本日はガレーラにたくさんの人達が集まって食事会を開催するらしい。まぁ、大人達は飲んで騒いでするんだろうけど…。

大部屋へ着くと凄いご馳走が用意されていた。


「うわぁ〜!」
「ンマー、こりゃうまそうだ」


どれもこれもW7名物ばかり!
じゅるりと溢れた涎を飲み込んだ。


「お父さんとお母さんは…?」
「そろそろ迎えをやるかカリファ「手配済みです。」ンマー!さすがだな」


お見事!カリファさん!

しかし、お母さん達が来るまでこのお料理達を見てるだけってのは…辛いなぁ。


「そうだ名前にも紹介しねェとな、カリファ呼んで来てくれ」
「もう来ています」
「ンマー!さすがだな」


カリファさんが呼びかけると扉が開いてパウリーと数人の職人さん達が入って来た。


「パウリー久しぶり!」
「なっ!お前…また、んなハレンチな…!!スカートが短すぎる…!!」


頬を真っ赤に染めて注意してくるのはいつものこと。それに、膝のちょっと上くらいでそんなに短くないし!

そう言い返そうとしたとき、パウリーの後ろにいた人と目が合い思わず固まってしまった。

「……!」
「お前は…」


やっぱりかぁ。バイトの1人がカリファさんの時点で薄々気付いてたけど…。


「ルッチ…さん…」
「ンマー!名前、ルッチとも知り合いだったのか」


凄い偶然だな!と笑っているアイスバーグさん。そんな楽しい関係じゃないんだよ!!

少し気まずくなりつつお互い目を反らせないでいると、その横にいた鼻の長い方が前に出てきた。


「わしはカクじゃ、よろしくのう、名前」


と手を差し出されたので、あわてて握り返す。


「よ、よろしくお願いします」


そう言うとカクさんは微笑み、そのままグイッと手を引っ張って、わたしの耳元に口を近付けた。


「あの時の事はルッチも気にしておったわい、まさか記事になるとは思うとらんかったがのぅ…グォッ!」


急に変な声を上げたカクさんは首の辺りを抑えながら唸っている、どうやらルッチさんがカクさんの首を殴ったようだった。


「余計な事を言うな」


ルッチさんの眼光は鋭くわたしまでビクッとなってしまったけど、ルッチさんはこちらを見るとと表情を変えた。


「あの時はおれの不注意だ、すまなかった」
「あっ!いえ!こちらこそ!寧ろ助けて下さってありがとうございました!」


急に謝るものだからわたしも手を振り慌てて謝罪する。すると、パンッとアイスバーグさんが手を叩いた。


「ンマー、そろそろ終わりにしろ、食事会が始まるぞ」


その言葉に周りを見ると、すでにたくさんの人達が集まっていて、そのほとんどが職人さん。

みんな素晴らしく鍛え上げられた肉体だなと見惚れていると、部屋の扉が開き、両親とおじいちゃん、おばあちゃんがやって来た。


「名前!」
「良かった、無事来られたのね」


母はわたしの所へ駆けてくると、ギュゥゥッと苦しいくらいに抱きしめてくれた。


「成長したわね…!!」


いや、あの…、はじめてのおつかいですか…?

なんでお母さんこんなに感動してるの…。
お父さんもお母さんの肩に手を置いてうんうん、頷いてるし…。

周りの職人さん達はパチパチと手を叩きはじめた。


ナニコレ…感動の再会…?


「うおぉぉぉ!イイじゃねェか!家族の絆!けど、泣いてねェぞ!」
「「泣いてないわいな!」」


フランキー、その目から出ているものは何ですか。

何故か部屋中が感動ムードに包まれてしまっているが…。


「ンマー、もうそろそろ始めるぞ〜」


と、アイスバーグさんの一言であっという間に終了。やっばりアイスバーグさんは最強だ。

始まるとすぐにお母さんもお父さんも飲んで食べて大騒ぎ。おじいちゃんもおばあちゃんも大人しそうに見えて酒豪なんだよなぁ。
飲めないわたしは完全に放置。

さっきの感動の再会はなんだったの…。

アイスバーグさんやパウリーは大勢に囲まれていてかなり目立っているけど。その中でも一際目立っているのが…


「アーウ!スゥゥパァァァ!」


ステージ上でポーズを決めているフランキー。
相変わらず、海パン一丁なのは昔からだからもう見慣れてしまった。

変態って言うと喜ぶから本人の前では言わないけど、本当に変態。
まぁ、サッチ先輩の次にリーゼントが似合う人だとは思うよ。


ルッチさんとカクさんも結構な人達に囲まれている、アイスバーグさん曰く期待の新人なんだって。

ジュースを飲みながら、出席者を見渡す。
お母さんは職人さん相手に飲み比べ始めちゃってるし、お父さんはそれを止めてる。

あ、おばあちゃん、職人さんに勝っちゃってるよ。

フランキーの髪型が変わってる、あれはコーラの変わりにトマトジュース入れたのかなぁ。


「みんな楽しそう…」


しみじみ、そんな風に独り言を発した。


「おぬしはどうなんじゃ?」

「わっ!?」


急に後ろからかけられた声に驚いて振り返るとカクさんがいた。


「カクさん…!」


あれ?さっきまで職人さん達に囲まれてたのに、抜けてきたのかな。カクさんはフッと笑うと空になったわたしのコップにジュースを注いでくれた。


「あっ、ありがとうございます」


お礼を言うとカクさんは口を開いた。


「あんたは、楽しくないのか?」


カクさんの質問に少し驚きながらも、微笑みながら首を振り否定する。


「楽しくないことはないんですけど…もう少し同年代の子がいたらなぁ…って」


アイスバーグさんもフランキーも仲良しで大好きだけど、みんなお酒入っちゃうと、近づきにくいし。
今だって大人達はドンチャン騒ぎ。
それを見てわたしはため息を吐いた。


「わしは同年代じゃろ」


カクさんの言葉に反応して顔を上げると、笑顔のカクさんと目が合った。


「わしの事はカクでいい、同い年なんじゃ、敬語もいらん」
「でも…」
「何を遠慮しとる、友達になろうと言うとるんじゃ」


よく考えれば友達になろうなんて言われたのは初めてかもしれない。いつもは、知らない内に仲良くなって、お互い友達と呼べる存在になっていた。

たまにはこういうのもいいのかもしれない。

そう思うと、カクさんが言ってくれた言葉がなんだか嬉しくてわたしも笑顔を返した。


「よろしくお願いします」
「敬語はいいと言うとるじゃろうが」
「あ…」


生徒会に入ってる人だし、どこかとっつきにくい雰囲気だったけど、話してみれば全然そんなことなくて、普通に会話できた。

カクで良いって言われたけどやっぱり呼びづらくて、“さん”付けはやめられなかった。


大人達のドンチャン騒ぎを端のテーブルから見ながら話すわたしとカクさん。わたしたちの方が大人なんじゃないだろうか。


「名前は彼氏はおるのか?」
「はい!?い、いません!」


突然の質問に驚くと、ニヤリと笑ったカクさんが顔を近づけて来た。


「なら、ファーストキスを奪った責任として、ルッチなんてどうじゃ?」


…ん?


今カクさんの口から衝撃的な言葉が…


「ファーストキス…?」


わたしがそう呟くとカクさんは更に顔をニヤニヤとさせた。

「言っとらんかったがの、実は…あれがルッチのファーストキスだったんじゃ」
「えぇーーっ!?ル、ルッチさんも!?」


うっそー!まさか…2人ともファーストキスだったなんて!

ルッチさん、あんなにもモテてるから彼女くらいいたことあるでしょうに…。


「“も”と言う事はおぬしもか」


カクさんはとても面白そうに笑っている。


「やはりあんたら付き合ったらどうじゃ」
「なっ!?む、むむ、無理ですよ!」


何を言い出すんだこの人。ルッチさんとは数回しか話した事ないし、何も知らないし。


「ならわしなんてどうじゃ?」
「なんでそうなるの!」


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