたい。この海で共にオヤジさんのために』


そう言ったルカの瞳は、何にも穢される事のない凛とした光を宿し、真っ直ぐにマルコを見据えている。


「マルコ、いんじゃねーか?」

「そうだよ、僕もルカの事信じるよ!」

「私も信じよう」

「俺もルカを信じようかねえ。何より面白いじゃねぇの。異世界からきた妹ってのも」

「あぁ」


隊長達が口々に告げる。

そして最後に


「別に信じてねぇわけじゃねぇよい。単なる確認だぃ」

「話は纏まったか?」

「『オヤジ/さん」』

「ルカ、おめぇは俺の娘だ。俺の名前を、旗を背負って、この海を俺らと供に生きていこうじゃねぇか!」

『っ…!!はいっ』

「よし、じゃあ飲み直しだなぁ!!末娘に…」

「新しい妹に…」


「「『かんぱーい!!」」』


こうして、ルカはおれらと本当の意味で家族となった。

今までのどこかよそよそしかったルカはもういない。

ただそこでバカみたいに大口開けて笑いながら、兄弟達に囲まれてもみくちゃにされちゃ怒鳴り散らす、本当のあいつがいた。


舞い降りたのは堕天使?
いいえ、可愛い妹です


(おい、考えて耽ってるのはいいけどよい。助けねぇと潰れるよい?)
(え?っておーい!!ルカー!!大丈夫かっ!!)

(し、死ぬかと思った…)
(助けるのが遅れたのは、こいつのせいだよい)
(はぁ!?何お前俺のせいにしてんだよ!!)
(知るかよい)



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