第二訓
『ほんっと!!すいませんでしたぁっ!!』
往来のど真ん中。
ルカはマルコに土下座していた。
通り過ぎる人達はそれを怪訝な顔で見て通り過ぎる。
「あーぁー。マルコー。ルカも反省してるみてぇだしよ?許してやれよ」
犬に頭から食われたサッチだったが、何故かほぼ無傷で笑いながらマルコの肩をポンポンと叩く。
「で?あんたらがまぁ、家族ってぇのは千歩譲って認めるとしてだよ?こんなとこで何を揉めてたわけよ。つーか、あんたは何で定春に噛まれて無傷なのか不思議なんだけど」
「ん?伊達に理不尽な扱いをうけてねぇってんだよ!!」
遠くを見ながらサッチが返す。
「何?俺すげぇこの人から同じ匂いを感じるんだけど?」
「銀ちゃんと同じ?相当臭いネ!!」
「おい!?神楽ちゃーん?そりゃ、俺が臭いって事か?あぁ!!?」
「いや、それが俺ら洞窟抜けてここに出たんだけどさ」
言い争う二人に戸惑いながらもエースが答える。
「洞窟だぁ?」
「お前らの頭は銀ちゃんの頭みたいにパーアルカ?」
何をぅっ!!とエースが少女を睨む。
その横で、馬鹿にされた男は天パ馬鹿にすんじゃねぇ!!と喚いている。
そこへ土下座させて満足したのかマルコが話にはいった。
「本当だよい。俺らはそこの洞窟………」
振り向いた先には先程の洞窟はなく。
只の家と家の間の路地。
「さすがに、このかぶき町に洞窟はありませんよ?」
「そうヨ!お前ふざけるのはその頭だけにするアル!!それに、よいよいって。いい大人が恥ずかしくないアルカ!!」
「神楽ちゃん!!思ってても言っちゃ駄目だよ!!失礼だって…」
「新八ー?それフォローになってねぇよ?」
そのやり取りにマルコの額にはまたも青筋が浮かび、眉がピクピクと痙攣していた。
背後ではルカ、サッチ、エースが笑いだし、さすがにマルコもいたいけな子供を殴るわけにもいかないらしく、矛先は3人に向かった。
『「「いっでぇー…」」』
仲良く3人が頭に大きなたんこぶをこさえながら話す彼らに並ぶ。
「わりぃが、んな洞窟はこのかぶき町のどこを探してもねぇぞー?」
「だけど、俺らは確かに…」
「えーっと、すいません。お名前聞いてもいいですかね?あ!僕は志村新八と言います!」
「ん?あー、そいやぁ。名乗っちゃなかったな?俺ぁ、このかぶき町で万事屋をやってる坂田銀時ってぇもんだ」
「私は神楽アルヨ!!」
その自己紹介にエースが帽子を取って頭を下げる。
「こりゃ、ご丁寧にどうも。俺はポートガス・D・エース。以後よろしく!」
「俺ァ、サッチ」
「あたしは、アマクサ ルカ!!」
「俺はマルコだよい」
マルコが名乗った瞬間。
銀時と神楽と名乗った2人が噴出した。
「ま、マル、マルコって!!」
「あれアルカ!!日曜6時から放送してる国民的ファミリーアニメのおかっぱまるちゃんネ!!」
「ちょ!失礼ですって!!それに、どう見てもおかっぱじゃないですよ!!」
『でしょー?そう思うでしょー?』
ぷくくと口に手を当て笑いながら話す3人に混ざるルカにもう一度拳骨を落とす。
『いだいー。』
涙目のルカは不満そうに口を突き出し拗ねながら、話を進める彼らを見た。
「…………で、あんたら何もん?天人か?えーっと、マルちゃんだっけ。さっき何かゆらゆら炎が出てたけど?何、宇宙じゃあんな手品が流行ってるわけ?」
ルカを気の毒そうに一蹴してから、銀時はマルコに話しかける。
「…天人?天人が何か知らねぇが、俺らは人間だよい。炎ならエースだって出せる」
親指でエースをさせば、銀時達もエースへと顔を向けると、その先で気付いたエースが笑顔で腕を炎に変える。
それに目を見開いた万事屋3人を見て、ルカが笑う。
『あたしとマルコは空飛べるよー』
そう言ってルカは、羽音をたてて漆黒の翼を出すと3人は更に驚く。
その傍ら、道行く人々もルカの翼を見て目が飛び出す勢いで驚き凝視して固まる。
「…………えっと、俺何かわりぃもん食ったかな?幻覚が…」
「やばいよ、僕もです」
「朝食べた卵腐ってたアルカ」
そう話すのを見て、ルカは翼をしまい笑いかける。
『幻覚じゃないぞー!現実戻ってこーい!』
「幻覚じゃないったってよぉー?ルカちゃんだっけか?」
『ちなみに、マルコは鳥になれるんだよー』
ニコニコと笑うルカにマルコが声をかける。
「おい、ルカ。いくら何でも俺らを知らない奴がいたとしても、悪魔の実を知らねぇ奴がいるわけねぇだろい」
「は?ちょっと、待て。悪魔の実?」
銀時がマルコの言葉を遮る。
マルコが銀時の顔を見ればひくひくと頬を引きつらせている。
「何だよい」
「え?何、オタクらコスプレしてんなと思ったら。コスプレに留まらずに脳内まで侵されてんですか、コノヤロー」
「は?」
「あー、銀時さんっつったか?何を言ってんのかわかんねぇけどさ。あんま海賊おちょくらねぇ方がいいぜ?それが、一般人に手出さねぇ白ひげのもんでもよ?」
サッチがそう言いながら話に加わった時。
「海賊…っておいおい…まさか…」
「銀ちゃん!!」
「銀さんっ!」
神楽と新八が慌てて銀時に駆け寄る。
それを不思議に思いながらエースが彼らに背をむけてマルコに歩み寄る。
その背にはでかでかと刻まれた見覚えのあるマーク。
エースの歩み寄る先にいるマルコの開いたシャツから覗くモノは簡略化されているがエースと同じ意味を持つマークがある。
そして、今だニコニコと笑みを浮かべるルカの左腕に刻まれているマルコと同じもの。
それに気付いた彼らは声をあげた。
「あ、あんたら!!もしかして、ほんもん?」
銀時が目を血走らせて詰め寄る。
「ほんもんって、俺らの偽者なんかいるわけないだろ?」
首を傾げたエースを凝視した銀時達が今度はエースに詰め寄る。
「エース?ってルフィのお兄さんの!!」
「ん?あんたら、ルフィを知ってんのか!!?」
キラキラとしだしたエースの顔を見てルカが噴出し笑い出す。
「ねぇ、でも…銀ちゃん。ワンピースにあんな奴いなかったヨ?」
「あ、あぁ。それも、そうだな…」
「かと言って、エースさんといる辺りモブってわけでも…」
『あー笑った、笑った。』
そう言ってルカが目尻の涙を拭うと全員の顔を見回して口を開いた。
『まさか、この世界にも来れるなんて思わなかったよー』
「この世界?」
銀時が珍しく真面目な顔をする。
「ってぇ事はよい。ルカ……」
『マルコの察する通りだよ。ここは今までいたあたし達の世界じゃない。どうやら垣根を越えて、違う世界に迷い込んだみたいよ?』
あたし達。と、にっこりと微笑んだルカに、マルコ以外の全員絶叫したのだった。
いつ、何処で世界が繋がるかわからない
(ちょ!?ルカちゃんっつったか!!?何笑顔でとんでもねぇ事言ってんのぉぉお!!?)
(そうアルヨ!まるで、犬が歩けば棒にあたるみたいな感じヨ!!)
(神楽ちゃん!!それ色々間違ってるから!)
(おい、ルカ!!どういう事だ!!)
(落ち着け!エース!!落ち着くんだ!)
(え、ちょ!!?つ、潰れる!!)
(お前ら、ちょっと落ち着けぃっ!!)
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