魚人島を出発して、あっという間にこのシャボンディ諸島に到着。そしておれたちが来
到着してもう丸一日が経った。
シャボンディはログが溜まるまで待たなくていいし、前半の海の島のエターナルポースもいつくかあって次はその中の何処かへ行こうってことになってるし。
つまりこのシャボンディ諸島には何の用もないんだが、まぁ物資の調達やら遊びやらのために暫くの滞在。まぁ一番の理由は別だけど。
現在、おれの前には名前の肩を掴むマルコと呆れた笑いを浮かべている名前。
「目立つようなことはするな、人攫いと天竜人には気をつけろ、1〜29番グローブには絶対に行くな」
「マルコ…それ昨日から7回目だよ…」
大丈夫だってばー!とマルコから離れる名前に迫るマルコ、こっから見てると変質者にしか見えねぇ。
「サッチもいるし!ね?」
「おぅ!」
「信用できねェよい」
「なんだとッ!!」
名前にとって、初シャボンディ上陸。
この島は危険がいっぱいで今までマルコが上陸許可出さなかったのは納得できるし、許可がおりたからって安全ってわけじゃねェ。でも今日はおれがついてるし、今まで行けなかったこの島を満喫してほしいってお兄ちゃん思うわけよ。だからいい加減この親バカをなんとかしねェと。
「おれがいるから大丈夫だって!」
「そうそう!それに」
エースのプレゼントいいの選んでくる!とニコニコ笑った名前にマルコはついに肩の手を下ろして、あぁ。と呟き、ため息混じりにとにかく気を付けろい。と首の裏を少し掻いた。
そうそう、実は5日後にエースの誕生日が迫っている。エースは昨日からオヤジの遣いで傘下のとこに行ってるんだが、それはたいした用ではなく、準備期間としてオヤジが行かせてくれた。
このシャボンディ諸島の滞在には奴の誕生日の宴用の肉の調達も含まれていて昨日一日でもかなりの量が集まったらしく、全部5日後まで特大冷凍庫で保管中だ。
昨晩、シャボンディでどこか行きたいところはあるのか。と名前に聞いたら、エースへの誕生日プレゼントを買いたいのだと話してくれた。照れくさそうに笑うものだからなんだかおれまで顔が緩んじまったぜ。
「大丈夫か〜?」
「うん!」
名前が梯子から下りるのを手伝って地面に降りると、初めての土地に名前は嬉しそうに頬を上げ、おれの隣を歩き始めた。
エースの奴、またストライカー飛ばしてすぐに帰って来るかもしれねェから急がねェとな…。
前にあったエースの早い帰船、それも名前のためなんだろうが、今回は早くないことを願うばかりだ。
「誕生日プレゼントかぁ。何がいいかな…」
「あいつの欲しいものなんて食いもん以外に思い浮かばないぜ…」
「わたしも…」
ワンッ
「「……」」
ワン!
「「ステファンッ!?」」
何故お前がここにいる!!
名前の隣でさも当然の様に歩く奴におれと名前の声が重なった。
さっさと帰そうと思ったがもう船が見えないくらいまで歩いて来ていて、ひと…、あ、一匹で帰すのは危険だということになり結局連れて行くことにした。
29番グローブを抜けて比較的安全なところへ出てしまえば、店ががたくさんあって人通りも多くなって来た。おれたちは目に付く店を順番に見てまわった。
動物入店可の店には連れて入れたが、禁止の店ではステファンは店の前で待機させた。
今回もまたステファン入店禁止。服やらアクセサリーなんかいろいろ売っている店でおれと名前はさっそく物色を始めた。
「ネックレスは?」
「もうつけてるからなぁ……」
「だよなぁ」
ちなみに、名前の上陸許可が出たのは滞在中のこの一日だけ、それに次の島ってなるとエースがいるからプレゼント選びなんて出来たものじゃないことは想像ができる。
だけど、上陸許可の出た貴重な一日をエースのプレゼント選びに使って良いんだろうかとも思うが、本人はこのプレゼント選びがすごく楽しいみたいだからなんか安心。
「シャツだとエース着たがらないしね…」
「ほんとたまにしか着ねェな」
だよね…。と名前は手に持っていたシャツを畳んで元の場所へと戻した。
普段は背中の刺青見せたいからっつって上は着ずにズボンだけ履いているエース。おれらもずいぶん見慣れちまったけど普通におかしいよな。ハーフパンツもいっつも同じだし……、あ。
「ハーフパンツってのは?」
「あぁ!!いいね!」
おれの案にパァッと目を広げて乗ってくれた名前はすぐにハーフパンツが大量に並べられているコーナーへと移動し、早速どれがいいかと手に取り始めた。
「エース、こだわりとかあるかな?」
「んー…、普段あんなんだし、ねェんじゃね?」
だよね。と2人で顔を合わせて苦笑を溢した。名前が選んだのならあいつなんでも喜ぶだろと言ってやると、そうかな。と少し照れたように笑ってまた別の商品を手に取った。
お世辞とかじゃなく本当だぜ?エースのやつ名前からプレゼントなんかもらったら、その瞬間に発火する様子が目に浮かぶぜ。
「これなんてどうかな?」
「お、いいな!」
「でも、もうちょっと迷った方がいいかな…」
「直感でいいんじゃねェか?エースもそんな性格だしな」
じゃあこれにしよう!あれよあれよと決まったエースへのプレゼントは直ぐにレジへ持って行き名前は支払いを済ませた。プレゼント用だと言ったのか、綺麗に包装された袋を持っておれたちは店を出た。
店の前で待っていたステファンを連れて一度休憩のため犬入店可カフェへ入った。
おれはコーヒー、名前はアイスティー、ステファンにはミルクを頼んでひと息つくと名前は安心したように笑った。
「思ってたより早く決まってよかった」
「よかったじゃねぇか」
「うん!」
「次どっか行きたいとこあるか?」
「えっ!?あっ……、うん」
突然恥ずかしそうに狼狽える名前を不思議に思い見るが、名前少し顔を下げて目をうろうろ泳がせていた。
言いづらいとこなのか?そう思いつつ名前の返答を待つと、恐る恐るといった感じでおれを見つめると、小さく呟いた。
「シャボンディパーク行ってみたい……」
その一言に俺は驚きで目を見張った。だって、名前からこんな子供らしい願望が聞けるなんて思ってもみなかった。
考えてみりゃ名前にとって遊園地ってとこは未知の場所なのかもしれねぇ。
今までいろんな島に行ったが遊園地ってもんは体験させてなかったな…。船にはおっさんだらけだし遊園地なんてメルヘンな場所誰も思いつかなかった。
そっか、名前は行ってみたかったんだな。気付いてやれなかったおれらが悪いけど、名前がこうやって自分から言ってくれるなんて、おれ嬉しすぎて爆発しそう。
不安そうにこちらを見ている名前に向け、おれはニィと口の端を吊り上げた。
「よし、じゃあ行くか!シャボンディパーク!」
「…ッうん!」
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