体育祭も無事終わり本格的に夏が始まった7月
わたしたちは机に頭を預け、ただひたすらに唸っていた。


「あついー、あついー、あーつーいー!」
「うるさいわよ名前、暑いのはみんな同じなんだから!」
「いやだって!わたしの前エースだよ!?みんなより何度か高いよきっと」
「あたしの斜め前だって火拳よ!火拳ちょっとどっか行ってて!」
「なんでおれだよ!?」



咄嗟に振り向いて抗議してくるエースにそうだそうだ!とわたしも言うと名前まで!とヘコんだように自分の机に伏せた。

まぁ、この暑さの原因のうちのひとつにエースも少なからず入ってると思うけど実はこのクラスには現在、始まって以来最大のピンチが襲っているのだ。……昨日からクーラーの調子が悪い。


「ふふ、元気そうね」
「ロビン…元気じゃないよー…」
「業者の都合で後一週間はこのままよ。慣れましょ」



ガーンと効果音がつきそうな程落ち込むわたしとノジコ…ついでにエース。
この暑さのなか授業なんて集中できるわけがない!みんなもぐったりしているように見えるし…。だいたいこの学校校舎大きいんだから他の教室使わせてよ…。

ロビンはふふと笑うと自分の席につき、そう言えばとわたしたちの方へと向いた。


「修学旅行の希望調査、今日までだけど出したの?」
「あっ、忘れてた!」
「そーいやあったな、そんなの」


ノジコはもう提出したらしく、わたしとエースだけが反応を示した。

ファイルから修学旅行希望調査のプリントを机の上に出すと、エースも同様にしわくちゃになったプリントを机の奥から引っ張り出してきた。


エースの机の中というと、それ以上入るの!?というくらいエースが今まで溜め込んだプリントで溢れている。でも、その中からピンポイントで必要なプリントを出すエースはある意味凄いと思う…。


修学旅行は毎年2コースあってそのうちのどちらか選べるようになっている。今年は魚人島と空島だそうだ。


「どうしようかな……2人は?」
「私は空島よ、空島の黄金卿や遺跡をこの目で見てみたいの」
「あたしは魚人島、クリミナルの本店に行ってみたくって!」


2人ともそれぞれ目的があるよう。わたしは……、悩むなぁ。


「んー…、エースは?」
「ん?あぁ、おれはオヤジ達と行ったことあるからなー、どっちでもいいや」
「え、どっちも?」
「おぉ!オヤジはな!でっけェ船持っててよぉ!あ、あの屋上とか船の甲板に似せて作ってあんだぜ!」


すげえだろ!とエースが歯を見せて笑いかけてくるのだけど、オヤジさん、一体何者!?という驚きでわたしの頭の中はいっぱいだった。


「で!どうするの!」
「んんー……」



空島って不思議な雲で出来た海に、綺麗で不思議って噂のビーチ……。でも、魚人島のマーメイドカフェにも是非行ってみたい…。むむむ…


「決めた!魚人島にするっ!」
「名前、一緒に観光しましょ!」
「うん!ロビンごめんね」
「気にしないで、自分が行きたい所に行くのが一番だわ」


ニッコリ笑ってくれたロビンにわたしがありがとうと返すと、エースも「おれもじゃあ魚人島〜」とプリントに大きな丸をつけた。

「いいの?エースが行きたい所にしなよ」
「なんかさ、名前がいねぇと楽しくない気がするんだよなぁ」


だからいいんだ!と自信満々に笑顔で言うエースの理由は全く理解できないけれど、まぁ本人が良いならいいや。とわたしもそれ以上は何も言わなかった。


「二学期が楽しみね」
「そうだね!」


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