ぐらー…ン!



「きゃっ」
「大丈夫か名前!」



突然の揺れに椅子から落ちそうになった名前を支える。ギュッと名前の肩をしっかり掴んで寄せると名前が心配そうに口を開いた。



「どうしたんだろう…何か変な海流にでも捕まっちゃったのかな…」
「かもな…、そういや今日って…マルコいないよな」
「うん…」



マルコはオヤジの頼みで別の島に届け物に行ってる。つまり今日は航海士達を纏める役が不在なんだ。それに今日は朝からずっと雨、なんだか嫌な予感がした。








ー航海室ー



ここは航海室、優秀な航海士達がマルコの指示の下で、この白ひげ海賊団の旅を支えている。
本日マルコは不在だが、ここでも異常な船の揺れを感じ取れた。



「なんだこの揺れ?」
「今、様子見に行ったってよ」



バタンッ!



「ハァハァ…や、やべェぞ…!!」
「た、竜巻だ!!」


「「ハァ…!!?」」


「しかも船がどんどん引き込まれてる…!!」
「竜巻って…!!」
「海の上でも起こるのか!」
「今はそんなの関係ねェ!早く避けねェと船が大破するぞ!」
「今日はマルコさんがいねェ、おれたちだけでなんとかするんだ!」

「「「おぅっ!!」」」





ーー











「まだ収まらねェな…」
「大丈夫かな…」
「マルコがいなくても、あいつらみんな優秀なんだろ?」
「うん」
「なら、信じようぜ…」



まだまだ船の揺れは収まる気配がなく続いているが、ジッとおれの腕の中にいる名前を見てると、もう暫くこのままでもいいな。なんて思う。


その時、ドタドタと足音がして食堂の扉がバンッ!と開いた。



「名前ッ!ちょっと来てくれ!!」
「う、うん!」



名前は慌てておれの腕の中から抜け出すと揺れでフラフラとしながらもなんとかその船員の後を追って行ってしまった。


そんなにやべェのかな?
おれも名前達の後について甲板に出て驚いた。



「す、すげェ風…!」



何かに掴まってないと飛んで行っちまいそうだ…!



「あれって…、ウォーター・スパウト!!」



近くで名前の声がして、その視線の先を見ると近くにでっけェ竜巻みてェなのがあって、もくもくと煙も立ってた。
てっきり、もう突っ込んじまってんのかと思ったが、まだ少し距離がある。

しっかし…近付いただけで、この風かよ…



「おれたちだけでなんとかしようとしたんだけど…、悪い名前」
「ううん、わたしは良いの……、でも急がないと…!」



船縁から離れて航海室に入って行った名前を見送って、おれはまた、うぉ…スパイス?ってやつを眺めた。



「攻撃しても意味ねェのかな」
「火拳かますか?」



風が強すぎて声がよく聞こえなかったが、隣を見ればサッチがヘラッと笑っておれを見ていた。



「まぁ、おれの剣技にかかりゃああんなの余裕だけどな」
「ぼくなら一太刀で充分だね」
「ならおれは素手だ!」


「ちょっと!張り合ってないで動いてよ…!!」



後ろを振り向けば困ったような顔をした名前がおれらに向かって船が危ないのに!!と叫んでいた。



「すぐに帆を畳んで!!」
「「「は、はい!!」」」



なんだろうな、普段は落ち着いててのんびりしてる名前なのに、今の一瞬はマルコと被っちまった。

慌てて酷い雨と風の中、帆を畳むと、名前の指示の下2時の方角へ進路が変更された。そしてまたすぐに帆を開く。
と風に押され船はどんどん竜巻から離れて行った。



「なんか…名前凄かったな…」
「そりゃ、あいつはマルコにありったけの航海術仕込まれてんだぜ?」



得意げに言うサッチと共におれは食堂に戻り、船の中もそれぞれ平穏を取り戻していった。
でも名前は暫く帰って来なかった。





キィ……バタン…



「疲れた…」



やっと扉が開いたかと思うと酷く疲れた顔をした名前がトコトコと歩いて来た。おれの隣に崩れるように座り、顔をピタッとテーブルにくっ付ける。



「遅かったな」
「進路の確認とか…色々してた…」
「そっか」



名前の頭を数回撫でてやると、ふぅ。と息を吐く声が聞こえた。



「名前、ココア淹れて来たぞ」
「ん…ありがとう」



コト…



サッチは名前の前にココアの入ったカップを置き、そのまま正面の席に座った。名前はひょこっと起き上がるとカップを手に取り、そのまま一口ゴクリ。



「ふふ…、美味しい…」
「お手柄だったな名前」
「へへ…」



サッチの褒め言葉が嬉しいのか照れ臭そうに笑う。



「ウォー・スパイスってなんなんだ?」
「ウォーター・スパウトだよ。えっとね…」


おれの質問にさっきまで読んでいた本をペラペラと捲り始めた名前はあるページを開きおれの前へ置いた。



「簡単に言えば水上で起こる竜巻のこと」
「海でも竜巻って起こるんだな…!」
「うん。予測は出来ないんだけどね、起こることは起こるんだって、わたしも初めて見たけど…」
「へェ〜、すげェな…」



そのページのダラダラと書き綴られている長い説明文を読む気にはなれねェが、載っている写真を見れば、さっき船の近くにあったような竜巻が写っていた。



「この…エースと買いに行った本に載ってたの、読んでおいて良かった」



ニッコリ笑う名前におれも嬉しくて頭をガシガシ撫でた。



「また一緒に行こうな!」
「うん…!あ、島に近付いてるって言ってたよ」
「ほんとか!どんな島だろうな」
「楽しみだね」


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