ガチャ…



「出たよ〜」
「ッ!?」
「ん?」



お風呂から上がり完全な寝巻きに着替えて部屋へ戻ると何故かエースに目を見開いて驚かれた。



「おまッ!!髪くらい拭けよ!!」



そう言うとガシッと腕を引っ張れ、タオルで頭をガシガシとされる



「うわぁっ…!!ちょ、エース…!」
「……」
「い、痛い!痛い!」
「あ!わ!わりィ!!」



慌ててエースが離れてタオルから顔を出す、けど何故かエースの手のひらを顔に押し付けられた。



「うぶっ!?」
「お、おれ、風呂行って来る!」
「ぷぁっ、着替えは!?」
「持ってる!」



バタン!と猛スピードで出て行ってしまったエースの後ろ姿を見送ったが、なんで着替えあるの…。と疑問が残った。



「エースの布団用意しないと」



一階の和室でいいかな。











バタン!



「ッ……!!!」


あれはやべェ…!!名前ってあんなに、あんなに…、か、可愛いやつだったか…!?

名前の濡れて乱れた髪なんて、中学のプールの授業で何回も見たってのに……。
自覚した途端にこんなにも違って見えるんだな…、こんな感情初めてでかなり戸惑ってる。
あの漫画の主人公、もっとちゃんと見ておけば良かったな……。














「……」



一階の和室の押入れに仕舞ってある客用布団、押入れを開けてみれば、見事に詰め込まれた布団達。これ、どうやって出すの…。



「ふぅ……」



深呼吸して、一枚を両手で引っ張ってみる。


ギギ…


やばい…!!

全部落ちてくる!!



目を瞑り、布団に押し潰される覚悟を整える、しかし、なかなか来ないそれにゆっくりと目を開けると片手で落ちて来た布団を支えるエースがいた。



「何してんだよ…」
「エースの布団出そうとして…あはは」
「え、おれここで寝るのか?」
「あ、うん、そう」
「そっか…」



少しガクリと肩を落としたエースに首を傾げるが、なら早く敷こうぜ。と器用に敷き布団を引っこ抜いた。



「最初からエースにしてもらえばよかったんだ…」
「なんか言ったか?」
「あ、ううん」



バサッ…!


シュッ



「意外と手際良い…」



本当に意外だけど、よく考えてみれば、家でもガープさんやルフィくんがこういうことするわけないし、きっとエースが世話役なんだろうな、なんて思った。



ゴロゴロゴロッ!!



「いいやぁぁ!!」
「うわっ!いきなり飛びつくなよ…」
「だって…!!今の絶対落ちたよ!!」



しかも近くに!!

エースはハァ。とため息をつきはいはい、とわたしの背中を叩く。
エースに子供扱いされるのは癪だけど、今はお願いだから離れないでほしい、死ぬときは一緒に……!!



「お前、こんなんで1人で寝れんのかよ?」
「……」



エースのシャツをぎゅうっと掴んだ。

エースは冗談ぽく、笑って言うけど、わたしには死活問題。

この大雨and雷の中1人で寝る?
無理!絶対無理!!

いつもだってこっそりお母さんの布団に潜り込んでるんだもん…!!



「死ぬ……」
「一緒に寝てやろうか?なーんて…」
「それは……」



ダメでしょ、いろいろと…。


ビカッ!!ドカンッ!!



「いぎゃぁぁ!!無理無理!」



今の聞いた!?ゴロゴロじゃなかった!ドカンだった!わたし死ぬ、絶対死ぬ。



「お願い…!!傍にいて!!」
「えぇっ!?……おぅ」



エースも驚いた様子だったけど、布団をわたしの部屋へ運んでもらってベッドの横へ敷いた。



「お、おやすみ」
「おぅ」



電気を消して布団に潜り込む。窓の外では未だにピカピカゴロゴロ鳴ってるけど、ギュッと目を瞑り、布団の端を握り締めた。


雷なんてただの自然現象じゃない!!わたしに落ちるなんて、何億…いや、何兆分の一…!だよ…ね…!!



ゴロゴロゴロッ!!



「ひぃーーっ!!」
「うるせェ…!!」
「だって……!!」



涙目になりながら縋る思いでエースを見れば、上半身を起こしポリポリと頭を掻きながらハァ。とため息をついた。なんだか今日はエースにため息ばかりつかれている気がする…。



「おい」
「へ?」



いきなり腕を引っ張られれば、当たり前にベッドから滑り落ちるわけで…、ドサッと布団の上に落下し、目の前にはエースのTシャツの漢字

あまり状況を理解できずにいたけれど、顔を上げればエースの顔がすぐ近くにあるもんだから、顔がポゥと熱くなったのが分かった。



「怖いんだろ?」
「うん…」



怖いよ、本当に怖い。


エースはわたしの腰辺りに手を回して両腕でガッチリと固定すると、じゃおやすみ。と眠りに入る



「えぇっ!?エ、エースッ!」
「だってうるさくて寝れねェもん……」
「え……でも…」
「もういいから寝ろよ…」



エースもそろそろ眠くなって来ているんだろう、声がだんだん小さくなっている。

頭にエースの顎が当たったのが分かると、すぐに寝息が聞こえ始めた。

少しだけ戸惑いはあったけど、エースが傍にいれば雷なんてほとんど聞こえなくて、なんだか安心できた。



「ありがとう…エース」



そうつぶやいて、わたしもエースの胸に顔を当ててゆっくり、ゆっくり、眠りに落ちた。


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