朝、教室に入ると、エースがすごい勢いで飛びついて来た。
「名前!昨日はほんとに悪かった!!」
「…え?」
そんなエースを見て、なんだっけ?と首を傾げたわたしに、エースは、は?と何言ってんだこいつみたいな目を向けてくる。
「いやおれのせいで資料室の掃除…」
「…あ!忘れてた!」
「忘れてたぁ!?」
何しに行ったんだよ!とエースは言ってくるけど、説明は面倒だからいろいろあったの。とだけ言っておいた。
それよりも、またいかなきゃダメかなぁ…。
またあの場所に行くなんて気まずいったらないよ。
ちょうどその時、教室に入って来た我が担任。
いつものように頭にアイマスクを付け、はーい、席座って〜とか言いながら自分が一番に座った。
…うん、多分忘れてるよね。
うちの担任は絶対に思い出さない。そう信じて昨日のことはなかったことにした。
「今日はー、うわ、決め事だらけじゃん。修学旅行に…文化祭もね」
椅子の背もたれに踏ん反りかえり、持ってきたプリントをペラペラと見て怠そうに言った。
「お前ら文化祭何やりたい?」
めんどくせーのはやめとけよ。そう付け足した青雉にはいはい。とみんなが頷いた。
文化祭の出し物は各クラス一つ。
食品模擬店でも展示でも舞台で演劇でもなんでも良い。
ちなみに1年のときのわたしのクラスは舞台で演劇をやった。クラスに演劇部の子がいたからかなり気合が入ってたんだけど、主役に抜擢されたエースが台詞を覚えられなくて、やる気ないんでしょ!わたしたちは一生懸命やってるのに!エースくんひどい!!と演劇部の子が泣き崩れ(演技かもしれないけど…)結局主役を降ろされたのだ。
そしてエースは大道具役で大活躍。その舞台は成功に終わった。
でも…、もう演劇はいいかな。わたしも道具作ったけど、結構大変だっし、もっと緩く楽しめるものがいいなぁ。
そんな風に考えていると、目の前にいたエースが素早く手を挙げた。
「肉屋がいいー!!」
はぁ。と何人かがため息をついた。
「肉屋って…、せめて加工しろよ」
青キジの的確な指摘にちょっとびっくり。というか、高校生が精肉売るなんて絶対だめでしょ…。
「店するなら、店番がいるだろ?そうなると、お前が他の店を回る時間が短くなる」
「それはやだッ!」
「なら肉屋はなしだな」
青キジはやけに真剣に言ってるけど、準備が面倒なだけだねきっと。
「なら、展示で良いんじゃない?」
そこで手も挙げずに口に出したのがみんなのリーダーノジコさん。それに青キジも、それが1番早いかなー。なんて言ってる。
「成功も失敗もない、つまり責任がない」
「サイテーな教師ね」
「でも、なんの展示すんの?」
面倒なのやだよと付け足した青キジ。わかったから。
しかし、みんな体育祭程やる気がないのかなかなか案がでない。
「写真は?委員長撮ってたでしょ?」
「えっ?あ、うん」
委員長、突然振られて驚いたみたいだけど、まだ現像してねぇんだ。と返した。
「現像は修学旅行終わってからでいいわ。あたしが言いたいのは、このクラスの写真の展示でいいじゃないってことよ」
みんな、おぉ。なんて声をあげた。
まぁ…、その写真、誰が見たいんだって話だけど、それが1番楽かもしれない。それにクラスが楽しければいいよね。
「よし、じゃあ文化祭はクラスの写真展示でいいね」
続いて修学旅行の観光地決め。
別に現地で決めても良いんだけど、時間がもったいないしってことで一応設けられたのがこの時間。
「やっぱクリミナル本店行くよね!」
「うん!それから竜宮城も行ってみたい!」
「あそこは王族しか入れないでしょ」
「そうなの!?」
わたし達魚人島組女子はかなり盛り上がっていた。またケイミーに連絡しないとなぁ。
もちろん、男子組も盛り上がってるみたいだけど…
「やっぱマーメイドカフェだよなぁ!」
「ばっか!入江のほうがいいだろ!」
「変態…」
エースはというと、グループから離れて一人机で爆睡中。
オヤジさん達と何度も行ってるからどこでもいいらしく、皆に任せるんだって。
「ぐぉー!ぐがぁぁぁ!!」
にしても、もうちょっと静かに寝てくれないかな…。
「ぐぉーーー」
担任もか……。
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