「ん〜……、あっ!」



カリカリカリカリ…



部屋にはわたしがペンを走らせる音だけが響く。
日曜日の今日わたしは明日の赤犬のテストに備えて家で1人勉強に励んでいた。


学校があった3日間でマルコ先輩は1年の地理を叩き込んでくれて、後は自分でやるのみ!!
昨日は土曜日だって寝ちゃったから…今日は本気でやらないと!!



「赤犬のテスト…難しいだろうなぁ…」



やめやめ!そんなことは分かってたことじゃない!今はやれることをやろう!



プルルルルルルル…



突然、机の上に置いていたケータイが震え、着信音が鳴り響いた。

表示を見れば、ポートガス・D・エースの文字。



「……」



なんだろう。…嫌な予感しかしない。
いいや、無視しちゃおう。


そう決心し、またケータイを机に置けば暫らくして音は鳴り止んだ。

ホッと安心して手を動かすと


プルルルルルルル…



また鳴り響いた着信音にまたポートガス・D・エースの文字。



「……」



いや、無視よ無視!エースはいつも間の悪いやつなんだ。エースのせいで明日のテストで点取れずに留年なんてことになったら洒落にならない。

また鳴り止んだ音にホッと息をついて勉強を再開した。



プルプルプルプル…



一瞬またかと思ったけど、この音はわたしの携帯電話ではなく、一階にある固定電話の音。なんだ、と思いまた問題に目を戻すと下から母の呼ぶ声。



「なにー?」
「エースくんから電話よ〜」



家にまでかけてくるなよ!と突っ込みたいがそこまでされたら仕方が無い。とわたしは立ち上がり一階の電話に急いだ。



「なに?」
「あー!やっぱりいた!なんで電話出ねェんだよぉ!」



エースの大きな声に思わず耳から受話器を離した。



「あー、うん、ごめんね」
「なぁ名前!今から動物園行かね?」



電話に出なかったことなどさほど気にしていないらしいエースはいきなり本題に入った。



「ルフィが近くに動物園見つけたらしくてよぉ!今から行こうっつってんだけど、名前も行くだろ?」
「ごめん…わたし今日はテストに備えて勉強…「そこの動物たちがおんもしれェんだって!その園長がタワシみたいなやつで箱入り息子なんだってよ!!」



断ろうとした途端エースが楽しそうな話を始め、わたしの言葉は遮られた。

は、箱入り息子?なんだかよく分からないけどエースの興奮具合からしてとても楽しそう…。い、行きたい…。


ギロリ。


その時どこからか視線が飛んで来たような気がした。

い、いかんいかん!わたしはテスト勉強に励まなければ…!!
はやる気持ちを抑えエースには丁重にお断りした。



「えー!なんでだよー!」
「また今度!今度行こう!」
「ちぇーっ…分かったよ…」



電話越しにでも伝わるエースのションボリとしたオーラに申し訳ないなと思いつつも、ごめんね。と言えば、今度は絶対だからな!と念を押された。
電話を切り部屋へ戻ると疲れがドッと出た気がした。


たった数分話しただけなのに…。相変わらずエースのパワーには驚かされる。



「よしっ!」



頑張らないと!!
気合を入れ直し問題に向かいペンを持った。


プルルルルルルル…


ガクッ!
また鳴り響いたケータイの着信音。

エースにはちゃんと断ったんだし違うと思う。エースだって人のことを考えてくれるやつ…のはずだ。

表示を見ればシャンクス先輩の文字。今度は頭にはてなマークが踊った。
何の用だろう…?



「もしも…「名前ーー!!」



エース並の大きな声にまたケータイを耳から離した。そっと近付けるとわんわんと喚き声が聞こえる。



「おれだぞー!分かるかぁー?」
「シャンクス先輩…ですよね?」



シャンクス先輩ってこんなにはっちゃけてる人だっけ?疑問系で返すとピンポンピンポン!とまたまた大きな声で返って来た。



「何か用ですか…?」
「ぐふふふ…、名前〜」
「はーい…」


バタッ!


え?何の音!?


「シャンクス先輩!?シャンクスせんぱーい!」



何度話しかけても何の反応もない。ど、どうしよう…事故に遭ったとか…?ケータイを耳に当てたままいろいろ考えていたら泣きそうになってきた…



「先輩…?返事してくださいよー…!!」


お頭また潰れてるじゃねェか…。



その時、電話の向こうで声が聞こえた気がした。思わずケータイをグッと持って耳を澄ますとたくさんの声が聞こえた。



「おーい、誰か運ぶの手伝ってくれ」
「ったく、朝からこんな飲むから…」
「名前〜」



「あー、もしもし?」
「は、はい!」



今度は鮮明に聞こえた声に、きっと誰かが先輩のケータイを拾ったんだと理解する。
その渋く低い声…聞いたことあるんだけど…



「お頭が悪かったな…、酔っ払ってお前さんに電話しちまったみてェだ」
「は、はい…無事ならいいんです。え、っと、そちらは…?」
「あぁ、おれはベン・ベックマンだ」
「あ!ベックマンさんだ!」



その名前にピンと来たあたしは思わず大きな声が出てしまった。しかし、ベックマンさんは落ち着いた声で覚えててくれたのか。なんて言う。



「もちろん覚えてますよ」
「ベックでいいぜ。はは、そうか、嬉しいね」



はははと笑うベックさん。声だけでもカッコ良いなんてすごいな…。



「う"ぅ…名前〜…」


「あの、シャンクス先輩大丈夫ですか?」
「あぁ、いつものことだ」



いつもお酒飲んで酔ってるのか…。仮にも高校生でしょ、という突っ込みは心の中にしまっておいた。



「それよりも名前、赤犬のテストがどうとか…お頭が言っていたが…」
「あっ、そうだった!すみません。じゃあわたしはこれで…」
「フッ、頑張れよ」



最後までかっこいいベンさんとの電話を切りふと時計を見て時間を確認すれば、エースの電話からかれこれ30分は経っていた。



「やばいやばい!」



しかし…二度あることは三度あるとはこのこと。
束の間、また携帯電話の着信音が鳴り響いた。


もう完全に引きつった顔でケータイを見つめた。チラリ。と表示を覗けば…


「ロビン…?」


なんだろう?と今度は何も考えず、通話ボタンを押した。



「もしも…「名前ーーー!!」



何度目だと思うかもしれないが、耳からケータイを離す。
これ、明らかにロビンの声じゃない。暫くして落ち着いた声が聞こえた。



「もしもし、名前?」
「ロビン…?」
「えぇ」
「びっくりした…」
「ごめんなさい、ルフィが勝手に…」



あぁ、そういうことか。ロビンのケータイでルフィくんがかけてきたのね。



「どうしたんだろ…?」
「ルフィが東海町の動物園に行こうって誘ってるんだけど…」
「あれ。それさっきエースからも言われたよ?」



断ったことエースからルフィくんに伝わってないのかな…?



「エースを誘ったらしいんだけど断られたそうよ、だからわたしたちが誘われたんだけど、ルフィが名前も誘うって聞かなくて…」
「なるほど…」



エース、わたしが無理だから断ってくれたんだ。それにしてもルフィくんにもちゃんと説明してよ…!



「ロビン…ごめん…」
「分かってるわ、赤犬のテストでしょ?ルフィにはきちんと伝えておくわね」
「ありがとう、ごめんねって言っておいて」
「えぇ、また行きましょう」
「うん!」



ロビンとの電話を切り、ふうっと一息。なんでこういう時に限ってこんなに賑やかなのあたしのケータイ…。

さっきから全然進んでないのに…



「疲れた…」


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