第三訓



困惑し騒ぎ出した面々はルカに詰め寄ったが、それを見兼ねたマルコが鉄拳で殴り飛ばし静かにさせると、ルカに向き直る。


「ルカ、そりゃどういう事だよい?」

『んー。あたしもよくわかんないけど。でも、ここが違う世界なのは確かだよ?多分あの洞窟がなんか関係あるんだろうけど…』


珍しく真面目な顔で告げたルカに更にマルコが聞く。


「まぁ、そうだろうない。そっちは追々考えるとして…さっき言ってたのはどういう事だよい?」

『ん?あぁ、この世界に来れるとはっての?』


それにマルコが頷いた時に、殴られ地に沈んだ面々も立ち上がり始める。


『元の世界であたし、この世界の本読んでんのよね?で、そっちの銀時さん達を知ってたっつーわけ』


にっと笑いながら、銀時、神楽、新八を見るルカに銀時が聞いた。


「あ?って、事はよ?ルカちゃんは…」

『ピンポーン!この世界でも海賊の世界でもないもう一つの世界の住人』


にっこにっことしながら言った言葉に新八が驚きながらルカに話しかける。


「えぇっ!!?それってどういう事ですか!」

『おぉ。よくぞ聞いてくれたな、駄眼鏡!』

「あんたさっきまで僕の名前読んでましたよね!?しかも、駄眼鏡って!!」

『アハハ、ごめんごめん。パラレルワールドって分かる?この世界とは別に、色んな文化、色んな発展。同じ世界でも何かが違う道を辿る世界があるの。で、その1つがここ』


にこっと笑って説明するが、マルコ以外はキョトンとしている。


「あー…。何か、とりあえずいいや。銀さんよくわかんなくなってきたし。」


そう言って頭をぐしゃぐしゃと掻き始める銀時。


「それは銀ちゃんが頭の中までクルクルだからヨ!!」

「神楽ちゃーん?それどういう意味??あれか?銀さんの頭がいかれてるってのか!?あぁん!!だったら、てめぇは意味わかってんですかぁ!!?」


神楽へと突っかかる銀時を横目にサッチがルカに話しかける。


「なぁ、ルカ?それはそうとして俺ら帰れるのかよ?」


難しい顔をしたサッチがルカに問いかける。
それにルカは飄々とした態度で返した。


『大丈夫だと思うよ?おっさんが多分その内軸を戻すと思うしね』

「おっさん?」


銀時が、ルカを見て不思議そうな顔を見せる。


『うん。あたしを世界越えさせた人。一応あたしのお師匠さんね。時空を管理してるみたいでさ。……あたし、その人との約束あるから。必ず戻らなきゃだし。それがあるから、多分助けに来るか、軸を戻してくれると思うんだよねぇ』


そう言ったルカの顔は色んな決意を見せている事に銀時達は気付いた。


「……ふーん。まぁ、それならよ。この世界案内してやるぜ?」


どうせ寝る場所もねぇし、金もねぇんだろ?そう言った銀時に新八が耳打ちをする。


「銀さん、いいんですか?それは大賛成ですけど、これから船で起こる事教えてあげれば…」

「そうネ!!そしたら、あんな事起こらないヨ」


新八が銀時の袖を引いて小声で話しかけ、それに賛同するように神楽も声をかける。
だが銀時は新八の顔を見ると真面目な顔で返した。


「新八、それと神楽。それだけは絶対言うな。多分、その為にルカちゃんがいるんだろーよ」


二人に小声で告げてから、銀時はルカを見た。
その先でマルコ達と話しているルカが視線に気付いて、銀時達の元へと歩いてくる。


『全く。さすがってとこ?未来はあたしが変える。だから、バカな兄弟達には言わないで貰えるかな?』


ルカが小声で笑いかけ言った言葉に新八も神楽もその決意を感じ取り頷く。
それを見たルカはにっと笑う。


『んじゃ、かぶき町。案内してもらおっかな!おーい!マルコー!サッチ!エースー!!銀時さん達が案内してくれるって!!行こうよー!!』


少し離れたところで待っていた3人にルカが声をかけて走り寄る。
その背中を見つめて新八が呟いた。


「多分、僕達の話を見てたなら。ルカさんは、闘いとか全く無縁の世界からあの世界に行ったんですよね?」

「だろーな。」

「家族とか友達もいた筈ネ」

「そうだなぁ」


新八と神楽の言葉に曖昧な返事をした銀時だったが、3人に笑顔を向けるルカの横顔を見ながら、言った。


「だから、俺らのとこに道が繋がったんじゃねぇの?ルカちゃんの背負ってるもんを一緒には背負えなくてもよ。兄弟とちょーっとした旅行の思い出作りの手助けくれぇは出来んだろ?」


にっと口角をあげた銀時に新八と神楽も笑う。


「そうですね…!!」

「忘れたくても忘れられない想い出つくってやるヨ!!」


そうして、銀時達もルカ達の元へと歩み寄る。


「どうよ?案内すんぜ?俺らの庭をよ」


そう言ってクイっと親指を上げ、その背に広がる街を指して銀時が口角を上げて、ニヤリと笑う。
それに、3人は微笑んだ。


「頼むよい。せっかくだ、土産話を持ち帰ってやらねぇとない」

「そうだな!!親父が面白がるだろーな!」

「この世界の名物料理なんかも教えてくれよ!!」

『よろしく!銀時さん、新八君、神楽ちゃん』


そう言ってルカ達が笑う。


「任せるネ!うまいもんなら一杯アルヨ!」

「はい!!珍しい場所も沢山案内します!」


そう張り切る新八と神楽はマルコ達の間に入ると手を引き歩き出し、その後ろを笑顔のルカが後を追う。
それに銀時が並び、話しかけた。


「未来の事。忘れるわけにはいかねぇだろうが。今は頭の隅っこにやってよ。楽しんでいけよ」


銀時の言葉にルカは目を丸くした後、溢れんばかりの笑顔を向けてお礼を告げた。


『ありがとう!!銀さん!』

「ん。俺としてはこう、ギュッと抱き着いてくれた方が嬉しいかなぁ?」


そう言って立ち止まり腕を拡げた銀時にルカが笑った瞬間。


「天パーがしゃしゃってんじゃないアル!」


神楽の跳び蹴りが銀時の顔面に決まった。
それに一行が腹を抱えて笑うと、不貞腐れた銀時がフラフラと歩き出し、それに着いていく形で歩き始めた。






「ってぇ、事で。まずはここだっ!!」


と、銀時が案内したのは…


「てめぇが、食いてぇだけだろうがっ!!」

「もっと他にも案内する場所アルネ!!」


そう言って神楽と新八に殴る蹴るの暴行を浴びせられる銀時を横目にエースが笑顔を見せた。


「おっ!食いもんかぁっ!俺腹減ってたんだよ!」

「へぇ〜、ここは何屋なんだぁ?」

『甘味処だよ、サッチ』

「知ってんのかい?ルカ」


まぁねぇ〜と言いながら、暖簾を潜っていく4人を見送ると神楽と新八は顔を見合わせる。
と、銀時がボロボロになりながらも立ち上がる。


「いってぇ…あいつら止めもしねぇのかよ、おい。ったく、気張らなくもいつもと同じでいーんだよ。いつも命のやり取りしてんだからよ。平和な時間の過ごし方教えてやりゃいーの。行くぞー」


そう言って暖簾を潜る銀時を追って二人も店内へと入っていった。


隣り合わせのテーブルに別れて座ろうとルカが椅子を引くとさも当たり前の様に銀時がその隣に滑り込む。


「で?ルカちゃん、何食べるー??」


そう言いながら、銀時の手はルカの肩を抱く。


「おい!銀時!!何ルカの隣に座ってんだよ!」


エースがじとりと銀時を見下ろしながら、ルカの前に腰を落とす。


「あぁん?別にいいだろー?案内してやんだから、ルカちゃんの隣位譲れってんですぅー」

「てめぇ、下心丸見えなんだよっ!」


んだとぉ!と立ち上がったエースと銀時を殴るとルカは神楽の隣へと移動する。


『神楽ちゃん、お奨めなぁに?』

「餡蜜とみたらしがここのお奨めヨ!!」

『じゃぁ、それ貰おうかなー。マルコとサッチは?』

「甘いもんは得意じゃねぇんだが。俺でも食えるようなのはあんのかい?神楽」

「お前、その頭で甘いの嫌いアルカ!!」

「いや、頭は関係ねぇだろい…」

「そうアルナ〜。これ、わらび餅なんかどうネ!確かそんなに甘くない筈ヨ!」

「じゃあ、俺はそれ貰うよい……」

「俺はルカと同じでいいや。おい、エース………はもう食ってんのか…」


話していた4人が隣に目を向けると、物凄い勢いでみたらしをかきこむエースと何故か張り合う銀時。
それを呆れ顔で見ている新八がいた。
その様子に、ルカが新八に声をかける。


『ちょい、新八くん。どしたの、あれ』

「いや、それが。ルカさんは渡さねぇとか言い合い始めて。大食いというか早食い対決始めちゃって…」

「バカネ」

「新八、ほっといてこっち座れ」


そう言って、椅子を1つ隣の席から拝借したサッチが招く。


「サッチさんっ!!」


ありがとうございますと礼を言って、新八も座ったところで店員を呼び注文を告げた。



すぐに運ばれてきた甘味をそれぞれ食べ始める。


『あー、久しぶりの甘味だよー』


幸せそうな顔で餡蜜を食べるルカ。


「そちらの世界に甘味ないんですか??」

『ん?あるんだけどさ、こういう甘味はある所限られてんのよー。サッチは知らないから作れないし、ここで覚えて帰ってもらわなきゃ!ねっ!』

「おうっ!!任せとけっ!!にしても、んめぇなぁ」

「そうだねぃ。これなら俺も食えるよい。ありがとな、神楽」


ポンと神楽の頭に手を置いたマルコに神楽は笑い返す。


「私のお奨めヨ!間違いないアル!!」


と、和気あいあいしていた時。
ガシャァーンと言う音と共に銀時の声が響いた。


「ギャァァアア!!エースが死んだぁあっ!?」

「またかよい」

「ったく。おい、ルカ。」

『はいはい…』


マルコに言われ席を立つルカを余所に、新八と神楽はエースを凝視する


「まさか、これが」

「エースの癖アル」


必死にエースを揺さぶる銀時に影がかかる。
見上げると拳を合わせ、パキパキと鳴らしながら見下ろすルカ。


「……へ?ルカちゃん?」


銀時がその様子に顔を引き吊らせた直後。


『食事中に寝るんじゃないって、何度言えばわかんの!!バカエース!!』


ドガチャーンと盛大な音をたてて、エースの頭に拳をおろした事により、エース共々テーブルまで粉々になる。


「ちょっ!!?ルカちゃぁぁぁぁあん!??」


エース、大丈夫か!?と銀時が駆け寄った時。


「んあ?やべ、寝てた」


エースがぶほっと頭をあげた事で銀時の顎にクリーンヒットする。


「つか、殴んなよ!ルカ!!」

『寝るあんたが悪い。』

「銀ちゃん、哀れネ」

「彼は大丈夫なのか…」

「大丈夫ですよ。放っておいても死にませんて」


そうして、食べ終えた一行は店を後にした。


『美味しかったー』

「そりゃ、よかったですぅー」

『何?銀さん、どうしたの?』

「べっつにー?ルカちゃんが神楽と新八ばーっか構ってるからって拗ねてませんけどぉー」

「拗ねてんのかよぃ。大人気ねぇ」

「ルカは子供好きだかんな、しょうがねぇ」

「残念だったな!銀時」

「天パが構って貰えるなんて大間違いアル」

「神楽ちゃん…」

「んだよ!!おめぇら!?銀さんいじめておもしれぇか!!?」


騒ぐ銀時にルカが笑っていた時。
ルカの視界が真っ暗になった。


「銀さぁぁぁあぁあん!!会いたかったわつ!!」



観光にアクシデントは付き物
(さ、さっちゃんさんっ!!?)
(この女どこから現れたんだよい!?)
(銀さんの香りがしたから、走ってきちゃったわ!!)
(おい、ストーカー。そりゃ俺じゃねぇ)
(何言ってるの?銀さんたら照れちゃって、銀髪にクルクルの……って、……銀さんストレートにしたの?)
(おい、あの美人は誰?新八くん)
(サッチさん、あれはさっちゃんさんって言って…)
(ストーカー2号ネ)
(て事は、銀時のか?)
(髪型がちがくても私の愛する銀さんに変わりないわっ!!)
(た、助け…女の武器の違いに負ける…)
(サッチでも、銀時でも。助けてやれよい。)
(ルカが胸のでかさの違いに打ちひしがれる前にな)
(てめぇ、眼鏡ちゃんとかけやがれっ!!)



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