第一訓



ここは、新世界にある無人島。
島の浜辺には大きな白鯨の船首の船が停泊していた。

この船に乗るは、四皇と呼ばれ世間から恐れられる白いブーメラン髭がチャームポイントの白ひげことエドワード・ニューゲート率いる白ひげ海賊団である。

「おい、誰だ。今オヤジをバカにした奴」

そして、白ひげ海賊団は珍しくログに従い船を進め辿り着いたのがこの無人島だった。

「何だか今日は様子が可笑しいな?」

探索へと乗り出す際に、とある腹黒王子が笑みを浮かべて提案したのが、くじをひきハズレをひいた奴だけで行けとの案。

「ちょっと、誰が腹黒王子だって?」

「ハルタ、気にするんじゃない」

1600人余りの乗る船。
まさかハズレを引くわけが無いと、船でたまにはのんびりしたい面々が2つ返事で了承した。

そうして、くじでハズレを引き当てた4人が探索のため船を降りたのだった。


そして、4人は探索を開始した後に見つけた洞窟内を現在進んでいた…。


『ちょ、ちょっと!何もこんな洞窟調べなくてもよかったんじゃないの!??』


盛大に怯えながら白ひげ海賊団1番隊隊長パイナップルの背に張り付きながら進むのは堕ちた旅人の主役ルカである。


「お前びびりすぎだわ」

それを後ろで見ているのは、白ひげ海賊団4番隊隊長……フランスパン。


「何!?このナレーションっ!!」

「うるせぇよ。サッチ」


無駄に吠えるフランスパンを嗜めるのは2番隊隊長火の玉小僧。


「ちょっ!??俺まで!?」

「お前らうるせぇよい。何言ってんだ」


パイナップルがフランスパンと火の玉小僧を…


「おい。誰だ。パイナップルとか言ってる奴はよい」


約1名が額に青筋を浮かべながらも、異変をなんとなく、なんとなーく感じながら、4人は洞窟を更に進むのだった。





暫く進んでいくと、先に一筋の光が見えた。
我先に走り出した主役、ルカ。

『外ーー!?早くっ!?外だよ!!』



走り出したルカの背を見ながら後を追うパイナップルとフランスパンと……


「「もういいわっ!!」」










『やったーー!!外だよ!外ー!!ッて…は?』


大手を振って飛び出したルカに続いてエースとサッチも飛び出し、後ろからのんびりとマルコがやって来る。

「ルカじゃねぇけど、やっぱ外はいい…なって…………」




出口を抜けた4人は目の前に広がる光景に目を見開いた。


木造の建物の並ぶ景色。

木造の建造物の中にそびえ立つ近代的な建物。

行き交う人々は着物。

そして、空に船。

とどめに目の前を行き交う人々の中にいる得体のしれない生き物。


「おい……どこだ。ここ」

「着物って事は、ここはワノクニかい?」

「おい、マルコ。お前、空からの偵察じゃ街どころか人っこ1人いねぇって…」

「いや、あれ。何?魚人じゃ…ねぇよな…」


呆然と目の前に広がる光景を見ていると、3人の視界の端でルカがふるふると震えていた。

「…?ルカ、どうした?」

振り返った瞬間。

ルカは大きくジャンプをし叫びながら、スタートダッシュを決めていた。



『ひゃっほーーい!!やぁーってきました!!銀魂せかぁーーい!! 』



今正に華麗にスタートダッシュを決めて走り出したルカをマルコ達は凄まじいスピードで後を追い、首根っこを掴み押さえ込むと声を張り上げた。


「うぉいっ!!?ここがどこか知ってんのかよいっ!!」

背後から馬乗りになったマルコがルカを押さえ込みながら尋ねる。


『ちょ、ちょい待ち!!マルコ!!お、重いっ!!』

「ルカちゃぁーん?説明してもらおうかぁ?」

そして左右からはサッチとエースがルカの顔を覗き見る。

『わかった!!話す!話すからっ!!』

ギャーギャーと騒いでいたルカとマルコ達だったが、突如背後から声をかけられた。


「ちょっと、ちょっとぉー?穏やかじゃねぇんじゃねぇのぉ?女一人にやたらでけぇ男が3人がかりでこんな往来のど真ん中でよー。羨ましいぞ、コノヤロー!!」

「「「あぁ?」」」

3人が振り向き、ルカはえ?と零す。

「銀さん、あんた何言ってんですか…。でも、何があったか知りませんけど、女の人に乱暴はよくないです。」

「そうネ!姉御が言ってたアルヨ。女に手あげる野郎にはロクな奴がいないってナ!!」

3人が振り向いた先には、銀髪天パーに腰に木刀をさした死んだ魚の目をした男と眼鏡をかけた地味な少年、そして、晴れているというのに傘をさした色白の一風変わった服装の少女がいた。

「わりぃなぁ?こちとら、暴走しようとした妹を止めただけだからよ、気にしねぇで行ってくれっか?」


警戒を顕にしたサッチがおどけながらも厳しい眼差しを向ける。


「そういうこった。身内の揉め事だ、よそ行ってくれ」

「騒がせて悪かったない」


しっしっ、とエースが手を払いながら3人に言えば、マルコも口ではそう言いながらもこれ以上関わるなと厳しい視線を向けた……が。

「何ヨ!この半裸の歩く猥褻物と喋るフランスパンとパイナップル頭の寝ぼけ野郎は!!恥ずかしくないアルカ!!お前らの存在自体が!!」

「神楽ちゃん、初対面の人にそれは失礼だよ。」


その物言いに声を荒らげたのは少女。
しかも相当な毒舌で捲し立てた少女に、地味な眼鏡が嗜める。
そこで次に口を開いたのが、鼻をほじっていた銀髪天パの男だった。


「んっとだぜ?このかぶき町でそんなよーなセリフ五万と聞いたが、いい話なんざ聞いた事ねぇんですけど、銀さん」

「あの、大丈夫ですか?」


今尚、マルコに背に乗られていたルカはその自分に掛けられた声を確認した瞬間。
とんでもない勢いで跳ね起き、声の主達に向き直った。


『ま、まじでかぁっ!!ぎ、銀さん、神楽ちゃんに新八くんだよっ!!』

「「えぇっ!!?」」


ガバァっと状態を起こしたルカはそのまま顔を上げて声のする方へと視線を向けるが、その背後では勢いに飛ばされたマルコが盛大な破壊音をたて家屋に頭から突っ込んでいた。
それに、サッチとエースは目を見開き家屋に突き刺さったマルコを凝視し、ぐぁっと詰め寄るルカに3人は後ずさった。


「え?」

「銀ちゃん、知り合いアルカ?」

「知り合いですか?銀さん」

「いや、俺知らねぇよ?つーか、お前らの名前も呼んでただろぉがよ…」

「そ、そうですけど…僕知らないですよ?」

「私も知らないアルヨ。銀髪は皆天パじゃないのかヨ」

「んなわけねぇだろっ!!」

困惑する3人を他所にルカはずざざっと更に詰め寄ると。


『すいませんっ!握手してくださいっ!!』


キラキラとした目を向け、手を差し出し握手を頼んだ。


「え?何?銀さんてば、知らない内にそんな有名人になってたわけー?いいぜ?」

かっこつけながら手を差し出した時。
神楽が言った。

「銀ちゃん、お前その鼻ほじった薄汚い手で触る気アルカ。お前も銀ちゃんの手なんか触ったらそのサラサラヘアが立ち所にクルックルの天パに様変わりするアルヨ!!」

「んなわけねぇだろっ!!何か!?俺に触れたら人類皆天パになるってかっ!天パ舐めんじゃねぇぞ、コラっ!!?」

「違うでしょ!!論点ずれてんでしょーが、あんたらっ!!」

『きゃー!!新八くんの生突っ込みー!!』

きゃいきゃいと喜び出したルカにサッチとエースは呆然とする、が。
背後から真っ黒なオーラを感じて振り向くと青い炎を揺らめかせながら歩いてくるマルコ。

「おい。エース、やべぇぞ…」

「お、おい!?ルカ!マルコに謝れ!!」


それに焦った2人が、物凄い勢いでルカの肩をバッシンバシンと叩くが、


『うるさいなぁ!!ちょっとほっといてよ!』

二人の呼びかけ虚しくルカの一括で言葉を失う。
そんな内にマルコはルカの背後へと到達する。
と、困惑していた3人もそれにふと気付き顔面蒼白になった。

「な、何ヨ。こいつなんか体から出てるアル」

「ちょ、お姉さん。後ろ、何かやべーってっ!!」

「めっちゃ般若背負ってますって!!」

『え?般若って?どーせマルコでしょ?あんた、何おこ……って、んの………キャーーーー!!!』


やっと振り返ったルカの目の前には青い炎を揺らめかせながら黙ってルカを睨み見下ろすマルコがいたのだった。




銀髪に悪いやつはいない!!筈…


(おい、サブタイの様子変だぞ?)

(え?これ、サブタイ何ですか?…って)

(どっかで見た様なやつアル)

(………ん?何だ?このでけぇ犬)

(あ、定春ー!!)

(わふっ!!)

(ぎゃあっ!!)

(ぎゃー!!サッチが食われたー!!)

(てめぇ、覚悟は出来てんだろうな?)

(ま、マル、マルコっ!!ごめんて!!)

(え?何?銀さん放置か、コノヤロー)

(定春!!それうまいアルか?私にもよこせヨ!)

(待て!!サッチは食いもんじゃねぇっ!!)



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