こう見るとエースの家って結構立派だなぁ…。ガープ先生が校長先生だからかな。目の前にある立派な一軒家を見上げてそんなことを思った。

普段、こんなに立派なお家に男3人で暮らしているといっていたけど、テレビなんかで特集されている大家族でも悠々と暮らせそうなくらい立派だ。

少し緊張しながらインターホンを押した。

ピンポーン


ドタッ!ダダダダダダッ!


ガチャ!


「名前ーーーッ!!」
「わぁっ!」


激しい足音の後、凄い勢いでドアが開いたかと思うと、これまた凄い勢いで飛び出てきたのはルフィくん。彼は満面の笑みを浮かべてわたしに飛びついて来た。


「久しぶりだなぁ〜!」


そしてわたしの肩口に顔を埋めて、スンスンと鼻をきかせる。


「名前は良い匂いだなぁ」
「そ、そうかな?」


でもルフィくんの良い匂いって肉の匂い…?ってあれ、これ前にもあった気がする。
そんな時、ルフィくんを追いかけてきたらしいエースが出てきてバコンとルフィくんに拳骨を食らわせた。


「ルフィ!名前に飛び付くなってあれほど言ったろうが!」
「痛ェー!だって久しぶりだったんだもんよ!」
「お前、前に名前のこと殺しかけただろ!」


やっぱり、前にもあったなと目の前の兄弟を見て思い出す。あの時は怒られているルフィくんがかわいそうになってわたしがエースを止めたんだった。


「エースもう…」
「その辺にしといてやれよエース、ルフィも嬉しかったんだろ」


今回もわたしがエースを止めようと言葉を発しかけたところで後ろから懐かしい声が聞こえた。

ピタリと一旦止まって振り返る。

特徴的な金色の髪にまん丸な目、それに何よりその優しげな笑顔。


「サボ…?」
「久しぶりだなぁ、名前」
「うそ!サボッ!!」


今度はわたしがサボに飛び付いた。突然のことでもサボは難なく受け止めてくれて元気だったかと笑ってくれた。


「サボ髪伸ばしたんだね!一瞬わかんなかったよ!」
「あぁ、ちょっと伸ばしてみようと思ってな」
「そうなんだ!似合ってる!」


髪を摘んで見せるサボに笑かければ彼も笑顔を返してくれた。


「おいサボ…、良い加減に離れろ」
「これ完全におれが飛びつかれてるじゃねぇか」
「名前ー!おれもー!」
「あ、こらルフィ!」


わたしをサンドするようにルフィくんが飛びつき、それを引き剥がそうとエースが怒鳴る。と言ってもここは玄関前ぎゃーぎゃーと騒いでいたせいで家の中にいたガープ先生がこめかみに青筋を立てて出てきた。


「うるさぁい!」

全員一発ずつ拳骨を食らいやっとのことで室内にはいる。わたしたちの声よりも、ガープ先生の声のが何倍も大きかったことは言わないでおこう。




「さっさと鍋の準備をせんかい!もうすぐルージュも帰ってくるというのに!」


少しお怒りのガープ先生について、お部屋に入れてもらうと想像していたよりも全然綺麗なリビングに驚いた。

男の人の3人暮らしなんてもっと散らかり放題だと思ってたのに。テーブルにお菓子が広がっているけど、脱ぎ散らかした後はないし、漫画が散らかってるわけでもない。


「この状態にもってくるまで3日かかったんだぜ」


サボの耳打ちに思わず笑ってしまった。


「よし!じゃあお前らはテーブルの片付け、名前は鍋の準備、わしは煎餅を食う!開始じゃ!」
「「「ちょっと待て!」」」


何で全部押し付けて自分は煎餅食べてるのよ!今にも煎餅の袋を開けそうなガープ先生を4人で止めた。


「ジジィも手伝えよ!母さん帰ってくんだから!」
「先生も手伝って下さいよ!」
「えー、いいよ」


こんなやり取りがありながらも、わたしは早速食材準備に取り掛かった。鍋だからひたすら食材を切っていくだけなのだが、さすがこの家族が用意してくれていた食材は店でも開けそうなくらいの量だった。

それにしても、結構片付いているキッチン。というか使ってるのかどうかも怪しいくらいだ。

リビングの方を覗くと、片付けなんて口だけだったようで、エースもルフィくんも、先生まで煎餅を食べながらテレビを見ていた。


「はぁ…」


ま、ここまで気使わなくていい家も滅多にないよね。


「悪い名前、1人でさせちまっておれもなんか手伝おうか?」
「わ、ありがとう!じゃ、この白菜切ってくれる?」
「おぅ!」


やっぱり、サボは相変わらず紳士だ。いつも周りをよく見てくれてる。だからか、中学の頃も女の子に凄いモテてた。

卒業式なんて凄かったなぁ…。
サボだけじゃなくエースも凄くモテモテで、2人の周り女の子だらけで、一緒に写真撮れなかったんだよね。

わたしも友達といたから分からなかったけど、式が終わった後に再会したら、2人ともボタンは全部無くなってて、制服も千切られててボロボロの状態だった。

思わず、お疲れって言葉が出たくらい。

でも

「ほら、第二ボタン守っといたぜ!」

って二ィと笑顔で第二ボタンを渡して来たエースにはときめいた。


「ふふ」
「どうした?」
「ちょっと卒業式の日のこと思い出して」
「あー…、あんま思い出したくねェな」


サボにとっては悲惨な思い出だよね、裸同然みたいな格好で帰ってったもの。


「学校楽しい?」
「まー、普通かな、エース程気の合う奴はいねェや」
「そっか、なんかいいよねエースとサボみたいな関係って」
「そうか?」
「うん!お互いに相手の事を信頼し合って、理解し合ってて…」


わたしにはいないな、そういう人。


「名前とエースもそんな感じだろ?」
「そうかな?」
「あぁ、そう見える」


わたしとエースの関係…。
そういえば何なんだろ。幼馴染みってワケでもないし、恋人とかっていう関係でもない。
ただ、ずっと同じクラスってだけの本当にただの友達。

お互いことは多少は理解してるけど、全てを見せてるってワケでもない。

エースがバイトしてるのだって最近知った事実だし…。


「わたしとエースって何なんだろ…」
「まぁ、一度考えてみてもいいかもな」
「うん、そうだね」





ピーンポーン


「あ!」


インターホンが鳴り、その途端エースはドタドタドタッと玄関へと駆けて行った。


「母さん!」
「ただいま」
「遅かったな!」
「ごめんね〜、みんなにケーキ買ってきたんだけど」
「おっ、サンキュー!早く行こうぜ、もうすぐ準備できるから」


玄関から話し声が聞こえ、エースのお母さんがやって来たのだとわかる。エースのお母さんとの初対面に少し緊張が走った。

満面の笑みのエースに続きリビングへと入ってきたのは、びっ、美人…!!!

いつかのわたしの想像の、ゴツゴツでムキムキの逞しいお母さんとはかけ離れた、細くて、清楚で、なんかこう…守ってあげたくなるような人だった。


「ルージュ!」
「あらルフィ、聞くまでもなく元気そうね」
「お久しぶりです、ルージュさん」
「あら、サボくん!?すっごく久しぶりね、大っきくなって!」


サボ、会ったことあったんだ!
てことは初対面はわたしだけだ、き、緊張する…!


「そちらは?」

ルージュさんの綺麗な目がわたしを映し、首を傾げた。


「こいつが名前!中2からずっと同じクラスの!」
「あぁ!あなたが名前さんなの!とても可愛らしいお嬢さんね!」


いつもエースがお世話になってます。そう微笑みながら言ってくれるルージュさんにこちらこそ!と頭を下げた。
どことなく雰囲気がエースと似ていて、その笑顔も安心感を与えてくれるものだった。


「はじめまして…!エースとはずっと同じクラスで、仲良くさせてもらってます!」
「エースから話は聞いてるわ!これからもエースのことよろしくねっ」
「はい!」


意味深なウインクをされたその時、ガープ先生が爆弾を投下した。


「エースの嫁は名前と決めておるわい!ガハハハ!」
「は、はい!?」


なんでそんなにわたしを推すのよこのおじいさん!


「あら、奇遇ねガープさん、わたしもそう思ったところよ?」


2人が笑い合っているのを見て
わたしとエースはポカン。


「わりぃ。気にしないでくれ」
「や、実はウチでもエースが花婿候補に挙がってたんだよね…」
「マジか!」






「早く食おうぜー!おれ、腹減りすぎて死ぬー!」
「そうだね、わたしもお腹空いた…」
「よし!じゃ、はじめっか!」



ソファの前にある少し大きめのローテーブルの上にコンロ、その上に鍋をセットし準備万端!



「エース白菜取って」
「ほれ」
「糸こんにゃく!」
「ほれ」
「まぁ!息ピッタリね」
「本当だ」
「名前〜!肉!肉入れてくれ!」



ルフィ君の注文通りにお肉を入れていたらお肉で鍋が埋まってしまったが、そこはみんな気にせず、蓋をしめ一旦火が通るまで待つことに。



「そういえば名前、今年もおばさんの実家に帰んのか?」
「うん、12日から行くよ」
「よっしゃ!だったらいつもの頼む!」
「あー、はいはい」
「なぁに?いつものって?」



ルージュさんが興味津々といった感じで問いかけエースが、えっとな。と話し始めたんだけど…。



「名前のおばさんの実家がよ、えーっと、なんちゃら…セブンでな!そこの…なんちゃら肉がうめェんだ!だからいつもお土産に買って来て貰ってんだ!」



なんちゃらだらけで分からんわ!



「あら、そうなの!あたしW7には行ったことがないのよ、どんな所なの?」



それで通じてるのは、さすがエースのお母さんと言うべきか…。それに、ルージュさんの瞳がこちらに向いて、あまりの綺麗さに緊張してしまう。



「い、良い所ですよ!道路よりも水路が多くてヤガラっていう動物が引いてくれる船で移動するんです!」
「あ!おれ行ったことあるぞ!」



ルフィくんが急に大声をあげて、そうなの!?とわたしもビックリ。



「アイスのおっさん元気かな〜!」
「アイスバーグさん知ってるの!?」
「いろいろ世話になったんだ!」



毎度毎度、ルフィ君の交友関係には驚かされる。レイさんやシャッキーさんやハチさんやケイミーなどなど…

きっと彼の性格や人柄が周りの人間を惹き寄せるんだろうな。



「アイスのおっさん?なんだか楽しそうなところね〜!私も今度ロジャーに連れてって貰おうかしら」



ちょっとルージュさん!あなた美人なんだからあんまり“おっさん”とか言わないで…!それからロジャーってエースのお父さんかな?



「おい!噴いとるぞ!わしが開ける!」



ガタガタと震え始めた鍋の蓋をガシッと掴むガープ先生。熱くないのかな…!蓋が開くとモクモクと湯気が立った。



「肉ぅー!!」
「あ、ルフィ!独り占めすんな!」
「って!エースお前もだろ!」
「食える時に食うておけ!ガハハハ!」



わーわーぎゃーぎゃー


騒がしい…すっごく騒がしい…

でも
とっても楽しい!



「わたしもお肉!!」
「はい!母さんの分!」
「あら、ありがとうね」









「ふぅー、お腹いっぱい」
「食った食ったぁ!」
「美味しかったわ」



軽くお腹を摩る。これはもう何も入らない…、幸せ。



「よし!じゃあシメにすっか!」
「えっ!?」


まだ食べるの!!?



「米いれようぜ!」
「何言うとるんじゃ!シメはうどんじゃ!」
「は?シメつったら米だろ!」
「何言ってんだエース、そばだろ!」
「肉にしよーぜ!」
「ルフィ、それはシメじゃねェぞ」



まだ、食べるのかこの人達…。



「なぁ名前!シメは米だよな!?」
「うどんじゃろ!?」
「そばだろ!?」
「肉だよな!?」



4人の視線が一気にわたしに向いた。
すごい威圧感…。

シメかぁ…。ルフィ君の肉は論外として、サボのそばもどうなんだろ…?うどんと似たようなのかな…。まぁ、無難なのは米だよね。

でも…


「わたしはもう…、いらないかな…」
「はぁ!?なんでだよ!こっからが鍋の本番だろ!」



それは違うでしょ!
今までのリハーサルとでも言う気!?



「じゃあさ、名前は食べなくていいから決めてくれ」



とサボが提案して、それくらいならと頷いた。

って言っても…、正直なんでも良いんだけど…。



「じゃあ…一斉にあたしとジャンケンして、勝った人のでいい?」
「絶対負けねェ!」
「絶対、米だ!」
「名前なんぞに負けてたまるか!」
「肉ぅー!」



うぉ!すっごい…。たかがジャンケンなのに、拳ポキポキ鳴らさないで…!
なんかわたし誰にも勝てる気がしないんだけど…。



「じゃあいくよ…」

「「「じゃーんけーん…ポン!」」」



わたしが出したのはパー



「うおぉぉっ!よっし!米ー!」
「嘘だろ…」
「わしの自慢の拳骨で負けるとは…」
「なんでパー出さなかったんだおれェー!」



や、ルフィ君、パーでも勝てないからね。

勝者はエース。

見事に一人勝ちを果たしたエースは鼻歌なんて唄いながら鍋の中にご飯を入れていき、最後に溶き卵を流した。



「出来たっ!」
「うんまほ〜!」

「「「いっただっきまーす!」」」

「お、おいしー」



エースってこういうの出来たんだね!すっごく美味しい!なにこの卵のフワフワ感!!



「って名前!お前もう食わねえんじゃなかったのかよ?」
「あまりにも美味しそうだったからつい」
「だろ!俺これだけは昔っから上手いんだよ」
「米もアリだな。でも、次はそばだ」
「ダメだ!絶対肉だぞ!」
「違う!次はうどんじゃ!」



みんなゴチャゴチャ言いながらもエース特製雑炊バクバク食べてるじゃん…。



[ 62/108 ]

[*prev] [next#]

もくじ



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -