travel-03



現在、赤髪海賊団の船レッドフォースの甲板で拡がる光景にルカは困惑していた。


『(宴ってさ。宴会だよね…?楽しくわいわいするはずだよね。海賊のは、呑めや唄えや踊れやみたいな?って想像してたんだけど…。ま、まぁね!その想像もあながち間違ってはなかったんだけど……これはちょっと……)』


乾いた笑みを零しルカが見渡す甲板には、シャンクスによって潰された若い船員達がゴロゴロと転がっていた。

さすがに幹部や、古株は平然としているのだが。


これはあんまりにも気の毒だ。と、見ていたルカまで具合が悪くなりそうな酒の香りが辺りを立ち篭める。

甲板に転がり眠る者、船縁にもたれ海へとおろろろろとなってる人、はたまた酒に飲まれてあほになってる人。
それを見たルカはげんなりとしながら思った。

『(お酒、あたしは嫌いじゃない。嫌いじゃないけど…お酒恐い…)』


この後、この人達どうするのだろうかと思いながら甲板を見回していたルカに背後から声が掛かる。
それに振り向けば、満面の笑みを浮かべる尋常じゃなく酒臭いシャンクスがいた。


「こいつらは放っておいていいぞっ!」

『いや、放っておくも何も…原因は貴方だよね…』

「呑まれるこいつらがわりぃ!!」


ドーンと言い放ったシャンクスにルカは、はぁと溜息を付くとベンの苦労を案じた。


『さいですか…』

「そんな事はさておき。もう休むか?」

『(…そんな事)あ、そうですね。お先に休ませてもらおうかな?』


夜も随分更けた様で、空にはキラキラと光る星と月が浮かんでいる。


「じゃあ、ベン。部屋案内してやってくれ」

「あぁ、わかった。ルカ着いてこい」


シャンクスの指示に従って腰を上げたベンが、ルカの隣を通りながら声を掛けてくる。


『はい。お願いします』

「ルカ、ゆっくり休め。」

『お先に。おやすみなさい』

「また明日な、おやすみ!」


シャンクスやヤソップ、ルーに他の船員達にも挨拶をして、ルカはベンと連れだって甲板を後にした。
廊下を歩きながらベンと話す。


『こんな簡単に得体も知れない女を招き入れていいんですか?』


兼ねてから気になっていた事をベンに聞く。
シャンクスに聞いたところで、俺が良いって言ってんだからいいんだよ!とか、適当な答えが返ってきそうだからだ。
隣を歩くベンは煙草に火を着けながら、チラリとルカを見やる。


「招き入れなかったら、お前どうするんだ?ログポースも船もない。無人島で野垂れ死ぬか?」

『んー。やりたい事あるし、それは嫌かな』

「そうだろ…。まぁ、お前が言わなくてもお頭が面白がって船に乗せるだろう事は皆わかってただろうな」

『そ、そうなんだ・・・』

「あぁ、それにルカは殺そうと思えば攻撃してた船員達を殺せたろう?それをしなかった時点で、俺らの信用に値する」


穏やかな声音で告げられた言葉に知らずルカは胸を撫で下ろす。
そうして、話をしながら進むとある部屋の前でベンは足を止めた。


「ここがお前の部屋だ。疲れただろうから、ゆっくり休むといい」

『あ。ありがとうございます。じゃあ、おやすみなさい』

ぺこりと頭を下げて礼を伝えると、ベンはルカの頭にポンと手を置くと、じゃあな。と言って背を向けて、ベンは甲板へ足を向け、去っていった。


『まだ呑むのか…あの人達は…。まぁいっか。さて、寝るかな…』


部屋の扉を開け入ると、シャワー室に洗面台、トイレまで完備の広めの部屋でルカは驚く。


『おぉぅ…いいのか、こんな好待遇…。まぁ…ありなのかな?ピースメインの海賊だもんねー?ありか。』


独り言を言いながら、楽な服に着替える為バックを漁る。
こっちにくる時、ダンディズムなオッサンに渡されたバックには当面困らない分のお金と着替えが入っていた。

食料が入ってなかったのは、御愛嬌とでも言ったところなのだろう。

Tシャツにショートパンツに着替え、お風呂は朝にしようとベッドに入る。

これから始まる日々に思いを馳せ、胸に光る武器を象ったネックレスを握りしめ、重くなるまぶたに従い眠りに落ちた。


綺麗な事ばかりじゃない
汚い事も全てこの目に焼き付け
進もう、あたしの道を…



(お、ベンおかえり)
(送り狼にはならなかったな)
(お頭じゃあるまいし、なるわけないだろ)
(なんだと!!?)




2014/03/18 加筆修正

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