savior-38
『ティイイチィィィイっ!!』
ルカはその叫びと共に大きく黒金を振り下ろすとティーチ達黒ヒゲ海賊団へと斬撃を飛ばした。
大きな音を立て地面を砕きながら進むその斬撃を受け止め弾いたのは。
雨のシリュウ。
彼はルカを睨みつけながら告げた。
「……仮にも俺の船長だ。容易く近づけるだなどと…思うなよ」
そう言ったシリュウをルカは見据える。
その瞳は、冷たく凍り付いていた。
「(この女……なんてぇ眼をしやがる)」
「ちょっと!!ルカちゃん!本部壊さないでよ!?」
『知らないっての。戦いが終わった後の事なんて、興味ないわよ!!今。あたしが、興味あるのは……あいつらをどう地獄に堕とすか。ただそれだけね』
そう告げたルカの言葉に黒ヒゲ、ティーチとその仲間達は眼の色を変える。
「随分と舐めてくれてるみてぇじゃねぇか?」
ティーチが苛立たしげにルカを睨み付けた。
『何よ?一丁前にあたしに楯突く気かしら?』
ルカが挑発する様に馬鹿にした笑みを浮かべた。
「てめぇ!!言わせておけば、好き勝手な事言いやがって!!俺とルカ。どっちが上かよくわからせてやる!!覚悟すんのは、おめぇだぜ?ルカ!!ゼハハハハハハ…!」
高らかに笑い出したティーチを見たルカの顔は笑みが浮かんでいたのだった。
そして、ルカへと拳を向けたのはバージェス。
「ウィーハハハハ!!船長には指1本触れさせねぇぞぉ!」
飛んできたバージェスの拳を後方へと飛んで避けたルカ。
ルカのいた場所はバージェスに攻撃により抉れてすまう。
そこへ、オーガーがルカへと狙いをつけて銃を放った。
それを視界に留めたルカはニヤリと笑みを浮かべたのだった。
そして、オーガーの放った銃弾はルカの頭部へとあたり弾けとんだ。
「ゼハハハハハハ…!!いくらおめぇでも、こりゃぁ死んだなぁ?成仏しろよ?ルカ」
ニヤニヤと笑ったティーチは傾いていくルカの身体を見て勝ち誇った。
「ルカーーーーーーっ!!!!!?」
その戦闘を見守っていた白ヒゲ勢の海賊達は、ルカの名前を叫び唖然としていた。
「嘘だろい……」
呆然とするマルコの隣で、サッチが膝をつき項垂れ涙を甲板へと落とす。
「しゃれに…なんねぇって…また失うのかよ…?」
そうこぼしたサッチへと視線を向けイゾウが、顔を歪めながら俯く。と、
「ありゃぁ…」
白ヒゲの声に俯いていた者は顔をあげ、銃弾を受けたルカを見詰めていた者は、その目を見開いた。
顔を上げたサッチ達の視線の先に見たのは、
漆黒の羽がルカを形成していく様だった。
「は?自然系には、もうなれねぇんじゃねぇのかよ?」
『ちょっと?随分とえぐいもん持ってんじゃないのよ?』
響いた声は愉しげに笑う。
最後の漆黒の羽がルカの体に納まるとルカは、にこにこと笑みを浮かべた。
『ふふふ…あたしは何も、この数日遊んで過ごしてたわけじゃないの。楽しいショーはこれからでしょ?楽しもうよ?お兄ちゃん?』
ニヤリと悪い笑みを浮かべたルカは、羽音をたてて
ゆっくりと地上から足を離すと少しだけ浮かんだ状態で黒鉄を肩に当てながらティーチを見詰めた。
「どうゆうこった…あいつ、化物か!?」
ティーチは、目を見開き笑うルカを見る。
「そういやぁ、あいつはハネハネの実を食べたんだったなぁ」
呆然とルカを見ているティーチの隣でシリュウが声を出した。
「何か、知ってんのか!?」
ティーチが声を荒らげて振り返る。
そんなティーチを見て、険しい顔をしたシリュウが告げた。
「俺も詳しい事は知らねぇよ。ただ…」
そこで、1度切るとシリュウは真っ直ぐとルカを見据えるとごくりと喉を鳴らした。
「ハネハネの実が覚醒するのは知ってるな?…それには段階がある。」
シリュウの言葉にみるみると目を見開く。
「俺も詳しくは知らねぇ。が、最終段階に辿り付くには相当な試練があると。そして、それを越えた者には更なる力が宿るってな…」
それを聞いたティーチは、ルカへと視線を向ける。
『さすが、ってところかな?雨のシリュウ。ティーチよりは知ってるみたいじゃん』
クククと笑うルカは愉しげに笑みを浮かべる。
『下手したら、ここに来る前に死んでたよ。あたし。でも、死ぬ気でやれば案外やれるもんよねぇ?見せてあげる?ハネハネの実 モデル ルシファーの最終段階!!』
ニッと笑ったルカを2対の翼が顔と体を隠した。
そして、暗い闇が翼から現れたかと思った直後。
その闇にルカは包まれた。
「おい!?ルカ!!?」
「何がおきてんだよ!?」
「まさか、覚醒の進行はここまできていたのか」
戦場にぽっかりと浮かんだ黒い闇を見据えたセンゴクが訝しげに呟く。
「おい!!霧が晴れてくぞ!!」
誰かの声に意識をそちらへと取り戻した白ヒゲやマルコ達の視線の先に現れたのはまだ、2対の翼でその姿を隠したルカ。
『本当の恐怖と絶望はこれからよ?ティーチ?』
バサっと開いた翼の中にいたのは、銀髪を靡かせたルカ。
だが、その様相は明らかに先程までとは全く変わっていた。
短く切りそろえられていた筈の髪は腰まで伸び、風に靡き、その髪を辿れば頭には2本の角。
唇は、化粧をしているわけでもないのに真っ赤に色付き、そして何より、その瞳は元より紅い色をしていたがそれまでの優しさを秘めた色をしていなかった。
『さぁ、あたしとあんた。生き残るのはどちらか一方。決めましょう?この先を生きる者を、ね?』
堕天使降臨
(おい、あれ。ルカ、なんだよな?)
(何なんだよ…すげぇ覇気だぞ)
(何が始まんだ)
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