「ちゃんと見てもらえよい!」
「いやだっ!!」



お?なんだなんだ。珍しいな、親娘喧嘩か?
ひょっこり厨房から顔を覗かせればいつもの席で言い合ってる2人の姿。
うーん…。本気ってわけじゃなさそうだし、大丈夫か。もうちっと傍観して、本気でヤバくなりそうだったら止めに入ろう。と、一瞬で頭を働かせてまたあのパイナポーへと目を向ける。




「目真っ赤だよい、さっきから何度も擦ってるだろい」
「そっ、そうだけど…」



あらま、確かによく見りゃいつもよりえらく赤い名前の目元、今マルコが言ってたように何度か擦ったらしく目の周りも少し赤みがかっている。
それでも反抗する名前におれの口からもクスリと苦笑が漏れた。



「ただの花粉症だもん、島離れたら大丈夫だよ」
「ここのログは2週間って言ったろい、それまでの間キツイぞ」



ぅ。と声を漏らし気まずそうに頭を下げ、名前は目を擦った。その手をすかさずマルコが掴み2人は無言で見つめ合う。

ここで説明しておくと、只今停泊中の島は花が有名な島で、定番の種はもちろん、凄く希少な種だったり、とにかく花の種類が豊富だった。どうやら名前の身体はそのどれかに反応したらしい。



「鼻は大丈夫だし、目だけだもん」
「見てもらいなさいよい!」
「いやだよいっ!!」



ジリジリと音が聞こえそうなくらいに睨み合う2人、まぁ名前は花粉症のせいで目に涙が溜まってるもんだから可愛いことこの上ないんだろうけど。
じゃあっ!と名前が声を上げ、マルコが片眉を上げ言葉を待つ。



「マルコも歯科検診行きなよ!」
「うっ…!!」



慌てて両手で口を抑えたマルコに、え?とおれ含め食堂中の奴らの頭にクエスチョンマークが浮かんだ。
何をそんな焦ってんだ不死鳥マルコよ…。



「いつも歯科検診だけ受けてないの知ってるんだから!」
「なっ…!!」



ぶっ…!!
おいおいまじか!



「あ、あの音とか無理なんだよい…!」
「じゃああたしも行かない」
「…ッ!?」



あのマルコをここまで動揺させるとはさすがだ…!!
おぉ!なんて言って拍手してる奴らもいる。
当の名前はというと、腕を組んでぷいと顔を背けている。
今度他にもマルコの弱点教えてもらおうっと。



暫くどちらも黙ったかと思えばマルコがゆっくり、名前。と呼んだ。すると腕を下ろし目線をマルコの腹辺りにやって、ちょっと反省したって顔。うん、可愛い。それにマルコも表情を戻し諭すように言う。



「目だけなんだ、目薬でもさせば済むだろい」
「だから…、それが怖いの…!!」



マルコから視線を逸らしポツリと呟くと、恥ずかしそうに口を結んだ名前。


え、何今の、超かわいい。
あのマルコも驚いたようで目を丸くしてる。そっちは可愛くねぇ…。



「目薬なんて、入れられないよ…」
「お…、おれが入れてやるよい」



弱気な名前に釣られたのか、少し伺うようにマルコが言った。
ゆっくり顔を上げほんと?と呟き、マルコがコクリと頷いたところでふわりと名前は笑った。わぁ、天使!!



「じゃあマルコも、歯科検診行こっか」
「え"」



テーブルを回ってマルコの腕を掴んだ名前はニッと笑って扉へ向かおうとする。
いやなんか…、名前の小悪魔的な一面を見れた気がしたぜ…。




「いっ!サッチ!助けろい!」



聞こえない聞こえない。



ぐいぐいと引っ張られるようにマルコは食堂から消えてしまった。ご愁傷様。


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