savior-37



「ゼハハハハハ!!やぁっと気づいたか?」

処刑台に立つ黒ひげの笑い声が響く。
その黒ひげを囲むのは…海軍から口々に声が上がる。

「あれは間違いなくインペルダウン"L EVEL6"の死刑囚達!!」

「なぜあいつらがここにいるんだ!?」

「どいつも過去の事件が残虐の度を越えていた為に世間からその存在をもみ消された程の…世界最悪の犯罪者達………」

「一人たりとも絶対に世に出してはいけないやつら…」

「あんなでかい生物は他にはいない…!」

「あ… 見つかっつった上にバレつった」

「海賊"巨大戦艦"サンファン・ウルフ"!」

「"悪政王"アバロ・ピサロ!!」

「懐かしいシャバだニャー…」

「"大酒"のバスコ・ショット!!」

「トプトプトプ…ウィ〜こいつら殺してええのんか」

「"若月狩り"カタリーナ・デボン!」

「ムルン フッフッフッ あなた達もスキねェ…」

「───そして!!インペルダウンの"雨の シリュウ"看守長!!一体どうなってるんだ!!?」


センゴクが処刑台のシリュウを見上げながら怒声をあげた。

「シリュウ、貴様………!マゼランはどうした!?インペルダウンはどうなった!?貴様らどうやってここへ来た!!」

「後でてめェらで確認しな… ともかくおれは… こいつらと組む以後よろしく」


センゴクの前に海兵が跪き、遅ればせながらの報告をする。

「センゴク元帥!!お伝えするチャンスがなかったのですが…… 先程再び"正義の門"が開き認証のない軍艦が一隻通ったとの報告が」

「……… それがこいつらか!どういう事だ。動力室には海兵しかおらず異常もない筈」


センゴクの呟きに答えたのは黒ひげ海賊団のラフィットだった。


「ホホホ…申し訳ない。単純な話………私が出航前、動力室の海兵に"催眠"をかけておいたのです…"正義の門"に軍艦を確認したら全て"通せ"と…他の方々の役にも立ってしまった様ですが…」

大口を開けて黒ひげは笑う。

「海賊として政府に敵視されてちゃあ、"正義の門"も開かず…インペルダウン潜入も不可能"七武海"に名乗りをあげたのはただそれだけの為だ…!!称号はもういらねェ!!!」

「……………!!!」

ギリギリと歯を食いしばり、センゴクは黒ひげを睨み上げる。


「そいつらの解放が目的だ ったのか!」


「ゼハハハハ…そうとも初めからそれだけだ。そしてこれが全て!今にわかる!!」

「……………!!」

そこへ響くティーチを呼ぶ声。
声の主は白ひげで、拳を握りググ…と力を蓄え、振りかぶる。

「危ない!船長!!」

黒ひげ海賊団の声がするや否や、 白ひげのグラグラの実の能力は処刑台どころかその土台の海軍本部ごと破壊した。


『…っ!?親父さん!!』

それにルカは振り返り、モビーの上でその瞳に怒りをこめてティーチを睨み付ける白ひげを見た。

「……………!!容赦ねェな……あるわけねェか!」

「てめェだけは息子とは呼べねェな!ティーチ!!おれの船のたった一つの 鉄のルールを破り…お前は仲間を殺した」

「オヤジ…」

「何言ってやがる!?俺は、ルールを破ってねぇみてぇだぜ?ゼハハハハハ…現に死んだ筈のルカはそこにいるじゃねぇか!!」

「だとしても!おめぇだけは許しちゃぁおけねぇなぁ!ティーチィィイイ!!!!」

怒りを露にした白ひげがもう一度拳をぶつけようとした時。

白ひげの能力は使えず宙を切っただけ。

「!?なんだぁっ!?」

「親父っ!?どうしたんだ!?」

そこへ、下で海兵達と交戦していた筈のサッチ、イゾウ、ハルタ、ビスタが突如甲板へ叩きつけられた。

「はぁっ!!?何だ!?」

エースがそれに驚き駆け付ける。

「おい!どうしたんだよ!!」

下にいた筈だろ!?と言うが、その瞬間、ガタンと物音をたてて、モビーが動き出した。

「おい!誰だよ!船動かしたのぁ!!」

サッチが捲し立てるが、操舵室に確認を取れど誰も動かしていないと返答が変える。
そこへ、モビーの下から騒ぎがおこる。

「止めろおぉおぉおおお!!」

『邪魔をするなぁっ!!!!』


ドンっ!と広がる覇王色の覇気に海兵達はまた倒れて行く。


それに気付いた白ひげや隊長達が船縁から見下ろすと、いたのはルカ。


「ルカ!!?何してんだ!おめぇも来い!」

サッチが必死に声を荒げ、ルカへと訴える。
それにルカは顔だけ振り向くと笑みを浮かべる。

『ごめん!!先行ってて!あたしはまだやる事が残ってるから…!!』

「てめぇっ!!また一人で闘う気かよっ!!」

「許さねぇぞ!!すぐ来い!」

サッチとエースが叫ぶが、ルカは顔を前へと向けてしまい完璧に背を向けてしまう。
その間にも、離れだした船は少しずつマリンフォードの湾内から離れていく。

『……ティーチ!!お前の計画。全て葬り去ってあげる!!あんたらごと…闇の底までね!!』



バサッと羽音をたてて舞い上がるとルカは今度はセンゴクへと声をかけた。


『ねぇ!センゴク元帥さん!!白ひげ海賊団よりあいつらが出て来た事のが厄介なんじゃないの?』


そのルカの言葉にセンゴクは険しい目を向ける。
視線の先には漆黒の翼を羽ばたかせるルカ。

「……何が言いたい」

それにニヤリと笑みを浮かべる。

『…level6の囚人。ここで捉えて起きたいでしょ?手貸してあげるからさぁ。白ひげを見逃してくれる?あたし達は一般人に手を出す事はない。けど、あいつらは確実によろしくないでしょ?出来れば世間にも知られたくないんじゃない?なら、答えは決まりでしょ?』


手を組む?組まない?と続けたルカをセンゴクは睨み付ける。


「おいおい、ルカ。元家族を海軍に売るってぇのか?とんだ妹だなぁ?今すぐ考え直して俺と来い!!ゼハハハハハ…」

最果てを見てぇだろう?と言ったティーチにルカはしらけた視線を向けた。

『……最果て?別にんなものあたしは見たくないし、あんたの仲間になる位ならあたし死んだ方がまし。ヤミヤミの実食ったからって、勝手に自分が最強だと思ってるみたいだけど……』

す…と黒金を上げてティーチへと向ける。

『あんた、雑魚でしかないからね?後ろの仲間を引き連れて、強くなった気でいるみたいだけど。あたしからしたら、ただの番長気分の大バカ野郎だからね?家族だったからこそ。その勘違い。綺麗さっぱり正してあげる』

で?センゴクさん。どうすんの?冷たい声音が静かに響き渡る。

ティーチを歯をぎりっと噛み締めルカを睨み付けていた。

そして、センゴクは目を瞑り何かを考えた後に目を開くと、三人の大将の名前を叫んだ。


「サカズキ!ボルサリーノ!クザン!!」


その声にそれぞれが瓦礫の中から這い出てくる。

「今の話。聞いていたな?何とも腹立たしいが…堕天使の言う通りだ。今は、白ひげを追うよりもlevel6の脱獄囚を優先する!!!!堕天使と協定を組む!!黒ひげ、ティーチ率いるそやつらを確保しろっ!!」


センゴクの言葉にルカは悪い笑みを浮かべると、背後で己を呼ぶ家族を無視して三大将の元へと飛んだ。


「ど、どういう事だよ!!?」

「あいつ、俺らに手出させねぇ気かよ!?」

「ふざけるなよ?てめぇ!戻ってこい!ルカ!!」

サッチの怒声がさらに響く。

「助けられてばっかで、俺にもお前を守らせろよっ!!頼むよ!!もう!お前を失いたくねぇんだよ!!!!」


悲痛な叫びに歩むルカの足が止まる。

『………ありがと。でも、あのバカの狙いが親父さんである今。皆には行って貰わないと。それに……本当に見られたくないんだ。戦ってる姿。』

だから、行って。ぽつりと響いた言葉にサッチ達は言葉の真意を読み取れず困惑するばかり。

「……どういう!!」

言葉を続けようとした瞬間ルカは技を繰り出し、竜巻を起こすと羽で船体を傷つけぬように操作しながら船を沖へと送り出した。


『……せめて、少しだけ離れてて。』


「……ルカちゃん。いいの?」

『うるせぇよ。あんたらへの能力は解放した。海軍全戦力。あいつらに向けてよね。あんたらにとっても得でしょ?あたしの力を分析できんだから。この取引。あたしがここに残る事。かなりこっちのが損なんだから。』

キッとティーチを睨み付けるルカの背後には、不服そうなボルサリーノ。

「まぁ〜たく。センゴクさんは何考えてんだかぁ〜…」

『黙って、あんたは援護してりゃいいの!!』

「援護?」

『向こうにも狙撃手がいるの。あんたはそいつね。余裕があれば他のもぶっ潰してよし』

「ルカちゃ〜ん。俺はぁ〜?」

『青雉は…………適当に。どうせ、あたしの回りうろちょろすんでしょ』

「うろちょろって、ひどくない?」

背後に青雉がポケットに手を突っ込んで歩み寄る。

「わしゃぁ、お前なんぞに指示には従わんけぇのぉ……」

イライラとした様子の赤犬も現れる。

『勝手に暴れりゃいーじゃん。あ、でもティーチはあたしがぶっ飛ばすから手出さないでよね…』

ふんと鼻で笑う赤犬が黒ひげ海賊団を見上げる。

そして、ルカがクルクルと黒金を回して構える。



『……ティーチ。あんたの言ってたショーは楽しくなりそうね?覚悟しなさい?家族の不始末はあたしが清算してあげる。』



「ゼハハハハハ…。おめぇ、俺に勝てるつもりでいるのかぁ?覚悟決めんのはおめぇだ!ルカ!!!」





ここに、黒ひげ、ティーチとルカの最終決戦が幕を開けようとしている。

ティーチ率いる黒ひげ海賊団とルカ率いる海軍戦力。

白ひげ海賊団、そして、エースを逃がす事よりも、センゴクは全世界の平穏を破る確率の高い黒ひげ海賊団討伐を優先した事により、不服ながらもルカの提案に乗り、ここに異例の取引を交わしたのだった。

それを少しずつ離れていく羽の竜巻に守られながら見ているのは白ひげ海賊団とその傘下の海賊達。

ルカはティーチ達に手出しをさせないように、そして、今にも飛び出してきてしまいそうな家族を船へと止める為に技をいまだにとかずにいた。


「くそっ!!ルカーーー!!!」



そして、羽音をたててルカが舞い上がった瞬間。

戦闘が開始された





堕天使の思惑

(何があっても、あたしはこの闘い。負けるわけにはいかない。生きて、皆の説教聞かなきゃね…)

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