アルバイトを始めてから、結構充実した毎日を送っていた。
わたしのシフト管理などはマルコ先輩がするようにとオヤジさんが任命してくれたみたい。一番しっかりしていてわたしの事情もよくわかってるからだそうだ。

でも、先輩は受験生なのに悪いななんて口にすると、それくらいで左右されるようなやつじゃねぇよとオヤジさんに笑われた。

いつもの仕事は広ーい建物内の掃除が多く、たまにステファンのお散歩など。
綺麗なお姉さん方に指導してもらいながら仕事覚えの真っ最中です。


今日は、長い廊下の掃除、隊長さんたちの部屋の前の廊下だ。自分が遊びに来ていたときはなんとも思わなかったけど、この広い廊下をいつでもピカピカに保ってるってかなりすごいことだと思う。

例のメイド服は無理に着なくても良いと言ってもらった。似合わないものを態々着るのもなと思い私物で掃除やら何やらさせてもらっている。
最近はモップを持つ姿も様になってきたな、なんて思った。

廊下の床をモップで磨いていると、すごい荷物を持った人がやって来た。
荷物が多すぎて顔が見えないんだけど、下に見えるズボンでサッチ先輩だとわかる。
わたしは慌てて近づいて声を掛けた。


「だ、大丈夫ですか!?前見えてます!?」
「おぉ、名前か、悪ィけどドア開けてくれるか」


サッチ先輩はぎこちない動作でポケットから鍵を取り出し、それをわたしに差し出した。
わたしはそれを受け取り、急いでドアを開けた。

のっそりと足場を確かめるように部屋へ入ったサッチ先輩は玄関にドサリ!と荷物を置くと助かったぜーッと息を吐き出した。


「名前ありがとなー」
「ど、どうしたんですかこの量…」
「いや…、商店街に買い物に行ったらよ、店のおばちゃん…つうか、ほぼおっさん達がサービスしてくれんだ。かなりベタベタ触られたけど…」


よく見てみるとサッチ先輩の顔や白い服の上に大量にあるキスマーク。
思わず顔が引き攣った。
いつも元気なサッチ先輩がこんなに疲れてるから相当な人たちなんだろうなぁ。


「料理の腕は最高なんだがなぁ」
「へ、ヘェ…」
「あ!!そんなことより!名前明後日から修学旅行じゃねぇか!?」
「はいっ、そうなんですよ!」


そう!明日はついに修学旅行ッ!!
待ちにまった魚人島へ行きます!


「明日は前日ってことで休みもらってます」
「そっかー、エースも名前も行っちまったら寂しくなるなぁ…」


うぅ…と泣きマネをするサッチ先輩に苦笑いを溢す。
ノリだってわかってるけど、そんな頑丈な身体して泣きマネなんてのがサッチ先輩らしい。


「三泊ですし、すぐ帰って来ますよ」
「おぅ、お土産頼むな!」
「はーい」









今日一日の仕事も終わったところであの部屋に戻り着替えを済ませた。
明後日から修学旅行で、その前後の日も休みにしてもらってるから、次に来るのは一週間くらい後になる。


「おつかれさまでした」
「おつかれさまっ」
「修学旅行楽しんできてね〜」
「はいっ」


お姉さん方に見送られ、部屋を出たところで、マルコ先輩が立っていて少し驚いた。


「どうかしました?」
「ちょっといいかよい」


少し小さめのマルコ先輩の声に不思議に思いつつも頷くと、マルコ先輩は歩き出して、わたしもその後を追った。

ついたのはマルコ先輩の部屋。中に通され、ソファに座ると先輩はわたしの隣に座った。


「明後日から修学旅行だろい?もう会えねェからこれ渡したくてよい、オヤジからだ」


不思議に思いつつも、マルコ先輩のポケットから出てきた茶封筒を受け取り、中身を確認してみた。


「えぇっ!?」


わたしは慌てて中身をしまって、封筒を突き返した。


「受け取れません!」


だって…、中身はお金だったから。それに、ガイコツユキチさんが10人も…!!これは何かの間違いだ。だけど、突き返した封筒はマルコ先輩に簡単に押し返された。


「今月分の給料だよい、あとオヤジからの小遣いだ」
「でも…」


先輩は茶封筒をわたしの額に貼り付けるようにするとスッと手を離した。すると当然のように封筒は手の中に落ちてくる。


「修学旅行楽しんでこいってことだろい、ありがたく貰っとけ」
「……はいっ」


かなり渋々頷いたけど、マルコ先輩はそんなわたしにもニコッと微笑んでくれた。


「今日はオヤジんとこ客が来てるからよい、また帰ってから土産話と一緒に礼も言ってやれよい」


その言葉に大きく頷けばマルコ先輩の手が伸びて来て頭を撫でつけられた。
そしてそのまま、先輩の方に頭を倒される。


「4日も会えないんだねい」


感慨深げに言う先輩にちょっと笑いつつ、寂しいですか?なんて言ってみると、あぁ。と意外な返事をされた。
よくわからないけど、マルコ先輩らしくないっていうか。
わたしも何と答えればいいのかわからず、4日なんてすぐですよ。なんて微妙な返答をしてしまった。
しかし、マルコ先輩はフッと笑うと、また軽く頭を撫でた。


「あ」
「ん?どうかしました?」
「お土産頼むな」
「はいはいわかってます、サッチ先輩も同じこと言ってましたよ」


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