「ふーー…」
帰宅し、自室へ入ると、すぐにベッドへとダイブした。
顔を枕に埋め、足をバタバタと叩きつければギシギシとベッドが鳴った。
最近考え事をしてるからなのか、時間が経つのがすごく早い気がするなぁ…。
それに、マルコ先輩とはあれから一度も会っていない。
いや、会ってないっていうか…、見かけることはあるんだけどついつい隠れてしまうのだ。
ノジコにはいつも通りよ。なんて言われたけど、いつも通りって何?状態。一体どんな顔をして会えばいいのか全くわからない…。
でも……
「ずっと、このままってわけにはいかないよね……」
誰に聞かせるでもなく枕に顔を埋めたまま呟いた。
マルコ先輩はいい人だし、わたしの中でも“好き”の部類に入る人だ。
今はまだマルコ先輩がわたしを想ってくれているほどの好意はないけど、いつか、そうなる自信はある。だったらやっぱり、ノジコの言う通り、付き合ってみても良いかもしれない。
「……よし」
わたしはベッドの上で起き上がり、携帯電話でメール作成画面を開いた。相手が直接言葉にしてくれたのに、わたしがメールで返事なんて失礼だよね…。
じゃあやっぱりどこかに呼び出すしか…。
な、なんて呼び出そう…!!!???
≪告白の返事したいんですけど…≫
な、なんかこれは…、ストレート過ぎて恥ずかしい…。打ち込んだ文字を慌てて消去した。
なにか…、あ。そうだお土産!!
《お土産渡したいんですけど、明日の放課後とかあいてますか?》
うん、いいやこれで!
ためらう右の親指を左手で無理やり押した。
そ、送信!
「ッはぁ……」
一気に身体の力が抜けた。
ここ2、3日名前に会っていない…。
おれが会いに行っていないのもあるだろうが、学校で見かけることも全くといっていいほどない。もしかすると避けられてるのかもなぁ。
はは、それはつれぇよい…。
でも、心はどことなく落ち着いてる。それが気持ちを伝えたからなのかはわからねぇけど、でも、今までよりもかなりスッキリした状態でみんなに振舞えてると思う。
まぁ、まさかあの場面で言っちまうとは自分でも思わなかったがな…。
4日間も会ってなかったってのもあるが、なんだか言わなきゃいけねェような気がした。
あの時、名前の返事を止めたのはフられる気しかしなかったからだが、名前がおれをそんな風に思ってないことくらいわかってる。今思えば、返事が先送りになったところでフられることには変わりねぇのにな…。
だがまぁ、この数日でフられる覚悟は出来た。
だけど問題は、フラれてからも今まで通りに接してくれるのかってことだな…。
「はぁー…」
おれが普通にしてりゃ名前も変わらねぇと信じたいが、今まで通りにってのは無理なのかもなぁ…。
ブーブーブー
その時、テーブルに置いていた携帯電話が鳴った。
サッチか…?
あいつは最近おれを気にかけてくれていてよく飯に誘ってくれる。今日もその誘いかとすぐに受信したメールを開いた。
《お土産渡したいんですけど、明日の放課後とか空いてますか?》
名前からだった。
お土産ってのは口実だろうなぁ、ようは返事ってことだな。さすがのおれも人に見られるところでフられるのはキツイ。
《じゃあ、放課後、この間の公園で待ってるよい》
それだけ返信した。
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