今日、エースが休んだ。
一生病気とは無縁なエースが休んだ。
きっと、わたしに会いたくないからだと思う。
わたしはただ、悲しくて寂しくて、今日は空いているエースの席から目を逸らせないでいた。
勢いで家にまで行ったわたしも悪いけど…、あんな風に言われるなんて思ってなかった……。
「ちょっと名前?どうして泣いてるの」
「……え」
自分の目元に触れ、手に付いた雫に驚いた。
わたし、泣いてたんだ。
「これ使って」
「ありがとう…」
ロビンが差し出してくれたハンカチを受け取ると彼女の目線がわたしの目元へ向いた。
「昨日も泣いたの?少し腫れてるわ」
「うん……少し」
本当は少しどころじゃない、今までにないくらい泣いて、夕飯も食べられなかった。
また溢れて来た涙を誤魔化すように手でゴシゴシと擦るとロビンに手首を掴まれた。
「擦っちゃダメよ、ひどくなるわ」
「でも……」
涙が止まらないよ…。
また泣き出したわたしの頭をロビンが撫でてくれた。
「昨日火拳の家に行ったんでしょ?何かあった?」
ノジコの質問にコクリと頷くと、また昨日のことが思い出された。
「今までは…ッ、同じクラスで席が近かったから話してただけで…席が離れてまで、話すようなことなんてない。って…言われた…」
「本当にエースがそんなこと言ったの?」
「…うん……」
「まったく…あいつもバカね…」
呆れたようにハァッとため息を吐いたノジコだけど、今度は申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめん名前、あたしが家に行けって言ったからね…」
「ノジコのせいじゃないよ…」
首を振ったわたしの両肩にノジコは笑って手を乗せた。
「ありがとう。でもね名前、これだけは言える。あんたは何も悪くない!少しだけあいつに時間をあげなさい」
「時間……?」
「そうよ、あいつも馬鹿な頭で必死に自分の気持ち整理してんのよ」
「エース何かあったの?」
わたしの知らないところで何か大変なことでも起こったのかな。不安げにノジコを見つめると、ふっ。と笑われた。
「そうね。たぶん、あいつにとって今までで一番悩んでることなんじゃないかしら」
「そうなんだ……」
そんなことわたしには何も教えてくれていない。言いたくないのかな… 。
でもなんとなくだけど心は落ち着いた気がする。
「わかった、二人ともありがとう」
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