rode-31
「そうと決まったら早く行こうぜー!」
『ルフィ、少しは落ち着けよ…』
「……あれ?」
「?どうしたの?ウソップ?」
顔を青くして周囲を見回すウソップにその場にいた全員が視線を向ける。
「金が…金がねぇっ!」
「えっ!?お金がないってどういう事よっ!」
消えたお金を探すウソップとナミ。
それを視界に捉えたライはキョロキョロと視線をさまよわせてから、目的の物を捉えると声をあげた。
『あれだろ?』
指差した方へと視線を向けると怪しい奴等がブルに乗り込んでいるところだった。
「ありゃぁ、フランキー一家だな…」
『だっせぇ格好だな…正気か?あいつら…』
「お前が正気か!?金っ!3億盗られたんだぞ!もっと慌てろよ!」
少しずれた発言をしたライに盛大に突っ込んだウソップ。
と、フランキー一家が叫んだ。
「わりぃーな!金は貰っていくぜぇ!」
「あぁっ!てめぇら!ふざけんなよ!そりゃ俺達の金だ!返せよー!」
ルフィが叫びながら腕を伸ばすが届かない。
「こらっ!てめぇ!待ちやがれ!今日こそ金返してもらうぞ!」
「だー!しつけーなっ!お!」
水路の上の橋から突如響いた声に視線を向けるとスーツ姿の男達に追いかけられる男が一人。
「まぁーパウリーか…あいつ…なにしてんだ?」
「おそらく、また借金取りに追われているのかと…」
「たく、しょうがねぇ奴だな…」
アイスバーグの言葉の後に、パウリーと呼ばれた男は橋から飛び降り、フランキー一家の乗るブルに上手い事乗り込む。
「おぉ!ありがとなー!そのトランクの金、俺らのなんだ!こっち持ってきてくれー!」
「ん?金?…………………わぁ!」
トランクを目にするとそれまで険しい顔をしていたその男、パウリーは溢れんばかりの笑顔を見せると叫んだルフィを無視してその場を去ろうとする。
「あぁ!ちょっと待て!返せよー!!」
「あんにゃろ!逃げるつもりかよ!ライ連れてってくれ!」
『あいよ。キャプテン』
さすがに腹がたったのか、ルフィがライに指示を出し二人で走り出した瞬間止められた。
「俺がいくっぽー」
声の主に視線を向けたルフィは目を見開きながらそれを見守る。
ライも釘付けだった。
そして数分後。
パウリーを連れて戻ってきた男は、パウリーに怒鳴られていた。
「てめぇ!ルッチ!いてぇだろ!離せよ!耳!」
「悪かったっポー。身内の恥は俺らで片付けないといけないからなっポー。ほら、パウリー返すんだっポー」
「たく、いてぇな。おらよ。確かに返したぜ」
『…あぁ。』
「で、お礼は1割でいーぜ?」
ライの肩を掴みそう言ったパウリーを後ろから殴る。鳩を肩に乗せた男。
『(ガチだ…ガチで腹話術って…)』
「いってぇーな!こら、ルッチ!てめぇっ、いい加減にしろよ!?」
「いい加減にするのはお前だっポー。悪かったなぁ、こいつは金にがめつい。人の金で借金を返そうとするんじゃないっポー」
ライを始めとする全員がルッチと呼ばれた男…もとい鳩を凝視する。
ライは違う意味でだが。
「は、鳩が喋ったー!」
「あぁ、紹介が遅れて悪かったっポー。俺は…あぁ、こいつはルッチ。そして俺はハットリだっポー」
「あぁっ!今、この人さして俺って!もしかして、腹話術ねっ!」
「なんだと!?俺腹話術初めて見たぞ!すげぇなぁっ!!」
詰め寄るルフィとウソップにまぁまぁと手をかざすジェスチャーをするルッチ。
『……まさに変人…』
「だろう!なのに、あんの野郎ばかばか人の頭殴りやがって!こら!てめぇ、ルッチ!今日という今日は覚悟しやがれっ!ぶっとばしてやらぁっ!」
「おい、パウリー。やめねぇか…」
アイスバーグの仲裁虚しくパウリーはルッチに出した縄で攻撃をしかける。
「ロープアクション!"ボーラインノット"!!」
ルッチの片腕を縄で捕まえるとそのままルッチの体を振り上げ落とす。
「オシオキ一本釣りっ!!」
ドガァーン
大きな音をたて、周囲はルッチが落ちた衝撃であがった土埃が舞う。
土埃が晴れてくるとそこには指が地面にめり込んだ状態でパウリーを見据えるルッチの姿。
「ゆ、指がめりこんでんぞっ!?」
『すげぇなぁ…あれで、船大工ねぇ…』
その後、ルフィお得意のボケを見てからアイスバーグに案内されて造船所内へと足を踏み入れた。
「「うぉー!!すっげぇーー!」」
建設途中の大型船。
これから乗せられる大砲。
大きな設備の数々に目を奪われながらアイスバーグの後に続くルフィ達の後ろをポケットに手を突っ込んで後を追うライ。
アイスバーグに挨拶やチェックを頼む姿を見ながら、またも近づいてくるフランキー一家の気配を辿る。
『(来たか。ウソップにゃわりぃけど。これも変えちゃならない出来事だ。まぁ、ルフィ達の冒険は変える気ないけどな…)』
ウソップを見据えてから、心の中で謝罪する。
「へぇー!おっさん。すげぇんだなっ!なぁ、俺らの船の船大工になってくれよ!!」
「んなっ!なんと無礼なっ!」
「おい、こら!麦わらっ!!」
ルフィの発言に怒りを露にする秘書カリファとパウリー。
「んまぁー、俺は行けねぇが。誘って誰か行きてぇって奴がいたら、引き抜いても構わねぇぞ。まぁ、海賊船だ。そんな物好きいるか知らねぇがな」
「ほんとかっ!わかったぁ!」
「なぁ!おっさん!少し見てきていいか!?」
「あぁ、いいぞ」
アイスバーグの返事を聞くと一際大きな船の元へと腕を伸ばし飛んでいったルフィを見送ると
「俺も!俺もちょっと見てくる!」
そう言ったウソップにライが声をかけた。
『おい、ウソップ』
「ん?何だよ?ライ」
『いや、気を付けて…行けよ』
「?…あぁ、わかった」
不思議そうにしながら、頷くとウソップもその場を走って後にした。
「あんたは行かなくていいの?」
『あぁ。別にいい。それに、目キラキラさして俺が船見て回るとか…気持ち悪くねぇか…』
「確かに…想像つかないわ…」
ナミの隣に歩み寄ると、だろ?と見下ろして答える。
暫くすると、カクが帰ってきたのでナミがルフィを呼ぶ。
そこで告げられたのは
「随分とお主ら豪快な旅をしてきたようじゃな?」
「なんだ?カク、竜骨でもやられてたか?」
「もう、あの船は直せない。」
過酷な現実だった。
それを無言で見つめるライ。
「そんなはずねぇ!今日だって快適に航海してたんだ!」
「それでも、これが現実だ。金はあるんだろう?3億もあれば新しい船を作ってやることもできるし、中古の船もある」
そうアイスバーグが告げると
「船は乗り換えねぇ!」
悲痛な声をあげ、捲し立てるルフィに悲しげな瞳で見つめるライに届いたのはアイスバーグの声。
「沈むまで乗りゃ満足か?一船の船長が聞いて呆れる」
アイスバーグは言いたい事を伝えるとカタログを渡し、決めたら来いと言って話をきる。
「アイスバーグさん。ここにいたか」
そこに現れたのは何やら珍しい頭をした男。
「ルーか。どうした?」
「また政府の奴等がきてて、どうしますか?追い返します?」
「あぁ。いないと言ってくれ。っとゆうか、またすげぇ寝癖だな?ルー」
「そんな邪険にしないでくれよ。アイスバーグ君…」
現れた黒ずくめの集団にパウリーがすぐ隠れるように言う。
積んであった木材に隠れる3人。
「…………あれ?」
「どうしたのよ?ルフィ?」
「いや、軽いんだよ…」
そうトランクを指差したルフィにナミが1つ汗をたらして答える。
「軽いってそんなわけないじゃない。1つのトランクには1億も入ってるのよ!?」
顔を見合わせてトランクを開けると…2人は悲鳴をあげた。
それを隣で立って様子を見ていたライは両手で耳を塞ぐ。
すぐに現れたパウリーにうるせぇぞっ!と怒られるも、お金がないっ!とまた、騒ぐ。
『やっかましいなぁ…』
流れを覚えてるライは相変わらずのテンションで呟く。
それを聞いたナミがすかさずライの元に現れ、拳をふるう。
「あんたは!いつもいつも慌てず騒がず落ち着き払って!!お金がないのよっ!ついでウソップもいないのっ!少しは焦りなさいよっ!!」
あまりの痛さに踞っていたライは目尻に涙を浮かべながらナミを見上げる。
『んな事言ったって、いねぇし、ねぇもんは慌てたとこで戻っちゃこねぇだろが!少しは落ち着けってんだよ!バカ女がっ!』
「へぇー…ライ?覚悟はできてんでしょーね?」
『あ…やべぇ…。って、待て!ナミ!俺もつい言い過ぎた!ほら、落ち着け!今まさにその時だ!』
「うるさいわよ!あほんだらぁっ!!」
『ぎゃーーーーー!』
そんな二人を尻目にルーと呼ばれた男がカクに話しかける。
「ん?カク。お前、さっきフランキー一家といなかったか?」
「わしゃあ、今日はフランキー一家には会ってないぞ?何を言っておるんじゃ?」
「あれ?そうなのか?だが、あの鼻は確かにカクだと思ったんだが…」
ここでも、話を聞いていたナミが反応する。
「ちょーっと待った!その話詳しく聞かせて!」
「いいが、その兄ちゃんは大丈夫なのか?」
「大丈夫よ!殺したって死なないわよ!」
「あ、あぁ…」
「おーい?ライ大丈夫かあー?」
『なんとかな…』
「お前もバカだなぁー。ナミにあんな事言ったらこうなる事位わかってんだろ?」
『うるせっ!ついでちまったんだよ』
珍しくふてくされた様子で返すライにルフィが笑う。
と、ナミが声をあげた。
「それウソップじゃない!てゆーか、それ誘拐よっ!!ルフィ!」
消えたウソップと2億の行方
(とにかく、ウソップを探しましょう!)
(わかった!ウソップー!どぉーこぉーだぁぁぁー!!)
(て、ちょっとルフィ!あんた待ちなさいよ!)
(いっちまったな…)
(アイスバーグさん!フランキー一家の居場所わかる!?)
(居場所はわかんねぇが。アジトなら、お前らが船を止めた入り江の東にアジトがあるぞ?)
(わかったわ!ありがとうっ!)
……………………………………
(お前は行かなくていいのか?)
(え?あー、置いてかれたな…完璧…まぁ、俺ブルとかいらねぇし。じゃあな!世話になった!)
(って!飛んだっ!?)
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