このところ、エースのことが気がかりで何も手につかない。

マルコ先輩とも出かける約束だったけれど、わたしがこんなだとマルコ先輩も楽しめないだろうから断っている。


「ハァ……」


エースに拒否されたことも、会えないことも、こんなにも辛いなんて今まで考えたこともなかった……。

朝のチャイムが鳴り、慌ててノジコに1限目がなんだったか聞くと、はぁっ。とため息を吐かれた。


「名前本当に大丈夫?明後日に文化祭だから、今日明日は授業なしで、その準備よ」
「そうだっけ…」


全く頭になかった。わたし本当にやばいかもしれないな…。
すると教室に青雉が入ってきた。


「えーと、みんな分かってると思うけど、今日と明日は文化祭の準備で授業ないからよろしく」
「準備っつっても何するんだ?」


話終わりすぐにアイマスクをかけようとした青雉に素早く委員長が突っ込む。青雉はアイマスクを持ったままダルそうに、そうなだな…。と考え始めた。


「写真は?」
「もう出来てると思うぜ学校抜けていいんなら取りに行くけど」
「んー、じゃあ委員長は取りに行って来て、他は…部屋の飾り付けでもやっといてよ、おれに言ってくれれば必要な物買いに行ってもいいからさ」


そう言うと今度こそアイマスクをつけて眠りについてしまった。


「じゃあおれ写真屋行ってくるわ!」


委員長もすぐに教室を出て行ってしまった。


「じゃあわたし達も飾り付けしましょうよ」
「そうだね」
「まず、要る物はー…」












わたし、ノジコ、ロビンの3人はまず必要な物の調達にやって来た。


「このおりがみセット1000枚入300ベリー!安いわ!これにしましょ!」


買い物慣れしているノジコが安い物を瞬時に見極め買い物カゴに入れていく様子をロビンと呆気に取られながら見ていると、ノジコがレジを済ませてわたしたちの元へ戻って来た。

それもとても嬉しそうな顔をして…。


「お金半分も余ったわ!みんなにジュースでも買って行きましょ!」


ノジコって倹約家なお嫁さんになりそうだなぁ…。








「おっもっ…!」

ノジコのおかげで人数分以上のジュースが買えてしまい、それを3人で分けて持ち、学校へ戻って来た。



「たっだいまー」
「たっ…ただいま…」
「あっ!おかえりー!」
「ジュース買ってきたわよー!好きなのとってね!」


教室へ入るとみんな一つの机を囲むように何かに見入っていて、わたしたちもジュースを置いてそちらに向かった。


「何してんの?」
「委員長が取りに行って来てくれた写真みんなで見てたの!」
「あたしも見たーい!」



名前もはやく!とノジコに急かされ、わたしも輪の中へ入った。


「うっわ……」


机の上には大量の写真たち。夏休みのバーベキューに、修学旅行の写真。もうとにかくすごいたくさん。


「委員長、ずいぶんたくさん撮ったんだね」
「だろ?こっから良いの選んで展示するんだ」
「へぇー…」


委員長によればクラス全員平等に写ってるように展示するらしい。

こうして見てみると、いろいろ思い出すな。
バーベキューも修学旅行も楽しかった。


「なぁ!これ展示していいか?2人ともすっげェいい感じだし!」


ほら!と委員長が見せてくれた写真を受け取って見てみると、わたしは心臓がズキンと痛んだ。


「これ…」


それは、バーベキューの時にエースと撮ってもらった写真で、わたしもエースもすごくいい笑顔。


「それと…、あ、これもいいだろ?」
「これっ…!いつ撮ったの!?」
「店の前通ったら2人見かけたんだよ」


ニヤリと口角を上げる委員長から、また写真に視線を戻した。
それは、魚人島のお店で、エースとサッチ先輩のワックスを選んでいる時のものだった。
ただ、ワックス選んでるだけなのに、わたし達、凄く楽しそう…。

わたし…、エースといる時こんな風に笑ってたんだ…。


「あら、それいいじゃない!」


後ろからした声に振り返るとノジコがわたしの手の中の写真を眺めていた。

「2人とも自然な感じだし、それにこの名前凄く可愛いわ」
「そんなこと…」
「そんなことあるわよ!少なくとも今よりは!ね?」


そしてムニッと頬を引っ張られた。ノジコすぐにみんなとの話へ戻ってしまい、離された頬をさすりながらわたしはまた写真を見た。

エースと…、またこんな風に笑いたいなぁ……。

その時、ふと頭をよぎった。

しかしすぐに頭を振って否定した。


……ダメだよ。

だって…そんなの勝手すぎる。

わたしは今、マルコ先輩と付き合ってるんだから……。


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