Savior-40



ゲホゲホと咳をしたティーチの口からは血が流れる。
それを手で拭うと己を見下ろすルカを見上げると、ギッと睨みつけ腕を振り上げルカへと攻撃を繰り出した。

『っと…』

それを、寸でで躱したルカだったが。
服にはティーチの武器で切り裂かれた服とうっすらと滲む血。


「俺かお前か?そんなもん、分かりきってる!時代は俺を必要としてる!!ゼハハハハハ…」


そう告げたティーチを見つめたルカが一瞬でティーチの懐へと攻めいるとティーチへと黒金を振り上げた。
それを身を逸らせて避けたティーチは尚笑う。


「考えてもみろ!ルカ!!時代はもう変わろうとしてんだよ!!ロジャーは死に、白ヒゲも老いた!!次々に名乗りを上げる海賊共を纏めあげるには新しい王が必要!!そうだろ!!その新時代に古くせぇ白ヒゲ共はいらねぇんだよ!!」


そう言ったティーチに、モビーにいたエースが
怒りを顕にする。


「あの野郎…まだ言いやがるかっ…!!」


エースの言葉にマルコもサッチも隊長達も、その瞳に怒りを見せる。


と、それまで高笑いを上げていた筈のティーチが吹き飛んだ。


その場にいたのは、ルカ。



ティーチの飛んでいった方を見て声を荒らげた。




『黙れっ!!時代がどうのこうの興味ない!!それにねぇ、この海の王になんのは断じてあんたじゃないっ!!』



ティーチがいる場所へと移動したルカは仰向けに倒れるティーチの顔の横に黒金を突き立てるとその冷たく冷え切った瞳で蔑むように見下ろすと告げた。



『時代が変わろうと、それをあんたが見る事はないわよ。あんたはここであたしにぶっ飛ばされる運命なの。……あぁ、それと。何だっけ?オヤジさんは必要ないんだったっけ?それこそあんた…………』



突き立てた黒金を抜くと肩に担いだ。



『クソ喰らえよ。時代が必要としなくなる?ふざけんじゃないわよ。偉大な男は、そこにいるだけで存在意義があんのよ。あんたなんかと違ってねぇ……。あたしにとって、白ヒゲの皆にとって。オヤジさんは必要な存在よ。オヤジさんが、領地としてる島の人達にとってもねぇ…。あんたがそれを壊すなら、あたしはそれ以上の力をもって。あんたを張り倒してあげる。それが、過ちを犯した兄妹に向ける最後の愛情よ』



「てめぇ……」



尚、見下ろすルカにティーチはいらいらとした様子で起き上がると声をあげた。



「おいっ!!てめぇら!何遊んでやがる!」



ティーチが声をかけたのは、仲間である黒ヒゲのクルー。


「予定は変更だあっ!!ここにいる海軍共も白ヒゲの奴らも全員皆殺しだぁっ!!逃げ出す者も追い詰めてぶっ飛ばせ!!俺に逆らった事。後悔するんだなぁ?おぉ?ルカ!!」


『そう簡単に皆殺しになんてなるわけないでしょ?あんた、頭いいかなと思ってたけど…馬鹿だったのね?後悔すんのは、あんたよ。バーカ』


そう嘲笑うとルカは黒金を持ち、背後へと飛び退く。

「なんだ?俺にびびったかぁ??」


『びびるかってのよ。腐ったあんたの近くにいたらあたしまで腐るっての』


バサっと羽音を立てたルカは宙へと舞い上がると、ティーチを見下ろして笑った。

『レイン』


ルカがそう言った時、無数の羽根がティーチ目掛けて降り注いでいく。

その羽根は次々と地面へと砂埃をまき散らしながらめりこんでいく。
そして、視界は見えなくなるとルカはその中へと突っ込んで行った。


船長っ!!と声をあげたバージェスとラフィットだったが、その一瞬の隙をクロコダイルとハンコックが見逃す筈もなく。

ラフィットはクロコダイルの砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)により深手を負わされ。
バージェスは、虜の矢(スレイブ・アロー)により石化してしまったのだった。



その頃、モビーでは。



「あいつのオヤジ主義は…離れた期間で度を増した気がするねぃ」

言ったマルコの表情は嬉しげで、それに頷く隊長達も薄らと笑みを見せる。

「あいつぁ…嬉しい事言ってくれるじゃねぇか」


その時、砂埃が晴れはじめルカ達の影が見えてくる。

そこにいたのは。ティーチを守る様に立ち塞がりルカの黒金を掴む……バスコ・ショットがいた。



『あんた。どうもおかしいなと思ってたら…どこにいたのよ?』


「トプトプトプトプ…さぁなぁ?けど、面白そうな事してたら混ざりてぇだろ?」


『……あ、そう。じゃぁ、先にぶっ飛ばされるの希望って事ね』


黒金を掴まれた状態で地を蹴るとルカは足を高く上げてバスコ・ショットの顔面に蹴りを当てた。
が、バスコ・ショットはダメージを受けていないのかルカの足を掴み持ち上げる。


「トプトプトプトプ…、嫌いじゃねぇなぁ?威勢のいい女はよぉ…」


ルカの顔を見下ろして告げると、そのままルカの顔を殴りつけてルカは地面へと叩きつけられる。


『いった……まさかの覇気使いってわけね…』


血を吐き飛ばして立ち上がったルカは、バスコ・ショットを見上げる。

「よくやった!!そのままぶっ飛ばしちまえ!!」

ティーチが叫ぶと、従うわけじゃねぇがと呟いてからバスコ・ショットが動き出した。

『くそ!!ピエロみたいな為りして!!うけでも狙ってんの!ってのぉっ!(けど、なんなの…このスピードは!!?)』


「ゼハハハハハ…逃げてるだけじゃぁ、駄目なんじゃねぇかぁ!!?」

『てめっ!!どこのへたれ番長だよ!!ばっかじゃないのっ!!?』


悪態をつきながらも、ルカはバスコ・ショットに圧されだしてしまう。

『(何なの?!こいつ!動きが読めない!!)』

予測不能の動きをするバスコ・ショットに、得意とする見聞色でさえあまり意味をなさない。


『ちょ、まさか酒のせいとかじゃないわよね!!?お笑いやってんじゃないのよ!!』


怒鳴りながら、向かってきたバスコ・ショットに気付きなんとか黒金で応戦していたルカだったが、目の前に大きな背中が潜り込みバスコ・ショットを弾き飛ばした。



『…………え?』


目の前には、正義の文字の記された真っ白なコート。

「悪かったのぉ…あの時は殴って。エースを守ってくれた事。礼を言う。仮にも海兵。あまり大っぴらに礼は出来んが…家族を愛する想いには、胸を射たれたわい!!ここは、わしに任せろ!!」


『ガープ…さん』


「ほれっ!!何しとるんじゃ!!」


声をかけられたルカは、ガープに笑いかけると振り返りティーチを視界に納めると黒金を奮い斬撃を飛ばすとティーチへと向かい走りだしたのだった。





気付けば誰もが惹きつけられる

(不思議な女子じゃわい!)

(あの娘、麦わら以上に恐ろしいかもしれんな)

(じじい…)

(じい…ちゃん…)


(グラララ…あいつは本当に人を惹き付ける天才じゃねぇか!!グララララララ)



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