「おはようごさいますエースさん」
「エースおはよう」
「くぁっ、はよ…」



……。

ん?

なんでお前がそこ座ってやがる…!!


いつもおれが座る席、名前の隣に何食わぬ顔で座り会話を楽しんでいたのはキト。


いや、誰が決めたってわけじゃねェけど…
最近はずっとそこに座ってたから勝手におれの席にしてただけなんだけど…

名前の正面の席は当たり前にマルコだし、そこもおれの席で固定だろ!!

まぁ、キトは昨日来たばっかだ、ちゃんと言えば分かってくれるか…。


そこはおれの席だ、どけ!


……。
そういや誰もここがおれの席だなんて一度も言ったことねェ…。

いや、でもおれは名前の隣がいい!!
飯を大量に乗せた盆を持ったままキトの後ろに立った。



「キト、お前飯食い終わったんならどけよ」
「え?空いてる席あるじゃないですか」

「ぷっ」



サッチが吹き出した。

確かに…、周りを見りゃ空いてる席なんていくらでもある…。



「お、お前は新入りなんだから、さっさと雑用でもして来いよ!」
「えー…」



なんだよえー…って!仮にもお前は新入りなんだよ!


その時、名前が盆を持って立ち上がった。



「エース、わたしもう食べ終えたから、ここいいよ」

「え、いや、でも」



どうぞ。とニッコリ笑顔で促す名前。

いや、なんていうか、名前がいねェと意味ねェんだけど…。


笑顔の名前を前に断ることもできず取り敢えずマルコの正面に座った。


なんだ、嬉しくもなんともねェ…

おいサッチ、肩震えてるぞ。



「名前さん、これから何するんですか?」
「ちょっと洗濯物手伝って来るね」
「マジですか!だったらおれも行きます!」



盆を返却口に持って行き、そのまま食堂から消えた2人…

なんだ、この敗北感…。



「ぷははっ!エース、お前おもしれェ…!!」
「おれは全然おもしろくねェ!!」



ついに声を上げて笑ったサッチ、マルコも同じかと思いきや、少し難しそうな顔をしてさっきまでキトが座っていた席を見ていた。



「エース」
「ん?」
「あいつ…本当にお前に憧れて乗船したのか?」


「……」



マルコの言うことも分からなくはねェ。だってよ、昨日から憧れられてるって思ったの出会った時だけだぜ?
そっからは名前にベッタリくっ付いて、おれの扱いもさっきみたいなだし…。



「つうかさ、あいつって強いの?」
「さぁ?戦ってんの見たことねェもん」
「まぁ、悪い奴ではないようだねい」




















「名前さんって能力者だったんですね!」
「あはは、たいしたこと出来ないんだけどね」
「十分たいしたことですよ!」



ありがとう。と照れたように笑う名前さん、海賊だってことだけでも驚きなのにまさか能力者だったなんて…。

名前さんが能力で洗った洗濯物を持って干し場へ向かう。
他の船員達は、今日もありがとな!なんて声を名前さんに掛けて行くから、きっといつもの役目って感じなんだろう。



「名前さんは…どれくらいこの船にいるんですか?」
「んー…、もう10年になるかな」
「えっ!?…ってことは8歳から!?」
「うん、長くお世話になってるよ」



海賊に育てられた女の子か…。それにしても全然海賊に見えねェし、この船の下品な男達とは似ても似つかない。それにこんな新入りがやるような仕事を当たり前のように手伝ってくれるなんて。


干し場に行くと、既に何人かが干し始めていて、おれも名前さんの隣に立ち干し始めた。



「キトくんはいつからエースに憧れてるの?」



名前さんが可笑しそうに少し笑いながら聞いた。



「エースさんが七武海の勧誘蹴ってからですかね…」
「てことは一年くらい前かぁ…」
「あはは…まぁそんな感じです」



エースさんには悪いけど、本当は憧れてなんかない。
ただこの船に来るためにそう言っただけ、名前さんが海賊だからって諦めたくなかった。
あの時、咄嗟に出た嘘だけど、火拳のエースの事件とか、ちゃんと新聞読んでた自分に感謝だな。



「今日は島に行くの?」
「いや…、今日は何も考えてなかったんですけど…」
「あ、そうなんだ」



まぁ、もうちょっとこの島にはいるしねー。なんて話しながら洗濯を干し続ける名前さん。その姿を見つめながらおれはゴクリと喉を鳴らした。



「あの、名前さん!今日…良かったらおれと…「残念!新入りくん!」



突然割って入って来たナース達。思わず顔を顰めて先頭の女を見れば、相手は威圧感のある笑顔を向けて来た。

えっと、昨日紹介されたナース長の…ミラノさんだっけ。
名前さんよりも歳上だな…、まぁこの船でおれが一番下らしいからみんな歳上なんだけど…

ミラノさんは名前さんの肩に手を回して、勝ったような笑みを見せて言った。



「今日、名前はあたし達と買い物に行くのよ」



女の買い物よ、来る?
片眉を上げて話すミラノさんに顔が引きつった。これは…荷物持ちにされるな…
島にはまだいるらしいし、これから先、いろんな島に停泊するんだ。別に今日じゃなくてもいいか…。



「い、いや、結構です」
「ふふ、ごめんなさいね」



じゃ、後よろしく。ヒラヒラと手を振って名前さんを連れて行ったナース達

その場に残されたのはおれとまだ干し終わっていない洗濯物…



「全部干せってことか…」


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