艶のある透明の膜、それ越しに見える景色は本当に幻想的…。
普通ならこんな風に海の中を見ることは出来ないけれど、それを可能にしちゃうシャボンは本当に不思議だ
深海10000Mにある魚人島はもうすぐそこに迫っている。
少し視線を下げれば見えるそれに何度目かのうわぁ。という声が出てしまった。
隣で同じように船縁から魚人島を見ているエースも楽しみだなぁーとそわそわそわそわ。
あまりのそわそわに、あれ、新世界に入る前に一度は来ているはずなのになと疑問が浮かぶ。エースの反応は初めてこんなの見た!という風だったから。
「うわぁ…!!すげぇ…」
「魚人島……!!」
「マーメイドカフェ行ってみたかったんだよ〜」
「おれは人魚姫に会いてェ〜」
「バカ、入江の方が人魚ちゃんたくさんいんだぜ?」
エースの後に続くように聞こえた声に後ろを見れば、ポケーッと魚人島を眺める船員達
あ、みんな元スペードなんだ!!
またほぉ〜っとか、おぉ!とか声を出しているエースに視線を戻して思ったままの言葉を掛けてみた。
「新世界に入る前に一度来てるのに、すごく新鮮な反応だね」
確かに魚人島は何度見ても綺麗なんだけど。わたしの言葉にエースはピタ。と動きを止めると、ふとこちらを見ると、えっと…。と少し笑いポリポリと頭を掻いた。
「あの時は急いでたから、あんまゆっくり見てねェんだよ」
「急いでたって……?」
「早く新世界に入ってオヤジの首取りたかったんだ」
なるほど。と納得したわたしに、おれも馬鹿だなー。とエースは笑った。
「こんな綺麗なもん目見逃してたなんてよ」
あいつらにも悪いことしちまった。なんて言うエースは船長だなって思える顔をしていて、なんだかカッコ良かった。
これからいくらでも見られるよ。と言えばそうだな!と笑って返してくれて、あぁ、これはいつものエースだな。なんて思った。
「マルコさん、入り口から入ってくれ」
「分かったよい」
ジンベエの言葉を聞いてマルコが船員達に指示を出し、またまた魚人島が近付いて来た。
大きな水晶のように見えるシャボン、それに包まれた魚人島の建物や人が見え始めると、街の人たちが手を振って迎えてくれていて、わたし達もそれに応えるように手を振った。
入り口から入り港に船を止めれば、迎えの方達がたくさん来てくれていて、その中にはこの国の王であり、オヤジの友人であるネプチューン王と、王子達の姿も。
「名前、おれたちは竜宮城へ行って来るよい」
「うん、わたし達も自由に回ってるね」
魚人島はオヤジのナワバリだから暴れる海賊なんてほとんどいない、いたとしても島の兵が抑えられる程度だ、それにこの島には海軍もいないから、どこよりも安心して楽しめる島だったりする。
ん。と頷いたマルコに笑顔を返して、エースへと向いた。
「おれも!行っていいか?」
エースの視線の先はマルコ、オヤジやジンベエと共に船から飛び降りようとしていたところで、エースの声にマルコがこちらを向いた。
「オヤジのダチなら、おれも挨拶してェなって」
「あぁ、構わねェよい」
フッと笑ったマルコにパァッと明るくなったエースの顔、わたしは少し呆然。完全にエースと回る気だった…。だからさっきもわたし“達”って言っちゃったし…!!なんか…恥ずかしい…。
少し顔が熱くなって手で顔を抑えていると、エースがこちらを振り返ってパチン!と両手を合わせた。
「わりィ名前!今日はオヤジ達と行ってくるな!」
「わぁあ、う、うん!楽しんで!」
「おう!名前もな!!」
ニカ。と爽やかな笑顔を残して、船縁から飛び降りて行ったエースにカクカクと手を振って見送った。
ダン!!と音が聞こえた後に、お兄ちゃんカッコいいー!なんて声が聞こえたものだから、クス。と笑いが溢れた。
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