「んんっ……、ふあーー」


目が覚め時計を確認すると丁度お昼過ぎ、昨日の夜遅くに帰宅して、家族3人とも疲れてすぐに眠ってしまった。
かなりの時間眠っていたものだから、もの凄く頭がスッキリしている。

するとなぜか、無性に出かけたい衝動に陥る。


何か用事なかったかなぁ。と自分の部屋を見回すとW7で買ったお土産の袋が目に入った。

そうだ!お土産渡しに行こう!

そうと決まれば…


わたしはルンルンで着替えを済ませお土産の袋を持ち外へ出た。


「気持ちいいー!」


太陽の光ってこんなに気持ちよかったっけ?今なら植物の気持ちがよく分かる気がする。大きな伸びをしたあと、よしっ!と気合を入れて歩き出す。
目指すはモビーディックハウス!あそこなら誰かしらいるだろうという勝手な判断だけど。





大きな門の前に着きボタンの前に立つ。

前にサッチ先輩に教えてもらった通り呼び出しのボタンを押し…
迷わず001と押した。


エースはここにいるのか怪しいし、サッチ先輩は……番号を忘れたのだ。

ピーンポーンという音の後、すぐにはい。と言う声が聞こえた。


「あ、マルコ先輩!名前です!」
「名前!?ちょっと待ってろい!」


マイクに向かって笑顔で言うと、マルコ先輩は驚いたように声を上げて、ガチャと受話器が置かれた。

するとすぐに、ゴゴゴゴーッと門が開き始めたので、失礼しまーす。と言ったあと、わたしはその門をくぐった。
門からながーい距離を歩き入口へ到着すると、マルコ先輩がとても慌てた様子で出てきた。


「名前、なんで、明日までW7じゃなかったのかよい?」
「帰るの早まっちゃったんです、だから白ひげのみんなにお土産持って来ました」


紙袋を上に上げて見せるとマルコ先輩はなるほど、と納得したように微笑んだ。


「じゃあオヤジんとこ行くかよい」
「はいっ」


中にいれてもらい、先輩についていくと、今まで上ったことがなかったエントランスにある大きな階段をマルコ先輩は上り始めた。途中でカーブしているので、その階段の終わりが見えない…。
すると、そのカーブから見慣れたリーゼントが姿を現せた。


「お、名前じゃん!」


上からサッチ先輩が下りてきたのだ。サッチ先輩はわたし達の側に来るとニコニコと話し始めた。


「ちょうど今オヤジと名前の話してたんだよー!ほら、バイトの件!………あれ?W7は?」


遅くないっ!?

苦笑いが出そうになったが、マルコ先輩にしたように同じ説明をすると理解してくれたサッチ先輩、それにわたしがオヤジさんにお土産を渡しに行くことを聞くと、おれも行くー!と再び階段を上っていってしまった。
それに続き、わたしとマルコ先輩も止まっていた足を進める。


「バイトってなんだよい?」
「えっ?あー…」


エースに押されてオヤジさんに相談することになったバイトの件。
そういえばマルコ先輩には話してなかったなぁ。


「……ということでオヤジさんに相談することになったんです」


経緯を説明するとマルコ先輩はなるほどなと呟いた。


「そんな事ならおれに相談してくれれば良かったのによい」
「えっ、あ、すいません、急だったもので…」


謝るとマルコ先輩はわたしの頭にポンと手を乗せて笑った。


「ま、オヤジなら安心だ、ちゃんと良いとこ紹介してくれ…「おーい!何やってんだ!早く来いよ!」
チッ」


階段の上のからサッチ先輩の叫び声にマルコ先輩は舌打ちをしていたけど、わたしが行きましょう!!と言えばあぁ。と頷いてれた。




「こ…ここの、階段キツ…」


一体何段あったんだと思うほど、でわたしの息は乱れに乱れていた。
ふと、横のマルコ先輩を見てみるけれど息一つ乱していないみたいで、改めてすごさを感じさせられた。






サッチ先輩とマルコ先輩に続いてオヤジさんの部屋と思しき部屋に入った。
初めて入る空間に緊張し、マルコ先輩の服を掴みながらキョロキョロと見渡すけれど、大きなお部屋という以外なにも変わったところはない。


「グラララ…なんだサッチ?戻ってきたのか?」


部屋の奥の大きな大きなベッドにオヤジさんはいた。



「オヤジ!それがよ、ちょうど名前と会ってな!連れて来た!」
「お前がいなくても来るつもりだったよい」


マルコ先輩の鋭いツッコミが入るが、わたしがお久しぶりです!と言えばオヤジさんも笑って久しぶりだなと言ってくれた。

もう一ヶ月以上も会ってなかったんだと今更思った。


「W7に行ってきたので、お土産持ってきました」


わたしが差し出した紙袋をひょいと取るとオヤジさんは中身を見た。


「水水肉か、こりゃいいもんを貰った、ありがとよ、グラララ」


白ひげみんなで食べるには明らかに数は足りてないだろうけど、オヤジさんは笑ってくれた。
さすがに1600人分は用意出来ないよ……、あはは。

とそこで、サッチ先輩がオヤジ!ほらバイトの話!と割って入った。


「グラララ…そうだったな…」


何故かわたしより嬉しそうにしているサッチ先輩を不思議に思いながらも、オヤジさんと目を合わせると、すぐに名前の職場が決まったと言われた。


「決まった……!?」


相談しにきたのに、もう決定事項なんだ…。


「名前をどこで働かせるんだよい?」


マルコ先輩も純粋に疑問なようで首を傾げている。
わたしもオヤジさんと目を合わせゴクリと唾を飲み込んだ。


「ここだ」



……。



「 え? 」「 は? 」



ここって…?



「だーかーらぁ!こーこ!モビー!」


サッチ先輩が一発で理解しろよ的な顔で見てくる。


「考えたんだがな、女に力仕事は向かねェし…」
「それはそうですけど…」


紹介してくれるにしても飲食店だとか思ってたのに、まさかのここ…?


「あの……、ここって、どういう…」
「傘下のやつらの手伝いにいってもらう場合もあるが、基本はうちで雑用をしてもらう。安心しろ給料はちゃんと渡すぞ、グラララ…」


雑用か…なら大丈夫そう。
掃除とかなら全然家でもやってるし!!
家事もまぁまぁ出来る!…ハズ

少しやる気を出したわたしは小さくガッツポーズを決めていた。
が…


「名前…、やめとけよい」
「え…?」
「おいマルコ!何言ってんだお前ェ!」


思わぬ人から反対が出た。
顔を上げるとマルコ先輩が難しい顔をしていて、わたしは首を傾げた。


「…なんでですか?」

わたしがここで働くの嫌なのかな…。
不安げな表情を浮かべるわたしをみて、マルコ先輩は一度ため息を吐くと口を開いた。


「あのな名前、別にここで働かれるのが嫌なワケじゃねェ。ただ、この家にいる女の格好思い出してみろい」
「……あ」


確かに…言われてみれば…。

このモビーディックハウスに来ると意外とたくさんの女の人を見かける。

ひとつはオヤジさんの看病をしているナースさんと、それと、よく掃除などをしているメイドさん。
そりゃもう、ボンキュッボンで、女のあたしが見てても赤面しちゃうくらいの美人さんばかり…。
いつもはスタイル抜群だなァとか思ってたけど、ここで雑用ってことはわたしもあれを着なきゃいけないのか…。

メイド服…しかも!!

超ミニスカートに豹柄のニーハイブーツ!


わたし、絶対無理だ…!!


チラとオヤジさんの隣でカルテをチェックするナースさんを見てみれば……、

やっぱり美人で、スタイル抜群で、黙々と仕事をしている。


わたし、絶対無理だ…!!


何度も言うけど


わたし、絶対無理だ…!!


「名前!?大丈夫かよい?」
「だ、大丈夫じゃないです!無理です!」


あまりのショックで硬直してたよ…。


「良いじゃん!名前のメイド服!なんだかんだ言って、マルコだって見たいんじゃねェのー?」
「なっ!んなわけねェだろい!」


サッチ先輩のテンションの高い理由はこれか…。

ようはわたしにメイド服着せたいワケだ…。
そして他の美人さん達と比べて笑うつもりなんだぁ…!!


「サッチ先輩嫌いです…」
「なっ!えっ?なっ、なんでだよ!?」
「どうせわたしは似合いませんよーだ!」
「うっ?おれなんか言った!?」







「あのー、一応着替えました…けど…」


サッチ先輩が試着だけでも!と言うので
ほぼ強制的に着させられた、メイド服。


「だぁー!なんでスカート長いんだよ!」
「これは元々こういうものなんです!」


試着室へと案内してくれたメイドさんに聞けば皆さん自分の好みでスカートを切ってるらしいじゃないか!元はちゃんと膝丈だったのよ!

なんでだよー!と拗ねているサッチ先輩は無視して、置かれた鏡に自分を映して見る…。

あぁ…やっぱ似合わない…


「グラララ…似合ってるじゃねェか…」
「お世辞どうもです…」

「……」


マルコ先輩はずっと無言、やっぱり似合ってないんだよー。
あまりにもダサすぎてフォローできないんだよ!!


「あぁー!!スカートが長いのは気に食わねェけど、可愛いぜ名前!」
「ど…どうも…わたしもう着替えます……うぇっ!?」


さっさと着替えようと扉を目指した時、急に掴まれた腕にびっくりして変な声が出てしまった。
振り返って見れば少し頬を赤くしたマルコ先輩。

なんだかマルコ先輩らしくない。


「どうかしましたか…?」


正直、早く腕を離してほしい。
こんな格好、早く脱ぎたいのに。
そのとき先輩がボソッとつぶやいた。


「その……に、似合ってる…よい……」


目を合わせずにただそれだけ言ったマルコ先輩。
だんだん声が小さくなっていってたけど、嬉しい…

なんだかわたしも照れ臭くなってきて顔を下げた。


「あ、ありがとうございますっ…」








「その……に、似合ってる…よい……」


マルコの顔が赤ェ。

うげー!
マルコが頬染めても誰も嬉しかねェよ!

かの1番隊隊長様があんなゆるゆるに顔を緩めるなんて、なっさけねぇぜ…。
しかし、マルコにあんなだらしない顔をさせられるのは名前だけだなー、2人して赤くなっちゃってー。

名前は可愛いけど、マルコのはマジで需要ないぜ。
いや、あいつ結構モテたな…。

なーんでマルコとエースはモテんのにおれモテねェんだろ、同じ白ひげの隊長なのに。
あれか、もしかして数字か?4より1とか2の方が良いからか!?
いやでも、イゾウもモテるよな…。

おれがそんなくだらねぇことを考えていると、オヤジの部屋の扉が大きな音を立てて開かれた。


「オヤジー!!」


そして入ってきたのはまさかの末っ子。


「えっ!?うわっ!」


エースの登場に驚き、慌ててマルコの後ろに隠れた名前をエースが見つけないはずもなく。


「名前?なんで?」


一瞬ポカンとしたエースがマルコの後ろに隠れた名前を見ようとするが、名前はマルコの腰をガッチリ掴み盾にしてる。


「来ないでー!恥ずかしい!!」


顔を真っ赤にして恥ずかしがってる名前
いやー、可愛いな!


「なんでだよ!マルコ、ちょっとどいてくれ」
「ダメだよい」
「なんでだ?」


マルコもメイド名前をエースに見せまいと必死で背中で隠してる。
名前、これからここで働くんだから、隠しても後で全員に見られるだろ…。
目の前で繰り広げられる攻防を、オヤジは目を細めて見ていた。


「マルコのためにも名前にはここで働いてもらわねェとなァ、グラララ…」
「オヤジ、エースもだぜ?」
「そうか…どちらにせよ名前はいつかはおれの娘か…」


嬉しそうに酒を飲んだ。

いやいや気早ェよオヤジィ!


[ 75/108 ]

[*prev] [next#]

もくじ



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -