「「「おねーーちゃぁーん!!」」」
「みんなっ!」
「なんだぁっ?」



サッチと船から降りて竜宮城へ向かっていると、さっき一緒にいた子供たちの声が。
わぁーっとあっという間に囲まれてしまれて、下から服を引っ張られた。



「おねえちゃん、お話して〜!!」
「もっとききたーい!!」



お願いお願い。と子供たちのかわいい要望にわたしも応えてあげたくて、サッチを見てみれば、頭にポンと手を乗せられた。



「あー、なんだ。上手く言っといてやるよ」



グッと親指を立てたサッチにわたしがありがとう!と返せば、はやくはやく!と子供たちに手を引かれた。













さっきと同様わたしが噴水の側に座って、子供たちもその周りに座る。



「実はね、みんなに見せたいものがあるの」



なになにィーっ!と声が上がり、ふふっと笑って後ろに隠していたそれをジャーンと前に出した。



「「「うわぁっ!」」」

「ぼく、それ見たことある!」



みんなが驚くなか1人の男の子がんー。と顎を手に乗せて考え始めた。すると、確かに…。と別の子も言いだし、みんながなんだっけー。と考え始めてしまった。

わたしは驚きもあったけど、それよりも可笑しさが勝って少し笑ってしまった。



先ほど船に戻ってサッチにもらってきたコレ。
子供たちに見せてあげたくて、りんごあるかな?と聞いたところ渡されたのがコレだった。



“絶対何人かは、マルコと似てるって言うぜ”



くふふふ。そう笑って差し出してくれたサッチに、その時はそんなわけないでしょ。と突っ込んでしまったが、これはみんな本当にそう思ってるのかもしれない。



「あははっ…!」



わたしが笑う姿を見て、みんなの視線が集まる。ついに一人の子が、おねえちゃんそれ何ー?と答えを求めた。



「ふふっ、え、えっとね。これは…パ…」

「名前ーー!!!」



一文字目を言ったところで突然聞こえた自分の名前に思わず言いかけた言葉が止まった。



「あっ、お兄ちゃん!」
「白ひげのお兄ちゃんだぁーっ!」



子供たちがわちゃわちゃと指差す方を見れば、顔面蒼白のエースが町中を猛ダッシュしていた。しかもわたしの名前を連呼しながら。

あんなに慌ててどうしたんだろう?



「エース?」
「名前ッ!!」



声に反応して焦ったようにこちらを見たかと思ったら、ありゃ?と首を傾げた。それにつられてわたしも首を傾げる。



「ナンパされたんじゃ……!?」
「え?」



よかったぁー!とホッと胸を撫で下ろしたらしく、わたしの元へまたダッシュして来たと思ったらギューッと抱き締められた。


















「おっさんでっけえなぁ!!こんな人魚初めて見たぞ!」
「エースさん、この方はこの国の王じゃぞ」
「おっさん王様なのか!」
「お前さん失礼じゃぞ、少しは…」
「エース、黙れよい」
「わしは構わんのじゃもん」



おれたちを乗せて泳ぐ魚たちを誘導しながらもじゃもじゃのおっさんは丸い通路のようなところを指差して、あそこが入り口だ。と言った。


そのままそこを通って行くおっさんに続いておれたちの乗る魚もそこを通って行き、おれもマルコに殴られたところを抑えながらその景色を楽しんだ。

しばらくすればデカい建物の中へ通され、おれたちの乗る魚は部屋の中央で止まった。



「ひっろいなー!!」
「エース、少し静かにしろよい」



ポキッと拳を鳴らしたマルコに思わず押し黙るがくんくんと鼻を効かせてみれば、美味そうな匂いが…!!



「何年ぶりだ…」
「わしも覚えてないんじゃもん」
「ここも変わらねェなネプチューン」
「この魚人島に平和があるのもお主のおかげじゃもん」
「グララララ…ならはやく酒持ってこいアホンダラ」



オヤジともじゃもじゃのおっさんは早速酒を酌み交わし始めて、おれたちの前にも大量の料理が運ばれて来た。



「うんまっそーー!!」
「今日は宴なんじゃなもん!」
「まじかっ!!」
「後で島の人魚達も来るんじゃもんっ」
「まじかっ!?」



人魚という言葉に反応して、どこだー!?と探し始めたサッチに対し、ジンベエは後でじゃと言うとろうが。と呆れたように言っていた。


おれは涎が溢れそうになるのを抑えて、ゴクリと喉を鳴らした。食っていいのか!!?とおっさんに聞けば食え食えと返って来る。



「いっただっきまーふ!!」



バクバクと口に詰めていくおれの隣にいたマルコが突然スクと立ち上がり、サッチがどうした?と聞いた。



「名前にも宴だって伝えて来るよい」
「あ!だったらおれも一旦船戻って来るわ!」



人魚ちゃん来るなら髪とかセットし直してくる!と言うサッチに勝手にしろと言うマルコ。そんな2人の会話を聞きながらおれも名前のところへ行こうかと思ったけど邪魔なだけかと思いやめた。



「お前さんたちだけでは何かと不便じゃろうわしも行こう」



ジンベエが立ち上がりマルコも頼むよいと頷いた。確かにここは魚人島だから人間だけで行動するには不自由な部分が多々ある、ましてやマルコなんか能力者だしな。



いってら、と手を振ればよいとだけ返された。


















しばらくして、相変わらず盛り上がっているオヤジとおっさんのところへ兵士から連絡が入った。その内容におれも海獣の肉を頬張りながら耳を傾けた。



「我々には手に負えず人魚が1人連れ去られそうになりましたが、つい先ほどジンベエ親分、マルコ隊長殿、サッチ隊長殿が到着し仕留めて下さり身柄は我々が確保しております!」
「なるほど…、助かったんじゃもん」
「グララララ……何もなくて良かったじゃねェか」




へェ。海賊が来たのか、まぁマルコ達に勝てるわけがねェけど


そんな事を思っているとちょうど戻って来たらしいマルコとジンベエ、その姿を見て部屋にいた兵士達が次々に礼を言っていくんだけど、構わねェよ。と頭を上げさせる2人はなんだかかっこ良かった。


あれ、名前がいねェ。



「ジンベエもギリギリ間に合ってくれて良かったよい」



あのまじゃ名前達もタダじゃ済まなかったよい。そう言ったマルコの話におれの耳は激しく反応した。



「名前ッ!?なんかあったのか!?襲われたのか!?」



口に料理が入っているのも気にせず、おれがつかみかかる勢いでマルコに向かって問いかけると、眉を顰めながらも何もねェよい。と簡単な答えを返してきた。



「ただ危なかっただけで、子供らも無事だよい」
「そ、そうか良かった…。じゃあどこにいるんだ?」
「サッチと一度船に戻るってよい」



後で来るだろい。とマルコの返事にホッと息を吐いてそうか。と呟いた。何もなかったんなら良かったぜ…。

マルコとジンベエが戻って来たことでまた運ばれて来た料理や酒を既にパンパンの口にさらに放り込んだ。おもわずむせ返るとおっさんの息子らしい人魚が背中を叩いてくれた。



「大丈夫ですか」
「おー、ありがとな!」



えっと…マンボシだったかリュウボシだったか…



「フカボシです」
「あ、そうそう!」



呆れたように笑われた。話してみれば歳も近いし色々と話があって盛り上がっていると暫くしてサッチが戻って来たらしくフカボシが教えてくれた。



「サッチ!」
「おーエース、食ってんなぁ」
「ここの飯最高だな!」
「ははっ、だろ?」



船に戻ってセットし直して来たらしいリーゼントを一撫でして得意げな顔をするサッチ。その姿を見てあれ?とおれはまた首を傾げた。



「名前は?」



おれの言葉にあー。とかうー。とか発しながら首の裏を掻いたサッチは、ちょっとと手招きしておれの傍に来ると小っせぇ声で驚きの事を話した。



「なにぃっ!!?」



おれはすぐに立ち上がって竜宮城を飛び出した。



















エースに抱きしめられながら状況を確認しようと必死で頭を動かしていると、足下からひゅーひゅーと冷やかしの声が。



「お熱いねぇ〜」
「バカップル〜」
「チューしてチュー!」



一体どこで覚えたの…。と聞きたくなる言葉。子どもといえど、そんな言葉の羅列にだんだんと恥ずかしくなってきたわたしがエースと声を掛けると、首元に埋められていた顔が上がった。


顔と顔との距離が思っていたよりも近いことにドキリとしながらもどうしたの?と聞けば今までキツく締められていた身体が解放され少し距離が出来た。



「サッチめ…!!」
「サッチ?」
「くっそー、騙された!!…でも」



よかった…。とまた軽く引き寄せられる。よく分からないながらもトントンと背中に手を伸ばして叩いてあげればホッという声が耳元で聞こえた。



「サッチがー、名前が、声かけられたやつらに連れてかれたって言うからー!」



語尾を伸ばして子どものように話すエースにクスクスと笑いが溢れる。きっと慌てて飛び出して来てくれたんだろう、現在エースからは微かに料理やお酒の臭いがする。心配してくれたなんて嬉しいなと思っていると今度は下から服を引っ張られる感覚。



「ねぇおねえちゃん、答え教えてー?」
「答え?」



あ、そうだった答えを言おうとした時にエースが現れたんだ。1人の子の発言にみんなも思い出したように教えて教えてと服をの裾を引っ張って来る。エースも身体を解放してくれて少しきょとんとして子どもたちを見ていた。



「これは何かっていうクイズみたいなのしてたの」



さっき噴水の側に置いたそれをエースに見せるとぶぶっ!と少し吹き出した。



「マルコにしか見えねー」



その一言にあぁー!と叫んだ1人の男の子。ぼく分かったー!!



「さっき助けてくれたおじさんだ!!」
「「「あぁーーー!!」」」



そうだそうだと他の子達も次々に言い始め、わたしも笑いを耐えるのに必死だった。



「みっ、みんな、ふふっ、これはパイナップルって言う果物で……ははっ」
「名前も笑ってんじゃねぇか」
「だっ、だって…あははっ」



エースと顔を合わせて更に笑った。こんなところマルコに見られたら怒られるななんて思いながらも笑いが止まらなかった。

暫く笑ってふぅふぅと息を整えるとエースが背中を摩ってくれた。



「サッチが言ってたこと嘘じゃなかったかもな」
「えっ、そう?」
「だってこいつらに連れてかれたってことだろ?」



子ども達をみて言ったエースにわたしも笑ってほんとだと返すとニッと笑ってグイッと引き寄せられ抱きかかえられた。



「わっ」
「やーいお前ら!名前はもらってくぜ!」



代わりにマルコはやるよ!走り出したエースにえええ?と状況が理解できないわたし。後ろからおねーちゃんを返せー!!ゆーかいだぁー!!なんて声が聞こえて来たけどエースは足を止めることなくべーっと笑って返してまたニッと笑った。



「ちゃんとつかまってろよ」



すごく突然なエースにびっくりしつつ慌ててエースの首に腕を回してしがみついた。


「よーし、飛ぶぞっ」
「え?ちょぉっ………とぉぉーーー!!」


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