「あー」

暇。

折角の夏休みなのに外出禁止だなんて、不幸以外の何物でもないよ…。明日からはエースの家泊まって、その後はマルコ先輩と遊んで、それから…あ、おじいちゃんち行くから明日からは大忙しになるんだけど。
やっぱり今のうちに宿題はやっておくべきかな。これまでの夏休み最終日のことを浮かべて苦笑いが出た。


「よし、やろう!」


ピーンポーン


「……」


なんてタイミングの悪さだ。
心の中で訪問者に悪態をつきつつ部屋から出て、階段をおり扉を開けた。


「よっ!来たぜ!」
「おーっす名前!」
「エース!サッチ先輩!」


なんと家の前にいたのはエースとサッチ先輩


「2人でどうしたの!?」
「エースから名前外禁だって聞いてさ、お見舞い?」
「飯持って来たからさ早く食おうぜ」
「ちょ、ちょっと待って」


今にも家に上がりそうなエースの腕を掴んで止める。一応外禁なわけだけど人を上げる分にはいいのかとか思うところはたくさんあるのだけど、そんなことよりも今の家の状態を他所の人に見せるわけにはいかない。


「5分!5分だけ待ってて!」
「お、おう…?」


慌てて家の中に戻りテーブルの上に散らばった漫画を片付け、さっき脱ぎ捨てたパジャマを畳んで引き出しにしまった。本当は掃除機もかけたいんだけど、さすがにそこまで待たせるわけにはいかない。ぐうたらしていた痕跡をなくしてまた玄関へ戻った。


「お待たせしました…!どうぞ上がって」
「おい息上がってんぞ」


どんだけ部屋汚くしてたんだとサッチ先輩に呆れられたけど、サッチ先輩の部屋よりはましだと言ってやった。
おじゃましますと礼儀正しく挨拶をした2人をリビングへと案内した。

エースは慣れたようにソファに座ると、テレビのチャンネルを好みのものに変え、サッチ先輩はキッチン借りるなぁと食事の準備を進めていってくれた。主婦みたい。率直にそんな感想が出たところでわたしも何か手伝うと言ったのだけど、温めるだけだからと断られてしまった。


「よーし、出来たぞ!本日のメニューは肉じゃがときんぴらごぼう、ひじきご飯だ」
「おいしそうー!」
「食っていいか!?」
「食え食え!」
「「いっただっきまぁーす!」」


肉じゃがのジャガイモに箸を入れてみると、ほろっと崩れて味が染みているのだろう断面が現れた。こんなの美味しいに決まってる。口にいれた瞬間にじわりと味が広がり、頬を抑えて悶絶する。


「おいしすぎる…!」
「こないだワノ国に行ってよ、ワノ国の料理を教えてもらってな、うまいだろー」
「最高です」


3人でサッチ先輩の料理を堪能している時、先ほどから思っていた疑問を口にしてみた。


「そういえば、今日はマルコ先輩はいないんですか?」


エース、サッチ先輩、マルコ先輩、わたしの勝手なイメージかもしれないけど、いつも一緒にいるイメージがある。特にサッチ先輩とマルコ先輩は。


「あー、あいつ今日はバイトなんだよ」


サッチ先輩の言葉でマルコ先輩がバイトしてることを初めて知った。まぁ、してても全然おかしくないのどけど。そこでエースがなぜ今日来ることになったのか説明をしてくれた。


「本当は昨日来たかったんだけど、昨日はおれがバイトでさ」
「えっ、エースってバイトしてるの!?」
「おぅ!あれ!言ってなかったか?」


聞いてない!
エースがバイトしているってこんなことも知らないなかったなんてなんだかショックだった。


「何のバイトしてるの?」


普通に飲食店?いやいや…ないない!
エースが自分が食べない料理を作ったり運んだり出来るわけがない。
エースを見ればうーん。と腕を組んで考えていて、バイト内容って考えて言うもんだっけ?なんて思った。


「オヤジに頼まれて傘下のグループの手伝い行ったりとか…特に決まってねェ」
「へぇ…、決まってないんだ」
「ま、将来のためにもいろいろ勉強になることばかりだぜ」


まさかエースの口から将来のためなんて言葉が出るなんて意外だった。


「もしかしてサッチ先輩も?」
「あぁ、おれも親父達の仕事手伝うっつったんだけどよ、お前はコックになりたいんだからレストランにでも行きやがれ!って言われちまって、今は美食の町プッチってとこのレストランでバイトしてる」


なんか親父さんらしくて頬が緩んだ。だけど、途端に焦燥感のようなものが胸の中に広がるのを感じる。


「おれは卒業しても親父の下で働くから今からちょっとでも慣れとこうって感じだな!」


エースって勉強全然してないし、将来どうするんだろうとか思ってたけど、もうちゃんと決まってるし、その将来に向けて準備もしてる。わたしこそ人の心配してる場合じゃなかった。わたしの将来どうなってるんだろう。


「わたしもバイトしようかな…」
「いいじゃん!何のバイトすんだ?」
「うーん…」


わたしって何が向いてるのかな?
まぁ高校生だから出来るのは限られて来るけど、接客とかやったことないし…。


「だったら親父に相談してやろうか?」
「え!いやいや、他人のわたしのバイトなんて親父さんも迷惑じゃ…」
「いいっていいって!親父だぞ?いいとこ紹介してくれるって!」
「で、でも…」
「いいから!な?」


オヤジさんの紹介なら信用は出来るのは確か。自分で探して変なところに決まるよりもオヤジさんに相談する方がいいかもしれない。


「お願いしようかな…」
「今日は親父さ、診察とかいろいろ忙しいからよ、また今度親父の空いてる日に相談行こうぜ」
「おぅ、そうだな!名前にはまた連絡するわ!」
「うん!ありがとう」
「おぅ!」


ニッと笑って頭を撫でてくれた。いつもは世話が焼けるのに、こういう風に頼れるところもあるエースってなんだかズルいと思う。


[ 61/108 ]

[*prev] [next#]

もくじ



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -