すれ違う  1/2

授業の合間の休憩時間、机に項垂れるおれのとこに近づいてきたのはいつもの通りサッチで、呆れたように言葉を発した。


「お前…毎日テンションが違い過ぎるだろ」
「うるせえ」
「なんだよ、今日は弁当あるじゃねぇか」


少し驚いたようにおれの弁当袋を見て言う。
今となってはこの弁当もおれと名前が幼なじみであるという証拠のように思えてきてしまう。

昨日の名前の言葉が思い出される。

“そんな関係になりたくない。”


なんだよおれじゃダメなのかよ…。
こんなに一緒にいて行動にもうつしてきたってのに。
なんでおれには見向きもしねぇ…。そんなに惹かれるところがねぇのかおれには。

…もしかして好きなやつでもできたか?

名前に近付く男は徹底的に牽制してきたし、そんな可能性のあるやつすぐには浮かばない。


「はぁぁ」


今日何度目かの溜息が溢れ出た。

今回ばっかりは名前の気持ちの問題で、今更おれがどうしようと、昨日の結果は変えられない。
それにあんなにハッキリと言われてしまえば今後おれは行動できない。

もう、諦めるしかないのか…。


「あんな可愛い幼なじみに毎日弁当作ってもらって何が不満だこの野郎」


サッチの幼なじみって言葉が悪意無くおれに刺さる。
机の横に掛けてある弁当の袋をとってサッチの前に持ってくる。


「欲しいならやるよ」
「はぁ!?お前ほんとにエースか?」


大声を出すサッチから顔を背けて伏せた。


昨日あんなこと言ってたのに弁当作ってくれてるのはやっぱ、名前にとっておれは大事な幼なじみだから。なんだろうな。

おれたちはお互い片親で、昔から支え合って生活してきた。
もしここで名前が弁当を作らなかったらおれが困ることもわかっててくれてるから。

名前が毎日…。

伏せていた顔を上げ、おれの弁当を持ち去ろうとしているサッチの腕を掴んだ。


「な、なんだよ!」
「やっぱ、やれねぇ…」


「はぁー」とサッチに溜息をつかれたが、「お前も素直じゃねぇな」と簡単に返してくれた。

受け取るとずっしりと重い弁当箱がこれまでのことを思い出させる。

おれは昔から大食いだが、中学高校と食べる量が増えていくに合わせて弁当も大きくなっていった。それも勝手に増えたわけじゃなくて名前がおれのことを考えて増やしてってくれたんだな。今では他のやつらの二倍以上の大きさになっちまってる。

この弁当は名前と積み重ねてきた時間だ。

今のおれにとっては名前との繋がりを表す大切な弁当だろうが。

そんなこともわかっていなかった自分に腹が立った。


「だけどなぁ…」


今まで幼なじみって関係を壊そうと思ってやって来たことを拒否されちまうとこれからどう接していけばいいのかわからねぇ。
あいつの望む幼なじみってどんなだっけか…。


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