Savior-39



『ねぇ、ティーチ。何が貴方を変えたの?』


そう問いかけながら一歩、また一歩と足を踏み出すルカの足元はピシピシと音を立ててヒビ割れていく。

「おれぁ、変わってなんかいねぇぜ?元より俺はこのヤミヤミの実を狙って、オヤジの船にいたんだ。ゼハハハハ…」

『そう……。それなら、手加減はいらないね』

呟いた直後ルカは力を解放した。


大きな爆発音をたてて、覇王色の覇気が海軍本部は疎か、マリンフォード全体をのみこんでいく。

それに、力のある者以外はバタバタと倒れていく。


その中心で、ルカは長い銀髪を靡かせて静かにその紅い瞳でティーチを見据えていた。





その頃、モビーディックの甲板では。




「お、オヤジ!!あれは、何なんだよ!!」


覇気に倒れる事のなかった隊長達が動揺を顕にして、白ヒゲへと尋ねた。


「ハネハネの実。モデル ルシファー。……悪魔の実の中でも、異質とされるヤミヤミの実よりも更に上をいく未知の実。俺も詳しい事は知らねぇ。だが、伝説として語り継がれてきた話では、最強の実とも言われてきた。知ってるか?悪魔の実には本物の悪魔が宿っていると言われてる。そして、それを食べる事で悪魔は俺らの身体を根城とするかわりに力を与える。だが、ハネハネの実に宿るのは魔王と呼ばれるルシファーだ。それが、何を意味するか…わかるだろ?」

白ヒゲの真剣な声音にその場は静まり返る。
そんな中声をあげたのは、マルコ。


「ルカが…悪魔の実の力を。抑える事ができるのは、その悪魔に命令を送っているって事かい?」


「あぁ。悪魔は魔王には逆らえない。それが、例え無意識の相手であろうとも。魔王に逆らう事。それは、己の死を意味する。完全なる弱肉強食の世界だ…」


「そ、それじゃぁ。今のルカは…」

「あぁ…少なくとも。完璧に力を使いこなせるみてぇだからな。俺らじゃぁ、止める事さえできねぇ。そんなことはしねぇだろうが。それは、俺らの死をも意味する。」




その言葉に、能力者であるエース、マルコ、ジャズらが呆然とルカを見つめた。

その瞳には、知らず知らず畏怖の念が込められていた事に彼らは気付かない。



そして、白ヒゲは続ける。


「だからこそ。あいつは、俺らにここを離れろと言ったんだろうよ。魔王となった姿を見られたくなくてな…」

だが。と、続けた白ヒゲは険しい瞳の中に慈愛の色を孕ませるとティーチと対峙し睨み合う愛娘を見つめる。

「魔王だろうと、何だろうと。ルカは…ルカだ。俺の愛する娘に変わりはねぇ。」




静かに告げた言葉にいち早く同意をして見せたのは。









「当り前だろっ!!ルカは!俺の友達だっ!!魔王だか何だか知らねぇけどな!!あいつはいずれ俺の仲間になる予定なんだ!!海賊王になる俺の船に乗んだ!!その位になってもらわなきゃ困る!!」




「………ルフィ」



包帯だらけの身体で、白ヒゲ達の少し後方に立ったルフィにエース達は視線を向けた。



ルフィは船淵に走り寄ると身を乗り出しながらルカへと呼びかけた。



「ルカーーーーーっ!!」




ルフィの声にルカが振り向く。
それを見てとめたルフィは笑顔で告げた。


「姿形がなんだってんだ!!その姿を見られるのがこぇえだか何だか知らねぇけどな!!お前である事に代わりはねぇだろ!!そんな位で変わる様な仲間なら!!仲間なんて、呼ばねぇ!!皆お前の大好きな奴らなんだろ!!もっと信じろ!!俺は、お前が何だって!!友達だと思ってる!!一緒に帰ろう!!で、お前はあれだ!怒られちまえつ!!」


ルフィの少しだけずれた発言にルカは目を丸くした後、ふっと笑みを洩らした。


『……ルフィの癖に。』


その直後、エースがマルコがサッチが。
そして、イゾウやハルタといった隊長達も声をあげた。


「お前が俺らの為に闘うなら!!俺らはお前の為に生きる戦いをする!!」


「お前が俺らを守るなら、俺らはお前を守る」

「一緒に闘わせろよい!!」

「僕たち、家族でしょ?」

「家族は助け合わないと、ねぇ?」




それぞれの言葉に、ルカは呆然としながら俯いてしまう。


「ルカちゃん?」

『…うん。』


俯いてしまったルカに青キジが声をかける。
顔をあげたルカは声を張り上げた。


『一緒には闘えない。でも、見守ってて。それだけで、あたしはどこまでも強くなれる。守るモノがあるから、生き抜く力になる。皆の想いが、あたしを守るから。だから、そこから見てて。刻んで、あたしを!』


ルカの言葉に反論したい気持ちを抑えて、ルカを見据えた彼らは。

ティーチへと視線を移してしまったルカの背中を見つめた。







ルカが、俺らの為に闘うなら。
俺らにそれを見届けろと言うなら。
すぐにでも、隣に行きたい気持ちを抑えて
闘うキミを、見守ろう。

それが、力になるのなら。

必ず生きて、俺らの前に戻れよ。ルカ!!








『海軍!!動ける者はあたしと闘って!!七武海のあんたらもね!!』

そう言って、シリュウを見つめるミホークに
楽しげに、行く末を見ていたドフラミンゴに
ルフィの無事に安堵していたハンコックに
指示を待つ兵器とかしたくまに
笑みを浮かべるモリアに

そして、後方でそれらを見ていたクロコダイルに

ルカは声をかけた。



それに、七武海の面々は面白げに顔を歪めるとルカの元へと歩みを進めた。


「主は、面白い。何をするのか、何を為すのか。俺にそれを見せてみろ。その為の力は貸してやる」

「フッフッフッ…。久しぶりじゃねぇかぁ?ちぃっと見ねぇ内に随分女ぁ、あげたなぁ?いいぜ?俺が手伝ってやる」

「それが、ルフィの為になるというのなら。わらわはお主に手を貸してやろう」

「キシシシシ…つえぇ兵が貰えるなら俺は構わねぇ!!」

「…………………」

「まさか、お前があの堕天使だったとはなぁ?クハハハハ…。いいだろう。手は貸してやる。借りは倍にして返しやがれよ?」



クロコダイルが砂になり、ルカの隣へと姿を現すと宙に浮かぶルカへと悪い笑みを浮かべた。


「ルカっ!わしも、行くぞ!!」

モビーから飛び降りようと、足を踏み出したジンベエだったが。

『ジンベエはダーメ。あんた傷だらけだよ?あたしは死ぬ為に戦うんじゃないのよ。だから、そこに皆といなさい!!』

響いた声に苦虫を咬みつぶしたジンベエに白ヒゲが声をかけた。


「諦めろ。あいつが言い出したら聞かねぇ事は知ってるだろ。悔しいが俺らはどうやらこの船からは降りれねぇらしい。」



言葉の通り。
モビー周辺はルカの能力により、まるで空間を囲むように羽根が渦巻き降りようとした者を船へと押し返す。

それを見た白ヒゲ勢は、難しい顔をしてルカを見つめたのだった。





『さぁてと?ティーチ。覚悟しなさいよ!!!』





ティーチへと叫んだルカが翼を羽ばたかせてティーチへと向かった。

それをオーガーが応戦しようとした時。



「フッフッフッ。邪魔すんじゃねぇよ?面白くなってきたんだ。引っ込んでろ」



ドフラミンゴの能力により、体は封じられその銃口は近くにいたラフィットへと向けられる。


「何ですか!オーガー、情けない!!」


瞬間、放たれた銃弾を軽々と避けたラフィットの背後に砂が現れクロコダイルが腕についた鈎爪で殴り飛ばす。


「わりぃが。あいつぁ、俺の獲物だ。」

ルカへと殴りかかるバージェスの元にはハンコックが現れ蹴り飛ばす。


「ルフィの兄である火拳の家族。つまりはルフィの姉上じゃ!!手を出すでない!!」



更に刀を抜いたシリュウがルカへと切りかかる。


「斬り捨て、御免。お前はここまでだ」


「主。かなり暴れていたらしいな?どれ、俺と手合わせでもせぬか?」


その刀を受け止めたのはミホーク。


そして、サンファン・ウルフがその巨大な手をルカへと振り下ろそうとした所に現れたのな赤犬。


「あいつに手ぇ貸すんは、癪だがのぉ。貴様らをのさばらせるわけにはいかんけぇのぉ…」


マグマへと変えた腕をサンファン・ウルフへと向けた。


そして、カタリーナ・デボンには黄猿。


「わっしもねぇ〜。あんまり海賊なんざと馴れ合いたくはないだけどねぇ〜。ここからお前らを出すわけにはいかないだよねぇ〜」


そして、アバロ・ピサロにはくま。


「……アバロ・ピサロ。悪政王。」


ドクQには、モリアが。


「キシシシシ、まずはお前の影から頂こうか?」


そして、飛ばされたラフィットの元へと再度現れたのはクロコダイル。


「楽しませろよ?クハハハハ」



そして、ルカと共にティーチへと向かったのは青キジだった。



「あいつらの変わりとはいかないだろうけど。俺だってやる時はやるんだよ?」


体を氷へと変えた青キジは技をティーチへと向けたが


「闇水!!」


「え?なに、これ?」


ティーチの能力で引っ張られる青キジ。


『あんた、足引っ張りに来たの?』


声とともに現れたのはルカ。


「ルカちゃん」


『従いなさい。あんたの主は、そいつじゃない』


響いた声の直後。

ティーチの腕から現れた闇が掻き消える。


「なにぃっ!!?」


『言ったでしょ?あたし、魔王なの』


クスクスと笑いながら、青キジの前へと降り立ったルカはティーチを見上げて笑った。


「てめぇ、ルカ!!化け物かよ! 」

『………化け物?結構じゃない。』


笑うルカは続けた。


『誓ったの。愛する彼らの為に。その障害となるあんたをぶっ飛ばす為に、あたしは強くなる。』


そう言って黒金を構え、ティーチへと詰め寄ったルカは黒金をティーチへと奮う。

それをティーチはどこから出したのか、爪のような武器で受け止めた。


「やっぱ。女だな?力が足りねぇぞ?」


そう言って、ティーチは渾身の力でルカの腹へと拳を叩きこんだ。

それに飛ばされたルカは足で地を滑りながら堪えるとニヤリと口角をあげた。


『そうこなくっちゃ、面白くないよね』



地を蹴ったルカは翼を羽ばたかせて、羽根を飛ばすとティーチへと向ける。

その中を勢いつけて進むと、ティーチへと黒金で突きを放つ。

「ぐおぁぁぁあぁあぁっ!!!?」


ティーチへと刺さった黒金を抜くと、痛みに悶えながらもこらえたティーチをみた。


『お返しね。』


笑いながら、ティーチへと黒金を叩きつけるとティーチは横へと飛ばされる。
それを追ったルカはティーチの上空へと現れて
その背中へ脚を振り降ろし地面へと落とした。

タンっと音をたてて降りたルカは見下ろして言った。

『立ちなさいよ。こんなもん痛くも痒くもないでしょ?』




胸に誓いを、その背に願いを

(その先の未来に進む道は、あたしの前か)

(それとも、あんたの前か…)


prev next


main


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -