解かれてく  1/2

名前とのあの一件から一週間が経った。
当人のおれたちよりも盛り上がっていた周囲もだいぶ落ち着いたように思う。

家が隣同士でも会わないようにしようと思えばできるもので、学校以外で名前の顔を見ることもなくなった。10年以上一緒にいて一日も顔を見ない日はなかったのに、今じゃ普通になりつつある。この先一生このままの距離になってしまうのかと思うとたまらなくなった。

当然、弁当も名前がおれの分を作ることはなくなった。
しばらくは食堂や購買で済ませようとしていたが、そんな時ミネが作りたいと申し出てくれた。申し訳ないし断ったが何度も何度も言ってくれたのでその言葉に甘えることにした。やめたくなったらいつでもやめていいとは伝えてある。


「今日も美味かった、ありがとうな」
「ううん!じゃあ次体育だからもう行くね〜」
「おう」


作ってくれるようになって昼飯はミネと食べるようになった。
今日は昼休憩後に体育だから、ミネはいつもより早めに腰を上げる。
この教室は男子が着替えに使う。女子は専用の更衣室へ移動したようだった。

おれが一人になったのを見計らってかすぐにサッチが近づいて来た。


「お前!ミネちゃんと付き合ってるってマジかよ!水臭えぞ!なんで言わねぇ!」
「は?」
「おれに遠慮とかしちゃってる?そんなん気にすんな!おれはそんなちっさい男じゃねぇよ」


バシバシ肩を叩いてくるが、おれには全く身に覚えのないことだった。


“彼女がいるならそう言えば良かったでしょ”


ふと名前に言われた言葉を思い出した。


「別におれ達付き合ってねえよ」
「え?」


きょとんと、可愛くもないサッチの顔。


「誰がそんなこと言ってんだよ」


なんとなく心に広がる違和感。なんだこれ。

サッチは驚いたままの表情であぁ。と教室を見渡した。
あいつ。とサッチが指さした人物に
おれは目を見開く。


「あいつって……」




「なぁ」
「な、なんだよ」


おれから話しかけてくることが意外だったんだろか。たじろいだ後、驚きと恐怖めいた目でおれを見る。

こいつは何か月か前に名前を騙して気を引こうとしてたやつだ。あれからは特に何もしてこないから安心してたが、まさかこいつがおれとミネが付き合ってるだの変なこと名前に吹き込んだのか。


「お前なんで嘘ついてる」
「は?」


あくまでとぼける気か。
びびりながらもおれと対等になろうとするこいつにいら立ちが募る。


「二度と名前に近付くなっつったろ!」


おれは奴の胸ぐらに掴みかかる。


「な、なんのことだよ!おれもうあれ以来あの子と話してねえって!」
「じゃあなんで名前がおれとミネが付き合ってるって思ってるんだよ!」
「それは、ミネ本人に言われたからだろ!おれはそれを目撃したたけだ!」
「…どういうことだ」


おれは掴んでいた手を離した。奴はうっとおしそうに手で払う動作をする。


「偶然見たんだよ。バイトの買い出しにスーパー言った時。名前ちゃんとミネが話してるの」


奴の口から静かに話される内容はとても信じがたいものだった。


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