本日の日付は8月31日です。


「やばいやばいやばい!宿題!終ってない!」


あー、なんかデジャヴ……。
やっぱりこうなるのかわたしの長期休み。

でもま、夏休み前半に少し手付けてたからいつも程ではないけど。

とりあえず、最初の授業に提出のものは後回し!
始業式の日に提出の問題集をなんとしても終わらせなければ!


「あー、こんなことならロビンに借りておけば良かった…」


って!ダメだよわたし!!自力でやんなきゃ!
宿題に追われているといつも弱い自分が顔を出す。


ピーンポーン


その時、家のインターホンが鳴った。いつもよりも陽気に聞こえたのは気のせいではないはず。

下で母の「はーい」という声が聞こえたけれど…。

あれ…?なんだかとっても嫌な予感。


「名前ー!エースくんが来たわよ〜!」


やばい


「い、いないって言って〜!」

「おい!聞こえてるぞ!」


エースの声が聞こえて冷汗がだらり。
ただでさえ間に合うかわからないのにエースがきたら邪魔されかねない。
階段を上る足音が聞こえてわたしのなかで警報が鳴り響いた。

わたしは急いでドアの前に立ち全体重をかけて押した。
そこに反対側からドアを開けようとエースが押して来る。


「あれっ?おい名前!開けろ!」
「いやだ!!」


今日は帰ってくれ…宿題の邪魔をしないでくれぇー!


「今日はむり!わたし宿題しなきゃ!」
「おれも宿題するんだよ!一緒にしようぜ!」


やばい、全体重を掛けてるのにドアがギギギ…と音を立てて開き始めてる。
どんだけ馬鹿力なのこいつ…。
焦って更にグッと体重を掛けると、少し閉じた。


「エースはしにきたんじゃなくて、写しに来たんでしょ!」
「そうだ!」


なんてやつだ!ドア越しにでもエースがドヤ顔を決めてるのが分かる……。


「だから、あけろー!」


バンッ!


「ぎゃっ!」


エースが力の限り押したせいで、ドアは開きわたしは後ろへ転び尻もちをついた。
そんなわたしを見下ろして、ドヤ顔を決めたエース


「へっへーん」
「もう……」












「ハァ……」


なかなか進まないなぁ…。


「ぐぉーっ」


隣ではペンを持ったまま夢の世界へ旅しているエースがいて、そんな状況で集中しろという方が無理である。


「ちょっとエース!」


肩を揺らして起こせば「んおっ!?」と変な声を上げ、寝てた。とか言いながらボリボリ頭を掻いた。
それから大きな欠伸をして、わたしの問題集を覗き、自分のへと書き写していく。

なんだろう、すっごく損してる気がする…。


「ハァ…」
「ため息ばっかだな」


誰のせいだよ!


「ため息ばっかしてると結婚出来なくなるぜ」
「は?」


なんじゃそりゃ!
そりゃ、幸せ逃げるって言うけど!
あ、でも女の幸せって結婚っていうね…
だったらあながち間違ってないかも…?
って!何呑気に話してんの宿題宿題!!


「あっそうだ!」
「今度はなに…」


ほんと、寝るか喋るかしかしてないじゃん!わたしは宿題頑張ってるのに!!


「ルフィとサボと海行ってきたんだ!」
「へぇー…」


そういえばそんなこと言ってたな、エースのス……、ストライカー?で海を走るって。
そういえば夏休み終っちゃうけどわたし、連絡来なかったぞ…?


「あれ、やっぱ三人乗り出来ねェわ、死ぬ」
「一人用でしょ?そりゃあ危ないよ」
「いけると思ったんだけどなァ〜」


ペンを口の上に乗せ、手を後ろについたエース。


「どうなったの…?」


聞くの怖いけど…一応。


「走り始めは良かったんだけどな、転覆した」


詳しく聞けば、ルフィくんが調子に乗ってエースに抱きついた瞬間バランスが崩れストライカーがひっくり返ったそう…。その後、泳げないエースとルフィくんをサボが一人で救出してくれたらしい…。
サボ、ご苦労様です。


「サボだっから良かったけど、名前じゃおれら助けらんねェだろ?」
「うん、わたしに助けを求めないで」
「だから、三人で行くのはやめよう。二人で行こうぜ!」
「えー!」

わたしがあからさまに嫌な顔をすればなんでだよー!とエースは口を尖らせた。


「だって怖いもん」
「大丈夫だっておれがいるし!」


泳げないやつがなに言ってんの。















お、重い……。


「ぐごぉーー!!!ぐごぉっ!!」


散々話したあと、エースはわたしの肩を枕にまた深い眠りについていた。

起きたら起きたでうるさい、気にしないようにしてたけど。
徐々にわたしの肩への重み増えてません!?


「んー…、ルフィー……」
「うわっ」


急に腰に回ってきたエースの腕。
これ、わたしのこと完全にルフィくんと勘違いしてる。というか、エース、いつもルフィくんにこんななの…?
……これは見なかったことにしてやろう。


「ちょっとエース…」


エースの腕を解こうとすれば更に強まる締めつけにハァ、と溜息をついた。


「名前ー……」


今度はわたしの名前を言った。一体なんの夢見てんだか…。


「ふふ、まぁ…いっか」


エースの髪が肩に当たって少しくすぐったいけど、幸せそうだし。いいや。

宿題を再開することにした。


「もう少しだ…」


その時、階段から聞こえてくる足音、きっと母がジュースでも持ってきてくれたんだろう。
だけど…、この状況やばくない!!?

急いでエースの腕を解こうとするけどなかなか外れない、寝てるのになんで!?


「んー!はっ、離してー!!」
「逃がすか…………」
「は?」


今度は寝ぼけたエースがわたしに飛び掛かって来た。にくゥーーーーーー!!!と叫びながら。


「ぎゃー!!食べられるー!」


ドサッ


「ぐぅー」


座っていたし、何より腰をガッチリ掴まれていたわたしは、逃げることなんて出来ず、そのまま押し倒されるかたちに…、しかもそのままエースは眠ってしまった。

ガチャ


「名前ッ!」


ドアが開き見れば、ハッと手を口に当てて驚いている母の姿。


「た、食べられるって…あんた…!」
「はっ?えっ?」


わたしがエースの重みで身動きが取れないでいると、母は顔を笑顔に変え、うふふ。と笑った。


「やぁね!もう!最近の子は〜!親がいても気にしないのね〜!あたし邪魔かしら?うふふ、ごゆっくり〜」


と、またドアを閉め行ってしまった。

残されたわたしはしばらく呆然と扉を見つめていた。


も、ものすごい勘違いをさせてしまった…。
ていうか今の反応、親としてどうなの…。


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