ビスタから書類を受け取って部屋を出てマルコの部屋に向かったのだけれど、そこにマルコの姿はなかった。


「あれ…」


結構時間も経ってしまったしもう部屋にいると思ったんだけど…。
まだオヤジの部屋にいるのかな?

オヤジの部屋へ向かうため甲板へ出てみると、わたしは首を傾げた。何故かみんながみんなバタバタと動いていて、とても騒がしかったからだ。通りかかった船員に声をかけ何かあったのかと聞いた。


「なんかよく分かんねェけど、急ぎで進路変更するみたいだぞ!」


そう言うとそそくさと持ち場に戻ってしまった。


進路変えるの…?


疑問が頭に浮かぶが、とにかくマルコを見つけて事情を聞こう。
と、思った途端すぐに見つかった。甲板の中心でクルー達に指示を出していたのだ。


「もっとしっかり帆を張れよい!」


とても忙しそうで、声を掛けていいのかと迷った。でも、ビスタから預かった報告書を渡さなければならない。近付けば声を掛けるよりも先にマルコはわたしに気付いてくれた。


「これ、報告書貰ってきたよ」


ビスタから預かった書類を渡すと、ありがとよい。と受け取った手とは反対の手をわたしの頭に手を乗せた。


「進路変えるの?」
「あぁ、今から隊長会議始めるから、お前も来い」
「え、うん」


真剣な表情になったマルコに、これはただ事じゃないな、と緊張しながらオヤジの部屋へ向かった。


マルコに付いてオヤジの部屋へ向かうと他の隊長達はみんな集まっていて、さっきお茶したばかりのビスタの姿もあった。
大きな椅子に腰をかけるオヤジはマルコとわたしを見て目を細めた。


「グララ…大丈夫だったかマルコ」
「あぁ、無事船の進路は変えたよい」


マルコはそのままオヤジの隣に並び、わたしもその横に並んだ。


「なんで進路変えたんだ?」


そう聞いたのはサッチ、呼び出されたもののみんな何の話しをするのか聞いていないらしい。ましてや進路まで変わっていて、わたし達の頭にはハテナマークが浮かんでいた。

すると、オヤジが口を開いた。


「偉大なる航路(グランドライン)に威勢の良いガキが入ったみたいでな…グララ…俺の首を取りてェんだと」


その言葉にわたしも含め一同驚いた。今までにもオヤジの首を取りたい輩はごまんといた、こちらから行かなくても向こうが勝手に攻撃して来る。

なのに今回はわざわざ進路を変えてまでその人に会いに行くの…?

すると、隣に立つマルコが口を開いた。


「今、この近くの島でジンベエが相手をしているらしいんだが、もう4日も勝負が着かねェらしい」
「あのジンベエと4日も!?」
「相当な手練れだな…」


みんなジンベエの強さはよく知っている、隊長達にも劣らない強さの彼が4日間も勝負が着かないなんて…。


「それが手練れじゃねぇんだよい。まだ偉大なる航路に入って一年も経たねぇくらいだと」
「それでジンベエと対等って…」
「ただのルーキーじゃねぇな」


みんな、驚きを隠せないようで、次々と声を出す。それを纏めるようにマルコが声を張り上げた。


「とにかく、一旦その無人島へ向かうよい!着くまでに勝負がついてるかもしれねぇが、明日には到着する予定だ。各隊員に連絡頼むよい」


マルコの言葉にみんな、うっす!だとか、りょうかい!だとか言って部屋を出て行く。それについてわたしも出ようとすれば、マルコに止められた。


「どうしたの?」
「悪かったな…、春島、楽しみだったんだろい」


振り返ると申し訳なさそうに眉を寄せたマルコの顔が目に入った。
そんなの、全然気にしなくていいのに…


「気にしないで、ジンベエのピンチだもん、助けにいかなきゃ」


するとマルコはフッと笑ってわたしの頭を軽く撫ぜた。しかし、次のマルコの言葉にわたしは少し眉を寄せた。


「春島に着いたら何でも欲しいもん言えよい」
「欲しいものなんて…、いつもたくさん貰ってるよ」
「お前はいつも遠慮しすぎだ、なんでも買ってやるから、考えとけ」



最後にポンポンと頭を叩くと部屋の外へと歩いて行った。それを見届けて考える。



「欲しいもの…」
「名前」
「オヤジ」


名前を呼ばれ振り返るとベッドに座りながら微笑むオヤジの姿。


「ちょっと話し相手してくれるか、酒の肴がなくてな…グラララ。」
「うん」


オヤジのベッドの横の椅子に座りオヤジを見上げる、するとオヤジの手が伸びてきて頭を数回撫でられた。


「やっぱり娘は良いもんだな」
「ふふ…どうしたの?」


オヤジは笑うと大きな酒瓶から一口グビッと飲んだ。

チャポンッ…


「欲しいものを探してるのか」


オヤジのその言葉にわたしも肩をすくめる。


「考えとけって…何もないのに…」
「欲しいものがない海賊か…グラララ」
「オヤジも同じでしょ?」


わたしの言葉に片眉を上げたオヤジはグラララと笑った。


「おれにだって若ェ頃は欲しいもんくれェあったぞ」
「うそ…!」


少し驚きながらも、それが当然かと思い、何なのか聞いた。


「家族」


それには思わず頬が緩んだ。そしてオヤジの胸に額をくっ付けた。


「もう、たくさんいるね」
「家族はいくらいたっていいんだ、お前もその1人だぜ…グラララ」


その言葉に少し泣きそうになりながらも微笑み返す


「わたしも、オヤジの家族で良かった」


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