「……」



言葉が出ない。
わたしとエースの目の前には見上げるほどの大きな宮殿。
家って聞いていたから、普通の一軒家を想像していたけれど、そうだった王女の家だった。


「宮殿が家……」
「そりゃ王様だぜ?」

「お待ちしておりました。ご案内いたします。」



門が開くと、案内人さんらしき人が出て来て、その方についてわたしたちは宮殿の中へと入った。

大きな広い廊下には所々に何かの像が置かれていたり、一般庶民のわたしが一生目にすることのないような高そうな壺があったり。で顔をきょろきょろと動かすことに忙しいわたしとエースに案内人さんはおかしそうに微笑んだ。



「すごい…すごすぎる…」
「おれも、こんなとこ初めてだ…」
「どうしてルフィくん、友達なの?」
「さァ?おれもよくわかんね」



よくわかんなくて大丈夫なのか。とも思ったが、とりあえずルフィくんがこの国のピンチを救ったとかで、そんな大事件がいつのまにか起こっていた事実にもわたしは驚いた。

大きな扉の前に来ると、案内人さんが立ち止まり、その手で扉を開いた。途端に中の騒音がこちら側にまで響いて来て、もうたくさんの人たちが集まっていることがわかった。



「あっ!エースに名前!遅いぞお前ら!」
「あんたが早く来すぎなのよ!6時からなのに4時に来る馬鹿は誰!?」



ポカッとルフィ君の頭に拳骨を落としたナミちゃんに説教され、ルフィくんは、ずみばぜんでじだ。とわたし達に頭を下げた。



「こ、こちらこそごめんね…」


まさかそんなにボコボコにされるなんて…。

申し訳ない気持ちになっていると、気になさらないでください。と水色髪の女の子がわたし達の前にやって来てニコリと笑った。



「はじめまして。わたしビビです」


その姿はテレビでも何度か目にした人物そのものでわたしはすぐに言葉が出なかった。


「ほ、ほんもの……」
「ほんものだなんて…、ふふ。ビビと呼んでください。今日は楽しんでってくださいね、名前さん」
「は、はい…!」


王女って聞いてたから世間知らずなお嬢様なんて、色々想像してしまっていたけど、ビビちゃんはは気取った様子もなく、常識もある可愛い女の子だった。暫くビビちゃんと話していると、食事会の準備が出来たようで音楽の教科書に出て来そうな人が呼びに来てくれた。



「もう食事の準備がっ…マーマーマッー。食事の準備が出来ました。こちらの部屋へ」
「ありがとイガラム。さぁみんなこちらへ!」



ビビちゃんに案内されて、隣の部屋に順に入っていく。すでに良い香りがして、一番に入ったルフィくんは大きな声で叫んでいた。


「うんまっほ〜!!」
「おいルフィ!つまみ食いやめろ!」


大きく長いテーブルの上にはたくさんのお皿が隙間なく並び、その上には当然おいしそうな料理が乗っていた。



「たくさん食べてね!!」
「おかわり自由だよ!なんでも頼みな!」
「いっただっきまぁーす!!」


ルフィくんの大きな声のあと、みんなも一斉に食べ始めた。

特に向かい側で食べているルフィ君とわたしの隣にいるエースのスピードは驚異的で、目の前の大量の料理がみるみるなくなっていく、ルフィ君なんて味わっているのか不思議なくらいだ。
わたしも遅れを取らないように、近くの料理からどんどん口に運んだ。


暫くすると、隣のエースの手が止まっていることに気が付き、不思議に思って肩を叩いた



「エース?」
「ぐぅー…ぐぉ……」
「まじですか」


こんなところでもエースの寝る癖は発揮されるよう。この時のエースはどう頑張っても起きないのを知っているから、わたしは気にせず放置することにした。


この後、ルフィくんがみんなの料理を奪う勢いで食べ進め、ウソップくんが料理にタバスコを投入し撃退した。

そんな風な楽しくも騒がしい食事会は続き、デザートまっで頂いたところでお開きとなった。



「今日はありがとねビビ!!」
「いえ!わたしも楽しかったです!また来てくださいね!」
「わたくし共も楽しんでいただっ…マーマーマー。楽しんで頂けてなにより。またいらして下さい」



玄関口でビビとイガラムさんにテラコッタさん、ビビのパパさんまでみんなでお見送りしてくれた。



「おぉー!また来るぞービビ!!」
「ビビちゅぁ〜んまったねぇ〜!!」
「また来るね!ビビちゃん!」









「おーい、名前!早く乗れ〜」



自転車を取りに行っていたエースがわたしを呼び、後部座席をポンポン叩いた。



「ごめん、ありがと!」
「いいって、ほら乗れ」


後部座席に跨り、わたしはエースの腰へ腕を回した。


「ルフィ!おれ名前を送ってくっから、先帰ってろ!」
「おう!じゃあな名前!!」
「うん!誘ってくれてありがとう!」




ルフィくんたちにも別れの挨拶を済ませると、ゆっくりと自転車が動き出した。


風はとても冷たいけれど、エースの背中は温かくて、寒いなんて全く感じなかった。


「エースの後ろは落ち着く」
「ん?なんか言ったか?」
「う、ううん!」
「ほんとか?」
「うん」


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